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神様のRPG ー転生した世界で俺は神託に左右されるー  作者: ゆっち
第二部 血塗られた森の再来編
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第二十三話 再度の決闘

 音がしない、不思議な空間だった。季節は冬であるから虫の音が聞こえないのは当たり前だとし、風がなかったとしてもこれは異様だろう。

 リリシアとクラウスは二人で歩きながらその事ばかり考えていた。本来ならばこれから出くわすダークエルフのことを考えねばいけないというのに、まるで現実逃避でもするかのように別なことに意識を割く。


 意味がないことは分かっている。しかし、ふと考えると昔のあの景色を思い出すのだ。森が森人族(エルフ)の血で染まったあの最悪の日。


 血塗られた森(ブラッディフォレスト)を。


 強いて言うならば、今日は再来だ。あの日の再来である。五年前に暴れていたダークエルフが唐突に消息を絶ったというのに復活し、またあの時のように森に滞在した。

 冒険者たちしかまだ犠牲が出てないとは言え、その魔の手が五年の間で安息を手に入れた仲間たちに向けられないとは言い切れない。


 だからこそ二人は、冒険者たちから手に入れた情報を元に向かってきていた。森をある程度進み、立ち止まる。


 そして静かなる森が、大きな風と共に闇色に染まる。


「いらっしゃい。馬鹿な森人族(エルフ)さん達」


 後方から、悪魔が囁いた。


 月明かりすらも入り込めない、漆黒の中。その漆黒を飲み込む男がそこにいた。


「まさか、あん時の殺り残したちがこうもノコノコと……あぁん? なるほど、なんか匂うと思ってたらアレはあいつの匂いでもクソアマでもなかったわけか」


 ダークエルフが怪訝そうな表情になり、勝手に納得する。しかし、その話の内容的に自分たちとリア達が同じ匂いを出していたという意味なのだろう。と彼女たちは理解する。


「てことは復讐もあるが、奴等の敵討ちもあるってワケか! ははっ!! 嫌われ者はツライねぇ。人気者とも言えんのかぁ?」

「私達は、別に貴様を嫌っても居らぬ。ただ、殺す。それだけだ」


 クラウスが方腕を伸ばし、脚を広げて構えた。それに倣うようにリリシアも持ってきた杖を握り直す。


「ジジイ。テメェじゃ俺の相手に何ねぇよ」

「そいつはどうかな。やってみなくては分からないさ」


 ダークエルフの舌打ち。

 それが勝負の合図になった。


「グヒャァッ!」

「ふっ!」


 予備動作無しの唐突な跳躍と、体重を前に移すことによる無駄のない駆け足。


「テメェはそうだなぁ……脚だぁ!」


 その言葉に合わせ、ダークエルフは下段に向け脚蹴りを喰らわす。しかし、


「最初から狙う場所を告げて、成功すると思ったか!」


 クラウスが跳ね上がる。どちらも素早い動きだ。片方は突飛な瞬間速度。片方は体重移動を使った無駄のない動き。

 だが、この二つの動きは同じ速さであっても違いがある。後者は動作のために体重移動を予め行わなければならない。


 しかし、前者は、次の動きが予測できない。


「無駄ァ!」


 自分の頭上にいるクラウスに向け、先ほど足蹴りに使った方を軸にし、今度は逆足で上空へと蹴り上げた。その速度は目視出来るか出来ないか、その限界ギリギリだ。

 豪快な風切り音と共に、脚が標的へと向かう。

 だが、その動作を妨げる風がもう一つあった。


風圧(ウィンドプレス)


 風の圧力が不安定な体勢のダークエルフを吹き飛ばす。急な横殴りの風に対処できなかった男はそのまま吹き飛ばされ、大木へと身体をぶつけた。

 肋骨は勿論、今のは首もいってしまう角度のようだ。だが、安心して数秒。男は首を準備運動でもするかのように回して起き上がる。


「普通なら死んでたわ……あぶねぇあぶねぇ……」


 そして何事もなかったのようにまた敵を見返す。


「生命としての(ことわり)を逸脱しておるぞ……」


 クラウスはもう一度構えを取る。


 そして、吹き飛んだ。


「な…………ぐぁっ!?」


 尋常ではないその圧力に押され、リリシアをも巻き込んでクラウスが後ろの木々にぶつかり、失速してやっと止まる。

 余りにも攻撃が効きすぎたのか、クラウスは動きもしない。リリシアもリリシアで、意識はあるし目は動くが体が動かなかった。


 その二人を見やって、謎の圧力を生んだ張本人。ダークエルフが二人に向かってゆっくりと進んでくる。


「お前、まだ意識あんのか。残念だなぁ……こっから先は意識がねぇ方が楽なんだがなぁ……じゃねぇと、あのクソアマ見てぇに泣き散らしまう……まぁ、それも良いんだが、なぁ!!」


