第十六話 屋敷の森
引っ越しが完了した。
ぶっちゃけよう。俺は私物が少ない上に、書斎の本はこちらよりも実家の方が多いらしく趣味の本も持っていく必要がない。それにガウェインがこちらに帰宅してきた時のためにある程度の荷物も残している。そして、メイドと執事の仕事の速さ。
やることがなかった。
そんな訳で初の王都なのだが、感想はイッツファンタジーである。もう、テンプレ過ぎて、中世ヨーロッパがどうの、城がどうの、という説明もいらない気がしてしまう。精々説明するにしても、魔法具という魔力変換器で結界が作られていること。それに伴い、門の前の兵士は開閉をするだけの一人。ということぐらいだろうか。
本当に説明する内容がない。
『ねぇねぇ、魔法具って何なの?』
なので、王都の街並みを眺めながらこいつの相手をしている。
『魔法具ってのは、ようは機械だな。プログラムされた内容を実行する。機械と違うのは動力源が電気じゃなくて魔力ってことぐらいだ』
『魔法変換装置、みたいな?』
『そうそう、みたいな感じ。結界魔法をプログラムして、周囲の魔力を集めて発動してるんだとさ』
因みにだが、空気中の魔力とは自然の中から生まれるものだ。草木が生い茂っている場所ならばその空気中の魔力も多い。だが、別に木が魔力の元というわけでもなく、草が燃えてても排出されるし、身近なところだと人からもである。
更に特徴として水の近くならば、水魔力が多いので水魔法の出力速度が上がったりするため水魔法使いの中にはわざわざ水を常備している人もいたり。
『なら、火属性の得意な人はマッチ棒でも持ってるのかな?』
『じゃあ、土魔法使いは甲子園の砂とか持ってそうだな』
これは余談だが、マッチ棒は微量だが土属性を持っている。燃やせば勿論火属性も排出するが。
火ならば火の近く。
水ならば水や氷の近く。
風ならば風や空気……無酸素状態の方が珍しいのだが……の近く。
地ならば地や関係性の近い木など。
光ならば太陽光。
闇ならば月光。だ。
『んー? でもそれだと日中に闇魔法使えなくない?』
『そりゃないわ。俺もカンザキも闇魔法使ってたじゃん? 機械ってのは人間が楽するために作ってんだぞ? つまり、魔法具も然り』
『えっと、魔法具は魔法変換装置だから……なるほど、人間は自分にあった魔力に変換させているんだね』
これが先ほどいった発動速度の違いの理由だ。だから水を持ち歩いたり、甲子園の砂を……いや、持ってる人いないけどさ。マッチ棒は手軽で良い案だとは思うが。
『だから、戦うときは周りの魔力に合わせたり、逆に空気中の魔力を先に変換させて敵の発動速度を遅くさせたり出来るわけだ』
『奥が深いねぇ……ボクは念じたら基本何でも出来るから考えたことないや』
これが神スペックである。
暫くの間俺が頭の中で会話をしていると……こう言うと頭がおかしい人に聞こえるのだが、実際に頭の中での会話なので仕方がない……馬車が大きな門をくぐった。
というか、本当に大きい。前まで住んでいた別荘の四倍近いサイズの屋敷である。門の大きさもそれに習ってかなりのサイズだ。
「どう? リア。ここが実家よ」
「すごく……大きいです」
途轍もなく卑猥な発言に聞こえるのだが、大きすぎて本当に他の言葉が出てこなかった。スティアも何が面白いのか、その反応を見て笑っている。
俺が屋敷の外装を眺めていると、玄関と思しき所から一人の老人が出て来た。ガウェインを老けさせて、少し小さめにしたような人間だ。間違いなく叔父である。
が、こちらを睨んでいる。かなり敵対心を向けられてしまっているようだ。
「リア。叔父さんは少しナイーブな人だから気をつけてね?」
何だろうか。毛根がナイーブなのだろうか。後退し始めてる髪型がナイーブなのだろうか。俺も遺伝してるのだろうか。
ナイーブな言葉に若干ナイーブになりながら、俺はナイーブな叔父にナイーブに話しかけることにした。
「どうも、お初にお目にかかります。ストーリア・グローリーです。ナイーブな髪型ですね」
「ふんっ……お前がガウェインの子供……待て、何故か今、ワシのナイーブなところを褒めたのか? 褒めたんじゃよな?!」
しまった。敵対心を向けられて、更に遺伝のことを考えすぎて本音が出てしまった。
「えぇ、褒め言葉です。叔父様の髪型はまるで純粋で繊細な……今にも消え入ってしまいそうな髪型です」
