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神様のRPG ー転生した世界で俺は神託に左右されるー  作者: ゆっち
第二部 血塗られた森の再来編
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第十三話 別れの前に

 次の日。

 カンザキはまだ帰ってこなかった。それなりに大変な事件である。こうなってしまうのも仕方がないかもしれない。そう考えて、今日も一日、基礎鍛錬から始まった。

 そして、基礎鍛錬を終えて、周りを見る。


『いつもの場所にいつもがないっては、辛いものだね』

『そう……だな……』


 いつもあそこで精神統一をしている筈のカンザキがいない。それはとても精神的にくるものがあった。周りを必要としていると気がついて生まれた心の溝。今の俺は、いつもと何か違う気がする。


『認めたね? つまり、ボクがいなかった時も辛かったわけだよね?!』

『あ、それはねーわ』

『酷っ!?』


 勿論軽い冗談だ。寧ろ、内心では気遣ってくれた神様に感謝であった。

 結局一人でやれることなぞ、たかが知れず、基礎鍛錬を少しだけ延長して終えた。昼ご飯をすっかりお腹の膨らんだスティアと一緒に食し、本を読みながら神と雑談。


 と、その途中で自宅に手紙が届いた。手紙の宛名はグローリー家へで、差出人はカンザキであった。俺はそれをクラウスから受け取り、スティアたちの前で読んだ。

 内容を要約すればこうだ。

 俺の鍛錬の依頼を途中でキャンセル。代わりに黒い森について調査をギルドに依頼されたのことだ。


 ーーつまり、カンザキはもうあの場所には……。


「……ア様……リア様。大丈夫ですか?」

「…………え? あ、大丈夫だよ?」


 手紙を読み終えた俺を、リリシアが心配そうな顔で覗き込む。カンザキがもう家に来ないということにショックを受けていたようだ。気がつくと、クラウスもスティアも部屋から消えており、あとは俺たちしか残っていなかった。


「リア様。お気持ちは分かります。ですが、いつか必ず人には別れというものがあります。ですから……」

「……だとしても、もう会えないわけじゃないよね?」


 その質問にリリシアが口ごもる。希望的観測ならばいくらでも言いようがあるが、カンザキが冒険者をしている以上、必ず、とは言えないのだろう。少しばかり、俺も意地汚かった。リリシアを困らせるような質問をしてしまっている。

 リリシアに謝ろうと、口を開こうとすると部屋にクラウスが入ってきた。


「リア様。先ほどの話を聞かせてもらいました。それに関してですが、明日、カンザキ様の荷物をギルドへ運びますので」

「じゃあ、その時!」

「はい、リア様もご一緒に」


 カンザキにまた会える。それだけがとても嬉しかった。

 だから、俺は気がつけなかった。俺の隣で少しだけ寂しそうな表情を浮かべた森人族(エルフ)の女の子のことに。


 ◇ ◇ ◇


 翌朝、リリシアがまとめた木箱を家の専用の馬車に乗せて移動を開始することにした。というより、この家馬車もあったのだな。と、今更ながらに感動していた。


「それでは、お母様。リリ。いってきます」

「いってらっしゃい、リア。カンザキさんやギルドの人に迷惑をかけないようにね?」

「はい」


 返事をし、それを見計らったクラウスが馬車を走らせる。

 目指す場所はギルド。今日中に往復可能な距離らしいので、俺は特に荷物を持ってきていない。強いて言うならば、腰に短剣をぶら下げて、本を数冊持ってきていた。だが、この道には魔物も湧きにくいらしいため、戦闘の心配も無ければ、暇潰しも、暇潰しの(プロ)がいる。


『気のせいかな? 今凄く不名誉なこと考えてなかった?』

『気のせいだろ』


 妙に勘のいい神様である。


『しかし、大変なことになったねぇ。ボクはこの世界の知識はほぼ無いけど、ランクAの冒険者みたいに強い人が緊急収集かけられるのってさ』

『そうだな。かなり深刻だろうね』

『あの屋敷も森に近いし、早めに引っ越した方がいいかもよ?』


 その神の言葉に、俺は肯定も否定もできなかった。そんな俺を見かねてか、神様も話題転換する。


『で、さ。カンザキさんに会ってキミは何をする予定なの?』

『何って……』

『パンツでも返す気?』

『いや、違うし、てか、忘れてたよ、オイ』


 神のボケに相槌を打ちながらも考える。俺は一体、カンザキに会って何をしたいのだろうか?