 魔の手が伸びる。ゆっくりと、確実に。

 リリシアは反射的に目を閉じ、顔を背けた。しかし、どれだけ待ってもその時はやってこない。時間でも止まったかのように。


 そして、次の瞬間。


 時がまた動き出した。


「ジョゼフ。ここからは俺たちが相手してやるよ」


 目を開けるとそこには、闇夜の中に輝く一つの銀閃。


 ストーリア・グローリーがいた。


 ◇ ◇ ◇


 危機一髪。あと数秒でも遅れれば、リリシアもカンザキと同じ末路を迎えていただろう。

 だから俺は心の中で安堵しつつ、気を引き締め直した。


「また来たのか。小僧」

「あぁ。あの時は決着をつけられなかったからな。もう一回、やろうぜ?」


 左手に短剣。右手に片手剣。いつものように身体を傾け、片手剣をメインに持って構える。

 カティたちもそれに合わせて各々の構えをする。唯一カンザキだけは逃げるための準備をしていた。


「その周りのガキ共は?」

「おまけだ。嫌なら退かすけど?」


 勿論ここで一対一に持って行かれた時点で俺は負けるが、ジョゼフの性質上それは無いと考えて俺は聞く。

 すると、予想通りの反応が返ってきた。


「別に良いが、あいつに頼まれてるのはお前だけだ。他の奴は殺しちまうぞ?」

「…………やっぱ、二重人格……いや、神代が憑依して……って、考えるだけ無駄か」


 神代がジョゼフに憑依したことで起きた、多重人格という障害。しかし、だからと言って神代は悪くないから傷つけれない。という考えはない。


「さぁて、クソガキ。今度は眠らねぇで、しっかりと楽しませろよ!」


 ジョゼフが予備動作無しの跳躍をした。


加速(ブースト)!」


 だが、その動きは読めている。とにかく前に突っ込んでくるだけの動きが読めていれば、どれぐらいの距離避ければいいか分かる。

 相手の速度に合わせ、横ステップで攻撃を避けた。


「んぁ? 今度は追撃無しか?」


 ジョゼフが眉をひそめ、こちらを見つめる。確かに前回と同じならばここで俺が追撃で水平斬(ホリゾンタル)を撃っていた。しかし、今回の俺の役目は攻撃ではない。


 俺は横目で仲間たちの動きを見る。


 そもそも勝つ気などない。カンザキにはリリシア達二人の避難を、カティには精霊の動きを、イヴにはもしもの時のために待機してもらっている。


 そして俺は、ただの時間稼ぎ。ジョゼフは気に食わないことが起きればあの超常的な動きを見せる。それが起きない程度に俺が時間を稼ぐのだ。

 運良く俺には手加減しなくてはならないことを知っている。これを逆手に取るのだ。


「周りのガキ共も動かねぇし、つーか、俺らの速度について来れてねぇじゃねぇか」

「別にいいだろ。俺を見ろよダークエルフ」


 どうやら俺と同タイミングで余所見をしていたらしいジョゼフが、呆れたように呟く。確かに先ほど一緒に戦うといった癖に動かない、それどころかついて来れない者を見ては呆れもするだろう。


 しかし、まだタイミングが合わないだけだ。


森人族(エルフ)も逃げちまったしよぉ……もう少し楽しませてくれよ、小僧!」


 闇色を纏いながら、ジョゼフが跳び膝蹴りを行う。オーラのような闇色は恐らく精霊術。どのような現象を起こすのか分からないからこそ、多めに避ける。


「なぁん、つってな」


 俺の横を通り過ぎるかどうかという時に、ジョゼフがニヒルに笑う。

 そして次の瞬間、逆脚が目の前に迫ってきていた。


「くっ!」


 咄嗟に片手剣を盾代わりにし、攻撃を避ける。だが、肩に攻撃が決まってしまった。


「痛そうじゃねぇか。おら、早く回復しろよ」


 俺の肩を見ながらジョゼフが促す。その距離は腕を伸ばせば届く距離で、そして油断もしている。時間も頃合い。


 俺は最後の作戦に出ることにした。


「じゃあ……お言葉に甘えて……氷槍(アイスニードル)!!」


 氷の槍が生成され、ジョゼフの腹部を貫く。だが、


「油断させといての致命傷か。技がないなら小技で勝負って感じで、最高だねぇ!」


 男は氷の槍を握りつぶして、何事もなかったかのように笑う。傷口も綺麗に回復している。


「そろそろ逃げる頃合いか? 仲間さんたちも一斉に片付け作業に入ってやがるし……んじゃあ、もう少し遊んでもらうぞ」


 逃げることがバレていた。いや、それ以前に、それ以上に危機が迫っている。


 ジョゼフの言葉から俺は本能的に察した。


「カティ、イヴ! 周囲警戒!! (ウルフ)が来るぞ!」


 そして、予想通りに林の奥から何かが走ってくる音が聞こえる。


「流石だなぁ。今の言葉だけでよく分かった。褒めてやるよ」


 音が近づくにつれ、ジョゼフの笑顔が黒いものになっていく。今の二人で(ウルフ)ならまだしも……それ以上ならば、


 最悪の結末を考えた時だった。


「面白そうなことしてんじゃねぇか、リアの小僧!」


 聞き覚えのある声だ。


 俺は、狼が来たとばかり思っていた方向を見返す。すると、そこには、


「我等が冒険者ギルドにカンザキからの依頼が来た。やるからには、本気でな! 行くぞ! てめぇらぁ!!」

「おっさん……?!」


 中年腹をポンっと叩いておっさんが笑う。その後ろには百にも迫る数の冒険者達。


「周りの雑魚どもはこいつらが狩ってくれる。そもそもなぁ、子供達だけにこんな危険なことさせれるか……って、話だ」

「……そうか」


 これならば、逃げずに戦えるかもしれない。俺はおっさんを見て、そう考えていた。

 どうやらあちらも同じ考えだったらしく、俺に近づいて囁く。


「お前さんの作戦に乗る。そして、その後、光魔法師に頼んであいつを止める」


 希望が見えてきた。

 ギルドの仕組みなのですが、大枠は勿論冒険者ギルドやら生産ギルドなどなどあります。その中の一つのギルドがあの村のギルドで、中年腹のおっさんはギルド長です。つまり、カンザキより強いです。(純粋な一対一に限る)


 これにて三月は終了です。四月からは不定期更新になってしまいますが、よろしくお願いします。

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