little dragon killer
ナイフは二本。これでドラゴンと太刀打ち出来るのか、何の賞賛も無くこんな事をした訳ではない。それは最大の攻撃力のあるズリムさんが自由に攻撃して怯ませ続ける事。
しかしそれも運、もしくはドラゴン任せでしかなく厳しい事は明らかだ。
手も痛い、武装も心許ない、そんな死ぬ一歩手前だというのに俺の顔は不遜な笑みを浮かべている。おそらくこの笑みが未だドラゴンの目を引き付けている。内心では笑えないことだ。
先に仕掛けたのは俺だった。こんなナイフでドラゴンの攻撃なんか受けれる訳が無い。ドラゴンの鼻先を掠る、そのまま首元へ踏み込む。ドラゴン難なく首を縮めて対処する。そのまま噛みつき攻撃。すぐさま反応できていたので後ろ、左、の二回のステップで回避する。そのままこのナイフは使い捨てにするつもりで首に刺突を放った。
しかし、ボキリッとナイフは呆気なく折れてしまった。離脱が遅れて軽く振られた首に吹き飛ばされてしまう。
受け身もとれずに二転三転としてしまったが、すぐさま懐に仕舞っていたナイフを取り出す。軽い目眩がするがドラゴンから目は離さない。
しかしこの隙をドラゴンが見逃してくれる筈がない。俺の頭に前足が振り下ろされる。ギリギリで避け……られなかった。またしてもゴロゴロと草地を転がる。
ナイフはまだ握っていた。ならばと開いた距離を眺めながら立ち上がる。今は自分がどんな表情をしているのか分かっていなかった。衝撃を感じた左肩辺りは力が入らずにダランとしているし、全身はおそらく打ち身だらけだ。
まだ終わっていない。勝負はドラゴンの攻撃を躱すところからだ!
「ガアァッ!」
「させないっ!」
ガインッと硬いものがぶつかり合う音が聞こえた。その姿は数瞬前まで見ていなかった背中。
「ジョート…君?」
「ノアール君! 下がって!」
自身の体を硬く強化する闇魔法。今ジョートが使い正面から立ち向かえているのは、それが使えているからだ。
「あらあああああっ!」
背中で漆黒のが渦巻いた。それは熱を持ってこちらに押し寄せる。
「死ねやァ!」
「グガアアアア⁈」
漆黒の渦はトニックの木剣に炎として宿りドラゴンの目を貫いていた。
「ぁああああああっ!!!」
トニックが飛び降りた首に大きな影が飛び乗る。それは鉄の剣の刺突を伴っていた。
「いくよっ!」
黒い閃光がそこを刺した。間髪入れずに響く大音声。空気を焼き、震わせ、そして照らしだした。
白い巨体が崩れ落ちる。保護色ともとれた緑色は失われており、その体はピクリとも動かない。
「……倒した?」
誰かが呟いた。皆、尽く中心から吹き飛ばされていて、土煙が舞っていた。
やがて誰かが立ち上がり、それを見て自分も立ち上がる。六人全員が立ち上がってドラゴンの元へ近づいて来ていた。
「…ああ、死んでる。このドラゴンは死んでる…」
「マジかよ……コレって俺たちが倒したんだよな……?」
「多分幼生体だけどそういうことだよ……!」
「私! 私ドラゴンの右目に一撃…!」
「僕なんて腕に歯形がついてるよ!」
「…………」
各々の驚き様の中俺は眠くて仕方が無かった。なのでこの後のことはよく知らない……。