「それは褒め言葉じゃないわい! ハゲ散らかす前と言ってるんじゃろ?!」
先ほどから目の前からはおじさんの怒鳴り声、頭の中では笑いを堪えている神の声が聞こえてくる。
「はぁ……どれぐらいの男か見極めようと思ったが、ガウェイン同様。いや、それ以上に神経が図太いのぉ……」
「四歳の子供を見極めようとかしないでください」
「本当に四歳児か……?」
ーー失礼な! どこからどう見ても四歳児だ! 外見だけだが。
「叔父様。立ち話も何ですし、それにほら。リアも同年代の子と会ってみたいと……」
「そうじゃな。付いて来い。ワシが案内してやる」
周囲の使用人達を退かせ、叔父が屋敷の中へと向かう。そして、脳内からいつもの声が聞こえる。
『いや……もう、凄いよ。流石だね……そ、そんな……禿げ……禿げたくない……ぶはっ……無理、笑い堪えられないよ!!』
無視しよう。
屋敷の中を歩いて五分。いや、家の中を歩いて五分って結構な距離な気がする。客間のような場所であるし、これでも近い方なのだろう。
四つあるソファに適当に腰掛け、叔父の出方を伺う。
「そういえば、自己紹介がまだじゃったな。ワシはミルハルド」
「ミルハゲド?」
「言うと思ったわ……というより、ガウェインにも言われておるわ」
流石我が父。因みに俺はまだ子供だから噛んだだけだ。本当に。
「リア、少しは遠慮しなさい。叔父様だって笑っているけどハゲてることに繊細なのよ!」
「スティアさん。ワシはまだハゲてないぞー」
「すみませんお母様。叔父様も。ハゲみたいに扱ってすみません。みたいじゃなくて、そのものです。すみません」
「フォローしろよ!?」
どうやらハゲいじりは親公認のようだ。いや、この場合娘公認? ガウェインの父なので娘とはちょっと違うだろうが、取り敢えず公認のようである。
「リアよ。もういい。もうイジメナイデ……オマエサンハアッチデホカノコトアソンデコイ」
「あ、は、はい」
疲れ果てた叔父を見ながら、俺は部屋を退出することになった。因みに、リリシアもクラウスも部屋に残るらしく俺一人退出だ。
『怒った?』
『怒ったつーより、疲れたが正解じゃね?』
少々悪いことをしたなぁ、と思いつつ俺は屋敷を探索する。
結論。大きい。
あと疲れた。
『部屋有り余ってんなぁ……』
『というか、キミ。他の子と遊べって言われてなかった?』
『いや、どこにいるのかすら分かんねぇし。そもそも遊ぶって何して遊べばいいんだよ』
そう言い合いながら、次の部屋を開ける。何もない。何もないわけではないが、実用性皆無な部屋ばかりだ。高級そうな壺とか、高級そうな絵画とか、高級そうな銅像とか。
『金有り余ってんなぁ』
『部屋から金にグレードアップしてるね』
神様の言葉は軽くスルーしておく。安定の神スルーだ。神って付けるとなんか、スルーが上手いみたいに聞こえる。神会話とか、最近の俺はマジ神がかってる。
『暇だね』
『暇だな』
『庭に行こう』
『庭に行くか』
庭に行くことになった。歩いて十分である。おかしいな。庭ってもっと気軽にいける場所だと思ってた。
『こちらも高級そうな銅像とかエトセトラだな』
『代わり映えしないねぇ……あのおじちゃんこんな暇なところでいつも何してるの? 絶対ストレス溜まるよ?』
『溜まっているからナイーブになるんだよ』
髪のことを神と話ししながら、俺は庭の探索を続ける。どうやらこの庭には裏庭があるらしく、更にそこから道があった。
『この道は何だ?』
『こっちに行っても街は無いだろうし、プラベート森林?』
『いや、あのな。プラベート森林って何だよ。ビーチじゃないんだから』
と、言いつつも個人的な森だろうと理解する。観葉植物という感覚であってもおかしくはなさそうだ。
取り敢えずどこまで続いているのか確かめようと、真っ直ぐ歩いていく。真っ直ぐ歩いていくこと三十分。いや、もうそれ庭の領分超えてるとか思ったが、口には出さない。きっとりんご畠とかそんな感じだ。そうだろう。そうじゃなきゃ、本当に無駄な広さだ。
横幅もある上に、この広さ。帰るのは加速でどうにかなるだろから問題はない。しかし、この広さだと言うのに森林や道が整備されている。庭師の無駄遣いだ。俺が庭師なら、こんな森一つ任されたら発狂する。
『もうこれ、ボクとキミの散歩デートだよ』
『相方さんはずっと上から見てるだけだけどな』
