表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

AM1:00のシンデレラ

作者: しいたけ

 シンデレラは今日も意地悪な義理の母と姉にいじめられ、炊事、洗濯、掃除、おつかい、ありとあらゆる家の用事をやらされておりました。


「やっべーわ、家事のし過ぎで家事スキルがカンストするわー……」


 ぶつくさと不満を漏らしつつ、シンデレラはせっせと真面目に働きました。



 ある日、お城で行われる舞踏会のお知らせが届きました。

 義母も義姉も玉の輿に乗ろうと、おめかしして衣装を選んでいます。シンデレラは自分の灰だらけで汚れた服を見て、とても舞踏会に似つかわしくないと諦めました。


「シンデレラ! 私達は舞踏会へ行って来るから、お前はシーツのシミ抜きと、シンクのくすみと、窓の建て付けの悪さを何とかしておきなさい!」


 しれっと家事に日曜大工が混じっていますが、いつもの事です。意地悪な義母に鍛えられ、シンデレラのDIY力はいつの間にかヒ〇ミを超えていました。


 義母達が出かけた後、全ての言いつけを済ませ、シンデレラは畑で採れた大きなカボチャに腰掛けて、こっそり飼っているネズミ達と歌をうたって気を紛らわせていました。


 そこへ魔女が現れました。シンデレラは戸惑いましたが魔女は「お前を舞踏会に行かせてやろう」と杖を一回振りました。


 するとシンデレラの灰色の服が眩いドレスへと変わりました!


「これで舞踏会へ行けるね?」


「わあ! 嬉しいわ! ありがとう!」


 シンデレラはクルッと回ってその輝きを振りまきました。

 そして魔女がもう一度杖を振ると、大きなカボチャが更に大きな馬車へと早変わり!


「ネズミ達もホラ!」


 魔女の魔法でネズミ達が馬や馬車の運転手に大変身!


「さあ、後はこのガラスの靴を履いて舞踏会へおいき!」


 シンデレラは深々と魔女に頭を下げてガラスの靴を履きました。


「いいかい? この魔法は夜の12時までだ。それまでに帰ってくるんだよ?」


「わかりました! 行ってきます♪」


 シンデレラはカボチャの馬車へ乗り、お城へと向かいました。



 お城では沢山の女性が王子にダンスを誘ってアピールしていました。しかし王子は誰とも踊りません。

 シンデレラは初めて見る豪華な料理に戸惑い、作法も分からずとりあえず手掴みでチキンを貪りました。


「…………美味しいわ♡」


 その様子を王子がジッと見つめています。シンデレラは王子の姿に気が付き、慌ててチキンを飲み込み、姿勢を整えました。


「す、すみません……! 舞踏会なんて初めてなもので……!!」


「いや、良いんだ。良かったら、僕と踊らないかい?」


 王子が手を差し伸べます。シンデレラはチキンで汚れた手を拭いて王子の誘いを受けました。


「あ、あの……踊り方知らないんです…………」


「僕もだ。君のような美しい方と、どうやって踊れば良いか分からないでいるよ……」


 二人はぎこちない動きで踊り始めました。次第に息が合い始め、二人に笑顔が溢れ始め、周りに華が咲き始めました。二人は時間を忘れて踊り続けました。



  ──ゴーン……


 日付が変わる事を告げる鐘の音が鳴り始めました。シンデレラは我に帰り、王子の手を離し慌てて走り出しました。


「ま、待ってくれないか!?」


「すみません! 帰らないと……!!」


 シンデレラはそのまま城の石段を駆け降りました。途中でガラスの靴が片方脱げてヒビが入りました。しかしシンデレラは靴を拾うことなく走り続けます。


「待ってくれないか!」


 ガラスの靴を拾った王子がシンデレラの後を追い掛けます。鐘の音は鳴り続け、徐々に魔法が解けていきます。馬や運転手はネズミ達に、馬車はカボチャに……。シンデレラは馬車を諦め走り続けました。


 そして森の中で息を切らしたシンデレラが立ち止まりふと振り返ると、来るときに見えていた大きな城がいつの間にか消えていました…………。



「ま、待って……! 待ってくれ……!!」


 同じく息を切らした、見窄らしい青年がシンデレラの前へと現れました。その手にはヒビ割れたガラスの靴が握られています。


「もしかして……王子様?」


 シンデレラは光り輝くドレスに手を当て問い掛けました。青年は呼吸を整えガラスの靴を振りました。


「君に謝らなければならない事がある……」


 ガラスの靴をシンデレラの足下へ置くと、最後の魔法が解け、シンデレラはいつもの灰だらけの服へと戻ってしまいました。


「……私もです」


 シンデレラは申し訳なさそうに灰色の服に手を当てました。


「いや、良いんだ。ただ……とても楽しかった。それを言いたくて…………」


「私も……とても楽しかったです」


 二人は自然と手を取り合いました。

 いつの間にかネズミ達が集まって、草笛でメロディーを奏で始めました。


「舞踏会もお城も豪華な料理もいらないさ。このときめきはいつだって変わらない」


「そうね。いくら着飾っても大事なのは中身。心よね!」


 二人は魔法が解ける前と変わらず踊り始めました。着の身着のままありのまま、自由気ままに踊り続けます。


「君の名前を教えてくれないか」


「シンデレラ……」


「素敵な名前……良かったら僕と一緒になってくれないか?」


「ええ♪ もちろん♡」



 息の合った軽快なダンスに、ネズミ達の祝福の声が上がりました。


挿絵(By みてみん)

読んで頂きましてありがとうございました!

(*´д`*)


Special Thanks 作文太郎さん

素敵な挿絵をありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] まさか王子も魔法だったとは…… もうぶっちゃけ本家より好きです!
[良い点] 良いお話でした。題との相性も素敵です☆彡 [気になる点] 手づかみで食べているシーンで笑い、今回はどっちのパターンで来るかとドキドキしてしまいました (*´▽`*)
[良い点] うん……うん……? [気になる点] うん。うん。うーん。 [一言] うん。んー。 ありがとうございました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