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プロローグ
なぁ、どうしてお前は俺に「好きだ」なんて言ったんだ?
他の子を想っていることを百も承知でお前は言ったんだ「君が好きだ。付き合ってくれ」って。
お前があまりにもあっけらかんと言うからあまりにもさっぱりとしていたから………あまりにも全てを赦してくれていたから。
俺はお前の手を取ってしまった。好きでもないのに受け入れるだなんて最低だって知っていたのに報われない恋に疲れていた俺は「好きだ」と笑うお前に縋った。
捨てられない恋も彼女を目で追ってしまうことも、どうしてもお前を好きになれないことも全部全部お前は受け入れて、赦してくれた。
お前の傍は居心地がよくて、俺は全てから目を逸らしたんだ。
お前の気持ちからも俺自身からの変化からも全てから逃げてただ、お前の優しさに依存してた。
お前がどれだけの覚悟を抱いていたのか。どれほど俺を好きでいてくれたのか。お前が背負っていた辛い想いに俺はあれほど傍にいた俺は気づいてやれなかった。
最低な行為の末に傷つけ続けた俺が別れたお前の優しさに救われ続けていたのだと知るのはお前に会えなくなってから三年も過ぎてからだった。