多少ステータスが高くても、疲れるものは疲れるのだ。神にも歩け、と命令したくなる。
『じゃあ……』
『ん?』
神が舞い降りた。比喩でも揶揄でもない。神が上から降りてきた。
「来ちゃった」
「何その女子力高い言葉」
デートか何かかと勘違いしそうである。男同士だが。
「お前も暇なんだな」
「暇じゃないさ。隙を作ってきたんだよ」
凄いぐらいに尽くされている言葉だ。これが女ならばなお嬉しかった。
「つーか、ここら辺人居ないの? お前、見られたら困るだろ」
「まぁ、最悪の場合は一瞬で消えるよ。ボクの実態とその人の記憶が」
ゲスい笑みである。
「でもお前……」
「ねぇ、さっきから聞いてるとボクが邪魔な人みたいに聞こえるんだけど…………だけど……邪魔、だった?」
無駄な女子力だ。
神は上目遣いでこちらを見つめる。精神年齢が大人の俺からすれば、この子供の容姿で困った顔をされれば放って置けない。容姿とはずるいものである。
「別に、邪魔じゃない。寧ろ念話よりは楽だし」
「それなら良かった」
そして、パァッと花が咲くように笑うのだ。ずるいとしかいえない。
その後、森林の中で軽く話しをしながら俺たちは色々見回った。勿論木ばかりなのだが、実がなっている木もあったり、俺の魔法を見せたり。と、色々とやることはあった。
そして、新たな木の実を見つけて話しかけようとしたときだった。神が唐突に消えた。
「ん……」
『人いる』
最小限の言葉で俺に念話を送る神。消えた理由は大体理解していたが、こんな場所に一体どんな人が……
「その木の実は、モモクリの実だね」
子供だった。何かスマホで読めそうな漫画のタイトルを述べたが、どうやら違うらしい。俺が見つけた新しい木の実についてその子が解説してくれたのだ。
暗い青髪に深海のような瞳。そして、青と正反対の赤縁の眼鏡をかけた男の子だ。歳は見た目的には俺と変わらず、しかしそれでいて落ち着きを感じさせる。
「モモクリね。どっちの味がするのかはさておき、僕はストーリア・グローリー。キミは?」
外見は栗のようにトゲトゲしているし、味は桃だろうと勝手に当たりをつけて名前を問う。
「……アダム・カーティス。カティと呼んでくれ」
名前ではなく苗字の略称で呼べ、とは些か変な気もするが俺は一応納得しておく。もしも前世で亞蛇夢くんなど居たら名前で呼ばれるのを嫌がるかもしれないからだ。俺も前世の名前がちょっと嫌いだったりする。
「カティはここで何を?」
「魔法の練習だ。練習中に見知らぬ顔が見えたから話しかけた。そうしたら、きみが噂のストーリアだった。それだけだ」
ーー噂の?
俺と同年代なのに魔法の練習をしてていいのか。という疑問より先にそちらが浮かぶ。
「僕、噂になってるの?」
「あぁ、噂だ。話によれば、武術が得意だとか何とか」
「なるほどな。まぁ、一応剣も短剣も使えるし、普通の子供よりは得意だろうな」
「それは凄い……」
瞬間、目の前を氷の槍が通り過ぎた。
「な……」
「手合わせ、願おうか!」
振り返るとそこには氷の槍を持ったカティが、俺に向かってきていた。
私は良くラノベや小説を読んで不調を脱却するのですが、今回は二期も始まるということで俺◯イルを読みました。結果、不調から脱却し、五千文字近い分量になったのですが…………なんか、うん。書き方が変わったし、リアがヒッキーみたい。
リア充みたいな名前なのにヒッキーみたいになっちゃった。ヒッキーまじヒッキーならぬリア充まじリア充だよ……はい。意味わかりませんね。
取り敢えず、暫くはこの様な書き方になるかもしれません。前の書き方に近いラノベを探してきます。アブソ◯ュートデュオとか。
ここからは更新直前につけたあとがきです。
総合評価が100超えました!
ブックマーク数に対して、この点数なので高評価をくださった方が多いという……。恐縮であります!
そして更に一日でのPV数が1000を超えました……いやぁ、やっと総合で1000に行ったというのに一日で今までの分超えましたよw
しかし、PV数に対してブクマがあまり増えていないわけです。つまり、ブクマするほどではなかったという評価だと思うので、これからは面白いと思ってもらえるものを書いていきたいです!
物語もここから加速して(行くかな?)ので、ブックマークしてくれた方も、してない方も一緒に楽しく読んでくれれば嬉しいです!




