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冒険者というやつらは

作者: 浮月重月
掲載日:2026/07/19

「好きですっ!結婚してくださいっ!」


窓口でいつものように、ようこそ。ご依頼ですか?お仕事の斡旋ですか?

と尋ねれば、今のセリフの後に花を差し出された。

これも「ご依頼」ではあるんだろうけども…。


ここはそこそこ大きい町の冒険者組合、その受付窓口。わたしはその受付。


領主、商人、町で暮らす人々などから公的対応が難しい依頼を受け、

冒険者という言わば何でも屋達にその依頼を斡旋したりしている。

大半は真っ当なんだけど、時々この手のすっとこどっこい…いや、

時と場所と自分自身を勘違いされた方々が訪れる。


今、花を差し出しているのは十代後半ぐらいの男。戦士だったっけ。

最近町に来て、仕事を受けるでもなく、他の人と情報交換をするでもなく、

組合の建物内に併設されてる食堂でよく飲み食いしている。


まあ仕事しないのも、冒険者としては自由。見習いの時は最低週に一度、

町の雑用でも素材取りでも、何か仕事をこなさないと資格剥奪されるけど、

正式な冒険者となって階級も上がれば、仕事も難易度が上がっていくので、

月に一度、数か月に一度、と剥奪の猶予期間も伸びていく。


しかしこの男の階級は一つ星。


冒険者の階級は、星の数が増えるほど高い。

一つ二つだと下級、三つ四つなら中級で生活も安定し始める。

五つ以上では上級で、この町だと十人ぐらいしかいない。

つまりこの男は生活カツカツだと思えるんだけど…


だいたい、花を渡せば女の子がなびくとでも思ってるのかね。一輪だし。

しかもそれ、その辺で摘んでるだろう!道端でよく見かけるぞ!

あれこれツッコミしたいのを抑えつつ、笑顔で対応する。


「ここは冒険者組合窓口です。結婚相談所ではありませんよ?

 冷やかしはご遠慮くださいね。さて、次の方どうぞ」


「本気なんですっ!」


なお悪いわ。お花畑の相手してる暇なんてないっつーの。


「ボウズ、いい加減にしろ。受付嬢さんが困ってるだろうが」


お、助け船が来た。こちらは二十代後半の、確か三つ星の斧使いさんだ。


「彼女と結婚するのはオレなんだから」


あんたもかい。


「やめなさいっての。ごめんなさいね、依頼完了の報告です」


こちらは三つ星斧使いと組んでる斥候の女性だ。

一つ星ボウズと三つ星斧使いは横に押しのけられたが、まだ言い争ってる。


「職員さんも大変よね、ああいうのの相手しなきゃならないなんて」


「あはは、多少の想定外は織り込み済みですので…」


やや引きつっている気もするけど、笑って応対する。

しかし最近確かに、軽口でなく口説かれるのが妙に増えてる気がする。

自分が不美人とは思わないけど、急にモテ出す要素なんてあったかなぁ?

第一、わたし適齢期過ぎてるよ?自分で言うのもアレだけど需要ある?


「はい、依頼達成を確認しました。お疲れ様です」


契約上不備がない事を斥候の女性に告げる。

ついでに声を潜めて彼女に聞いてみた。


「わたし、なんか皆さんに気を引くような事しちゃってます?

 全然心当たりがないんですけど…今みたいな事が増えてて」


「えーっと…アタシの口からは、なんとも…」


ん?誤魔化された?


「え、何かご存じなんですか?教えてください!

 仕事に支障が出てるので困るんですよ」


彼女は腕を組んで、うーん、と考えた挙句、耳元でこそっと、


「ここではなんなので、お仕事引けた後、向かいの酒場で」


とつぶやいたので、無言でうなずいた。


仕事明け、着替えて冒険者組合の建物がある向かいの酒場へ急ぐ。

斥候の彼女が一人、最近流行り出した煮込み料理を食べつつ待っていた。

わたしも彼女の真正面の席に着き、注文を頼む。

食事がある程度進んだところで、彼女が切り出した。


「えーっとね、実は貴女が…隠れ巨乳だという話が流れてて」


「はい!?」


「男共の間で、それは確認せねば!とか盛り上がってたのよ、この酒場で」


「はあぁぁぁぁ!?」


「で、誰が口説き落とせるかという話が出てきて、競争してるんだって。

 巨乳美人受付嬢争奪杯とか言って…参加者は二十人ぐらいいるわ」


「なんですかそれはあぁぁぁ!止めて下さいよ!」


というか、なんで知っている!わたしの情報を!


「首謀者というか情報元があの組合長なのよ」


問題の火元は身内かよおぉ!



翌日の冒険者組合。

ボコボコに殴り倒した冒険者組合長を床に正座させ、

争奪杯は中止とする、と発表させた。


組合長いわく、そろそろいい人とくっついて欲しいという親切心だとか。

大きなお世話です。

カスタマー対応って時々とんでもないのありますよねー(トオイメ)

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