第二十七話 神の散髪
タイトルが駄洒落だって? 私もそう思いましたw
ガルリア王国立総合魔法学園。通称、総魔園。
その学園は七歳以上、十歳以下の少年少女達が魔法に関する知識、歴史、そして実技。その全てを自由に学ぶことが出来る施設だ。
七歳から十歳までの猶予がある理由は、基礎学力を学ぶ短期学校が約一年あり、それに通い終わった人間がその上の施設としてやってくることがあるからだ。
そして、俺ら三人は明日の入学試験の為に準備を屋敷でしていた。
「魔法理論に歴史。簡単な計算と語学力……後は魔法の実技ですわね。内容は多いですが、この二年でやれることはやりました。さぁ行きましょうか!」
「イヴ……もう口調がすごいことなってるよ。リラックス、リラックス」
数分まで語学の勉強をしていたイヴの口調に、いつも通りにカティがツッコミを入れる。
その言葉遣いから分かるように、魔法使いには敬語が必要不可欠なのだ。前世の記憶を持つ俺からすれば、丁寧語程度のレベルなのだが、慣れないイヴにはキツイものなのだろう。
「リラックスって何?! イヴが知らない言葉をこれ以上頭に詰め込まないでえええ!!」
パンク寸前のようだ。
「まぁ、魔法の学校だからイヴの魔力なら問題無く行けるはずさ。気楽にいこう」
「そだね」
物凄い速さの切り返しである。確かにこれ以上騒がれると面倒ではあったが、この変わり身の早さは異常だ。
魔法に絶対の自信があるからこその変わり身なのだろうが、その勉学は全て捨てたスタイルは如何なものだろう。
「と、取り敢えずいつも通りになって良かったよ。な、カティ……カティ?」
賛同を得ようとカティに話しかけるが、返事がない。一体どうしたのだろうと、反対側に立つカティを見返す。
「魔法……魔法ね……どうせ僕は精霊術しか使えないよ……」
「カティイイイイイイ?!」
まさかの次はカティがブルーになっていた。
「だ、だから! 精霊術でも上手く使いこなせれば特進クラスに入れるって言ってるだろ?」
「逆に言えば上手く使えなければ特進クラスどころか、通常のクラスにも入れないだろ!?」
精霊術は教えられる人間が少ないため、特進クラスという特別なクラスで受け持っている。だが、そのクラスでも教えられる人間は限られ、定員は三人まで。今年度に何人の精霊術師がいるかは不明であるが、まさに狭き門であった。
だが、俺には二人が受かる可能性を……いや、確実に受かるという現実を知っている。
俺は二人には見えないようにステータスを開く。そこには見慣れない表示があった。
PTメンバー
アダム・カーティス
Lv.7
イヴ・カーティス
Lv.7
このパーティ機能により、俺は二人のステータスを知っている。二年前のあの頃の二人でさえ、一般的な子供の数値を超えていた筈だ。それが、ダークエルフというレベル差のある戦闘で、多少とはいえ急激に努力値を手に入れ。そして、俺との特訓で強くさせている。
「安心しろよ二人とも。結果発表の明後日にはみんな笑って入学さ」
ステータスを隠し、二人へと笑顔を見せた。
すると、二人もその笑顔につられるように笑う。
「リアが言うなら信じれるね!」
「あぁ、そうだな。リアが言うことだ。間違いないだろう」
その頼もしい二人の言葉に、俺もまた一層笑みが強く浮かんでいた。
その後、入学試験の準備を終えた俺たちは各々の部屋へと帰っていった。試験時間が朝十時とは言え、二人には朝早く起きるように言っていたため、もう床に……ベッドに就いているだろう。
しかし、俺の時間はここからだ。
「リアくんおっそーい」
「いや、あのな、無駄に高い声でそんなこと言うなよ。子供だから一瞬マジで可愛い女の子かと思っただろ」
ドアを閉めた途端に俺のベッドに忽然と現れる存在。
神だ。
職業は全能神。役職名はゼウス。あだ名はぜっちゃんこと神だ。
「いやだなーボクは可愛い女の子だよ〜?」
「俺に新たな性癖を与えたりとかしないでくれよ? お前ならスキルBLとかショタコンとか本気で付けそうだから」
因みに存在する。
神は俺の言葉に、あはは……と、答えなっていない曖昧な笑みを見せた。まさか本当に付ける気では無いだろうか。と、俺も妙な勘ぐりが浮かぶが、それ以上に神様のとある部分に疑問が浮かんだ。
「お前、何で髪伸びてるの?」
「ん?」
言われて気がついたのか、神様は自身の白髪の前髪を掴んで伸ばす。ざっと鼻の上まで伸びている。前に出会った時はもう少し短く、目に届くかどうかだったのだが、何でだろうか。
「んー、これはアレだね。依代姿は年齢を取るから、それだけ実体化してる時間が長かったって事だね」
「ふーん。因みに依代? は何歳ぐらいなの?」
「確か、十歳ぐらいだったけどキミの所で実体化してる期間が長いからそろそろ十二か十三だね」
神をやっているのだから、精神年齢……つまり、実体化していない時間はもっとであろう。それでも十歳で、俺のところで短くとも二年。六分の一を俺が占めている計算だ。
「どうでもいいけど、お前そんだけ長いと髪の毛邪魔じゃね?」
「ん、そだね。後ろはまだしも、前は邪魔だねー。キミの顔が見られないよ」
俺の顔を見れるか見られないかはどうでもいいのだが、日常生活……この場合実体化時を日常生活と呼べるかは微妙なラインだが……に支障をきたすレベルだろう。
「んじゃ、切ってやるからちょっとそこに座れ」
「切ってくれるの? ありがとー!!」
十二、三歳の神の抱擁を受け、俺は準備を始める。切った髪の処分は最悪の場合燃やしてしまえば良いのだが、集めるのが大変な為に床にシートを張った。シートの製造方法は不明である。一言だけ言うなればメイドインゴッドである。
そして椅子に座らせたのだが、衣服にも付着しないようにシートと同じ材質の、コートのようなものを神が着用した。勿論メイドインゴッドで。
「じゃあ、切るぞー。お客さん。本日はどうしましょう?」
前世で何度か通った馴染みの床屋のようにし、質問する。
その意図は神様にも通じたらしく、あちらも同じく客のように振る舞いを見せた。
「そうですねー。前髪をバッサリ切っちゃって、他は適当に梳いてください」
「後ろの方も長いけど、短くしなくていい?」
適当に左手で綺麗な白髪を撫でながら質問すると、神は目を細める。撫でられると気持ち良いのだろうか。そんなの主人公ハーレムモノでしか見たことも聞いたこともないのだが。
「店員さんは髪の長い女性と短い女性。どちらが好みで?」
お前男だろ。とは思ったのだが、そういうRPGなのだろう。ここは神様のRPG設定に従って答えよう。
「まぁ、女性なら長い方が綺麗に見えますかね」
「じゃあ、後ろはこのまま伸ばします」
だから女性なら、なのだが、
「分かりました」
俺は一切文句を言わずに散髪を始めた。
この長さがきっと俺たちの積み重ねた時間なのだろう。そんなことを柄にもなく考えながら。
新章入ったのにほのぼの。周囲の人間をもう一度見るだけで終わりでしたね。
なら、リリ達も出せって思うかもしれないけど、エルフとか大人とかは二年じゃ中々変わらないからね。
今回は子供達に焦点を当ててみました。
日曜日も更新するかは不明です。