 答えは、出ない。




 意外と揺れない馬車に乗ること三時間半。途中に休憩を挟んでいたとは言え、好調に馬車が進んで村に到着した。今更ではあるが、俺の自宅周辺には民家が一つもないというのに、少し離れたここには沢山ある。

 木で出来た門の前には兵士……傭兵?……もいたが、クラウスの顔を見るなりに道を開ける。これが顔パスか。執事の力、恐るべし。


 そして、大きな建物の中に入ると、そこには……


 ーーこれが冒険者ギルド……。


 よくファンタジー小説で見かけるものと大差がない空間が広がっていた。カウンター席に受付け嬢。クエストボードや冒険者の方々。

 これが、自らの命をかけ戦う者たちの巣窟。

 そう考えた瞬間に、身震いした。しかし、その震えも一人の女性のお陰ですぐにやむ。


「クラウス殿に……リア殿!?」


 カンザキが驚いた表情でこちらに近づいて来たのだ。使用人であるクラウスやリリシアなら兎も角、俺が来るのは想定外だったのだろう。


「先生。先生の私物を返却しに来ました。流石に着替えとかが無いのは大変でしょうし」

「……あぁ、実のところ大変だった。風呂にも入ってないからなぁ」


 そう言えばそうだった。という感じでカンザキが苦笑いを浮かべる。俺は、たった一日しか離れていなかったのに、その表情に懐かしさを感じられずにはいれなかった。


 なんやかんやで荷物運びも終わり、キャンセルしたとは言え、途中まで働いた分をカンザキにクラウスが支払い終える。カンザキは最初、遠慮していたのだが俺が頼み込み、何とかそのお金を自分のポーチに移動してくた。

 そして、カンザキが俺に話しかける。


「ところで、リア殿は何をしに来たんだ?」

「何しにって言われましても……唐突に先生が消えたので、せめて一目で良いから会いたいと思いまして」


 俺が本心を告げると、カンザキが少しだけそっぽを向く。


「リア殿。そういうのは、あまり言わないほうが良いぞ?」

「はい?」


 よく分からないが、先生の言うことだ。頷いておこう。

 その後、他愛の無い話をした後にクラウスがカンザキに話しかける。


「カンザキ様。一つだけ聞いてもよろしいでしょうか?」

「はい、何でしゃう?」


 ーー噛んだな。


 俺はジト目に、カンザキは真っ赤に、クラウスは大人の対応で涼しい顔をして質問を続けた。


「先日の事件。どこまで究明出来ているんですか?」


 カンザキの表情が固くなる。


「…………全く、これっぽっちも、一切、何も。という状況ですね。取り敢えず危険なことは変わりありません。ストーリア家の人間にはなるべくあそこには近寄らず……そうですよ。スティア殿もお腹に子を宿しているわけですし、早めに避難してもらいたいです」

「分かりました。そう、伝えておきます」


 それだけ言うと、クラウスが一歩退く。また俺とカンザキの会話を続けてくれ、という意味なのだろう。しかし、ここに来るまでに要した時間を考えるならば、アレを頼めるのは今しかない。

 俺はそう考えた。


「先生。頼みがあります」

「頼み?」


 カンザキはこちらの顔を見ながら、キョトンとする。唐突すぎたようだが、関係ない。否が応でもカンザキは次の言葉に反応するはずだ。

 俺は、そう考え、口を動かす。


「卒業試験を受けさせてください。先生の全力を僕にぶつけて。……僕も……いや、俺も本気を出すから」


 ストーリア・グローリーとして、先生の弟子として、今持てる全ての力を出すと僕ではなく。

 俺が告げた。

 実は、ここで二部のラストに繋がる内容を予約投稿していたのですが、内容変更しました。

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