はなればなれ
駅のホームのベンチで、もう何本目かも分からない電車を見送った。
ぼーっとしている間に、幼馴染の三夏が乗った電車と別れてからもう3時間も経っていた。
時刻は8:00を過ぎ、辺りはいつの間にか暗くなってしまっている。
重い腰を上げ、家への帰路につく。
三夏はもうアメリカ行きの飛行機に乗っている頃だろうか。
アメリカに留学するという話を聞いたときは、話がぶっ飛びすぎてうまく想像できなかった。
別れが悲しいのは分かっていたけれど、こんなにも胸に重たくのしかかってくるとは思っていなかった。
会えなくても今の時代、簡単にメッセージを送りあうことができる。でもそれは会いたい気持ちを増幅させるだけにすぎないように思えてならないのだ。
三夏のいないこれからの事を考えているうちに、家に到着する。
ドアを開けて中に入ると、心配そうな顔で母親が玄関まで出てきた。
「おかえり・・・ご飯食べれそう?」
「ご飯はいいや。今日はもう寝るね」
それだけ言うと、私は階段を上がって自分の部屋に向かった。
三夏は小さい頃から私の家に遊びに来ていたので、母も三夏のことはよく知っている。
そして、三夏との別れの辛さも分かってくれているのだろう。
だから、遅くに帰ってきたことについても特に問い詰めてこない。
心配をかけているのは分かっているが、今は自分のことでいっぱいいっぱいだ。
部屋に入ると、メイクも落とさずにベッドに飛び込む。
何をすることもできず、三夏のことばかり考えてしまう。
三夏と一緒にいた時間は長すぎて、思い出は尽きない。
三夏の事を考えれば考えるほど眠れない。
すると突然、カーテンを開けっぱなしだった窓から、強い明かりが差し込んできた。
時計を見ると、時刻はまだ夜の10時を過ぎたばかりだ。夜が明けるには早すぎる。
恐る恐る窓に近づき、明かりの正体を確かめる。
明かりの正体を見て、私は呆然と立ち尽くしてしまった。
それは、私が今日の夕方に、何度も何度も見送ったものだった。
しかし、駅で見送ったそれとはひとつ違う点があった。
私の部屋の窓に現れたそれは、宙に浮いていたのだ。