第零話 神様の横暴
みんな、転生モノ。好きですよね。
「えっと、神様であってます?」
目の前で偉そうに踏ん反り返っている十歳程度の少年に、俺はそう話しかけた。側から見たら、小学生と遊んであげているお兄さん。或いは、頭イカれてるお兄さんに見える光景だ。
しかし、今回はどちらにも当てはまらない。
「いかにも。栄えある神様の中でも一番偉い全能神。ゼウスのぜっちゃんとは、ボクのことさ!」
全能神ゼウスことぜっちゃんは、本当に神様なのだ。詳しい原理や理由は分からないが、この少年を見た瞬間、敬意と感謝が芽生え、そして神と崇めたくなったのである。
生まれてこの方十八年。神様を信じた……頼りにしたことはあるが……事がない俺には新鮮な気分であった。
「それで、ぜっちゃん? 俺は何でこんなところに? まさかとは思うけど、俺を手違いで殺しちゃったからお詫びに異世界転生させてあげるよー。っていう王道テンプレ?」
俺が好きな小説やアニメでよくある話だ。因みにその場合は、チートな能力を使って俺TUEEEEE!をするのが基本である。勿論、そういう系は好きなのでむしろそうであって欲しい。
「おぉー、流石だね。ボクが選んだだけはあって順応性や頭の回転速度、そして、趣味嗜好は理想通りだ!!」
ーーお、ということはやはり、これは異世界転生なのか!
喜び、心の中でガッツポーズをすると神様が話を続ける。
「えっとさ、簡単に言うとね。キミを殺したのはボク。ちょうど良い素体が無かったから、あと七十年の寿命を捨てて転生の準備をさせたんだ!!」
「ちょっと待ってくれません? え? 何? 俺、手違いで死んだとかじゃなくて神様が寿命を無視して殺したの?」
ーーまさかの手違い殺しパターンじゃなくて、確信犯パターンだよ。
新手の転生に驚きを隠せない。
「うん。何か悪い? キミたちの命を決めるのはボクなんだから良いでしょう?」
百点満点の笑顔で相当ゲスい事を言うぜっちゃん。確かに神様が命を決めるのは当たり前なのかもしれないが、七十年の寿命は大きすぎる。
「まぁまぁ、転生出来るところは魔法の世界だよ? ワクワクするでしょ?」
「いや、はい。しますけど……はぁ、これって文句言っても聞かれないパターンですよね?」
「そりゃあ、ボクは神様だからね」
神様の答えに、仕方がない。と、口を紡ぐことにする。黙って話を聞いた方が良さげだ。
「細かいところも説明していくけど、これからキミが転生するのは新米神様が作った世界だからちょっと治安が悪いんだよ」
「……それで、内部から治安を良くするために俺を使うと?」
世界のために奔走してくれ、というところだろうか。俺が考えると、神様はすぐに否定に入る。
「あ、違う違う。ボクね。地球で作られたゲームが好きなんだけどさ。キミをその世界に転生させて、その一生をロールプレイングさせて欲しいんだよ!」
「……はい?」
ゲームが好きだから、ロールプレイングがしたい。と。
「つまり、俺がキャラクターで、神様がプレイヤー? それで、俺の一生を使ってRPGゲームを治安の悪い魔法の世界でやりたいと?」
「そういうことだね」
ーー人を勝手に殺しといて、その次の転生では手足のように働け、そういう訳か?
「いや、別に手足のように働けとかそんなことは言わないよ」
ーー心の声が読まれている?!
「うん、そりゃ、ボクとキミはゲームキャラとプレイヤーだから一心同体さ。それで、話を戻すけど、常にボクの指示に従えとは言わないし、常に指示を出すわけじゃない。時たま、こうしたら面白いだろうなぁって思った時にボクが指示を出すからその時だけ従って、あとは普通に生活していいよ」
たまに……か。確かに余り関与しないと言うならば別に問題がない気もする。神様が俺に何を求めているのかは、しっかりとは理解出来ないが、要はゲームのように面白い人生を期待しているわけである。
つまり、
「神様の話を受ければ、つまらない前世とは違って、ゲームのように面白い人生を歩める、というわけだ」
「そうとも言えるね」
ならば、答えは一つだ。
「分かった。その神様のRPG。受けてやるぜ」
「ありがとう。それじゃあ、キミの第二の人生に幸あらんことを!」
世界が白に染まった。
午後十時投稿を基本とします。この作品と他に書いている作品で人気があるほうを優先して連載する予定です。期間は他の作品のストックが切れるまでのPV数で決めます。