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異世界からの訪問

作者: オッド


 ここは、剣と魔法の異世界『ファンタルシア』。

 そこには想像できることなら全て可能な剣と魔法を極めし男がいた。

 これは、そんなチート能力を持った男が活躍する物語……。


 「……ダメだな」


 俺はPCに向かって呟く。ありきたりな異世界転移の小説を書こうとして5分も立たずに挫折していた。

 小説を書いてみたくなり、テンプレともいえるような内容なら簡単だろうと安易に書き始めるが、どうにもうまく文章にできない。

 

 「なんでかなー、頭ん中ではどんどん話がでてくるのにいざ書こうとすると全然かけねえ……才能ないのかな」


 独り言のように呟くと、後ろにあるベッドに横になる。


 「はぁ……、想像したものが勝手に小説になってくれればいいのに……」


 そんな夢みたいなことはあるわけない、そう思いながらまた妄想を繰り返す。

 登場人物や話の大まかな流れなんかが次から次へと頭の中に現れては姿を消していく。

 いつしか俺は眠りについていた。


 目が覚めると、すっかり夜も更けていた。

 あたりを見渡してもいつもと同じ部屋、気付けば異世界だったなんてことはない。

 俺はまたPCに向かうと他の人の小説をぼーっと眺めていた。

 

 「この人みたいにうまくかければいいのに……」


 素人がそうやすやすと小説なんて書けるわけがない、それはわかっていたのだが冒頭3行書いただけで挫折するなんて思いもしなかった。

 書き始めた小説は寝る前と変わらず空白のままだ。

 

 「ま、気が向いたときにまた書くか」


 俺はそう言い聞かせ、3行しかない小説を下書きとして保存するとまたベッドで横になる。

 そしてまた思いつくまま妄想にふける。

 だがさっき寝たばかりなので眠れない、ぐるぐると何度も似たような話を考えては1から考え直し、そんなことを繰り返していた。

 すると急にPCの電源が入る。


 「だ、誰だ……!」


 家には俺しかいない、本来ならば誰もいるわけがなかった。

 しかし、PCの明かりに照らされてそこにははっきりと誰かがいるのがわかったのだ。


 「まぁ、そう大きな声を出すなよ」


 PCの前にいた誰かが突然俺に話かける。

 俺は、戸惑いながらも部屋の照明を付ける。

 そこにいたのは、俺とソックリな姿をした男だった。

 驚き口をぽかんと開けて固まる俺に向かって男は話を続けた。


 「俺は、お前が書いた小説の男さ」


 何を言ってるかすぐには理解できなかった、もしやまだ寝ていて夢の中なのかと思い頬をつねってみるが痛いだけで何も変化はない。

 どういうことだろう、小説の男がなぜ俺の部屋にいてしかも俺ソックリなんだ。


 「俺は、小説の通り想像できることなら全て可能だからな。異世界からお前の部屋にテレポートしてきた」


 声に出してないはずの俺の頭の中を全て見透かしたように話続ける自分ソックリな男、思考が全く追いつかない。

 俺とソックリなその男は聞いてもいないのに一人で勝手にどんどん話を進めていく。

 要約すると、男は小説の通り異世界『ファンタルシア』に生まれ、まだ何もない真っ白な世界で続きが書かれるのを待っていたらしい。

 しかし、続きが書かれる気配がないので魔法でこの世界にやってきた、姿が似ているのは小説には直接書かれないとそうなってしまうらしい。

 

 「つまり続きを書けってことか」

 「そういうことになるな、何もない真っ白な世界で待ち続けるのはいささか飽きたんでな」


 続きを促されまだ整理できてない頭をフル回転させ考える。小説の続きではなく現状のことだ。

 この男は、想像できることなら全て可能なはず、小説の続きなんて書かなくてもなんでもやりたい放題なのではないだろうか。

 現に実際小説には書いてない行動、俺の部屋にテレポートしてくるということを平然とやってのけている。

 ではなぜ続きを書かせるのだろう、そもそも小説じゃあるまいし小説の世界から男が突然現れるなんてありえない。

 俺は、騙されているんじゃないか、だとすると俺ソックリなこの男はなんだ。クローンか、夢か幻か。

 わからん、どうなっているんだ。

 わかっていることは、四畳半の部屋に俺と俺ソックリな男が二人PCに向かっているという事実のみだ。


 「なぁ、お前さ、続き書かなくてもなんでもできるんじゃないか」

 「あぁ、できるぞ。 俺にできないことは何もない」

 「なら続きも書けるだろ、自分で書けよ」

 「それは無理だ、小説を書いた人間が生きているうちは手出しができないし小説の中のことは俺にとっては絶対だ」


 できないことは何もないっていったじゃねえか、思いっきりできないことあるやないか、と思いっきり突っ込みたかったが次の瞬間ものすごい恐怖が襲い掛かる。

 ……小説を書いた人間が生きているうちは手出しができない、つまり俺が死んだら……こいつが俺を殺したら……。

 変な汗が体中から吹き出てくる、これは緊急事態だ。

 この男は何でもできるチート男だ、戦って敵う相手ではないはず。

 このまま続きが書けなければ、殺されてしまうかもしれない。いや、最初から殺す目的できたのかもしれない。

 しかし、ふと頭の中に名案が浮かぶ。


 「小説の中のことは俺にとっては絶対だ」


 そう男は確かにそういった。ならば小説の続きを書いてこの男を追い返すことも可能なのではないか。

 いやいっそのこと小説自体を消してしまえばこの男は消えてなくなるのではないか。

 そうだ、こんな怪しい意味不明な男とこれ以上かかわるのはまっぴらごめんだ。

 俺は小説を削除しようと試みる、するとそれまで黙って見いていた男が口を開くのだった。


 「残念だなぁ、せっかく俺を生んでくれた産みの親を殺すことになるなんて……」


 少し寂しげに笑みを浮かべた男が俺に殴りかかる。

 

 抵抗する間もなく俺は死んだ。

 いや、死んだかどうかわからない。

 気づくと俺は真っ白な世界にいた。

 何もない、真っ白な世界だ。死後の世界だろうか。

 殴られたショックからかところどころ記憶がちぐはぐであいまいだ。俺はどうしてここにいるんだろうか。


 しばらく待っても何も起こらない。数時間経過しただろうか頭の中をぐるぐると駆け巡る。

 すると不思議なことに考えたこと全てが実現可能だったのだ。

 どうなっているのか自分でもわからない、ただいえることはこの白い世界は小説の中……そう『ファンタルシア』の世界だ。

 何でも思うがままの世界かと思いきやそうでもない、具体的に想像しないとその通りにならない、なんとも不便だ。

 しかし具体的に想像できることがあった、そうだ自分が元いた部屋を想像し始め、そこに行きたいと願う。

 

 すると突然、『ファンタルシア』の世界から俺の元いた部屋へとテレポートすることができた。

 部屋は真っ暗だったが、俺を殴ったアイツはベッドの上で寝ているようだった。

 よし、今のうちに小説の内容を書き換えて……、俺はPCの電源を入れた。


 「だ、誰だ……!」


 ベッドで寝ていたアイツが叫ぶ、しまった気付かれたか寝ていたわけではなかったようだ。

 どうする、このまま強硬手段にでるか、いやとりあえず男をあまり刺激しないほうがいい、また何かされたら厄介だ。


 「まぁ、そう大きな声を出すなよ」


 俺はそう言って男を落ち着かせた瞬間にあることに気付くのだった。

 俺が俺自身が小説の中の男である、と。

初めての小説、テスト投稿です。

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