表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

8 ギルドマスターの面接

服屋を出てから冒険者ギルドにやってきた二人。

二人を見た受付嬢フェリシア声をかけ、二階へと案内する。

そこには……。

 《針と月亭》の扉を出ると、マダム・エルヴィラは二人を見送ってくれた。


「気をつけな。世の中は、優しい目ばかりじゃないよ」


 その言葉を背に受け、市場へ踏み出す。


 ――また、視線。


 視線、視線、視線。


 だが、先ほどとは違う。


 蔑みではない。

 疑念でもない。


 好奇心。驚き。

 そして、可憐なものを見るときの、無遠慮な値踏みの視線。


 少女は、ぎゅっとエルナの手を握り直した。


「……大丈夫よ」


 エルナは、そう言って歩調を緩めない。


 冒険者ギルドの扉を押し開けた、その瞬間だった。


「エルナさん!」


 受付嬢フェリシアの、やや硬い声。


「ちょっと奥へ。……あっ、その子供さんもご一緒に」


 周囲の視線が、一斉に集まる。


 エルナは頷き、案内に従った。


---


 二階。


 普段冒険者立には立ち入れない、奥まった一室。


 ノック。


「入れ」


 低く、重みのある声。


 扉を開けると、大きな執務机があり――

 その向こうに、三人の男女がいた。


 中央、がっしりとした体躯の壮年の男。

 深い皺と、鋭い眼差し。


 その右手に、冷静そうな女性。

 背筋を伸ばし、観察するような視線。


 左には、昨日の鑑定士。

 白髪交じりで、眼鏡の奥の目が爛々と光っている。


「座りなさい」


 男が、手前のソファを示した。


 エルナと少女は並んで腰を下ろす。

 少女は、やはりエルナの鎧の端を離さない。


「まずは、名乗ろう」


 男が口を開く。


「俺はこの冒険者ギルドのギルドマスター、ガルド・アイゼンフォルクだ」


 次いで、女性が一礼する。


「サブマスターのリーネ・ヴァルシュタインです」


 最後に、鑑定士が咳払いをする。


「ギルドの納品鑑定を担当している、ヘルマン・バリウスだ」


 三人の視線が、揃って少女に向いた。


---


「要件は、君が保護したその子だ」


 ガルドが言う。


「近隣の村や集落で、奴隷商人の影が確認されている」

「現在、ギルドが命じた冒険者が取り締まりに向かっている」


 エルナは、黙って聞いていた。


「幸いにも、今のところ“行方不明の子供”の報告はない」


 それは、救いでもあり――

 不安でもあった。


「問題は、この子だ」


 ガルドの視線が鋭くなる。


「どこから来た?」


 エルナが答える前に、ヘルマンが身を乗り出した。


「それとだ!」


 声が、少し上ずる。


「昨日、君が納品した薬草――」

「間違いなく、超一級品だ!」


 部屋の空気が、ぴんと張り詰める。


「採集に長けた一流の薬師ならともかく――」

「駆け出し、見習いが、半日ほどで種類も状態も完璧に揃えて採るなど、ありえん!」


 エルナは、ゆっくりと息を吸った。


「……正直に言います」


 三人の視線を、真正面から受け止める。


「わたしは、薬草に詳しくありません」

「この子が、指し示してくれました」

「……抜き方も、教えてくれました」


 一瞬の沈黙。


 ガルドが、少女に目を向ける。


「……本当か?」


 少女は、小さく身を縮めた。


 俯きエルナの後ろに隠れようとする。

 思わずかばうようなしぐさになるエルナ。


 サブマスターリーネが声が大きくなったヘルマンを制する。


 リーネが、静かに口を開いた。


「規定では」


 冷静な声。


「保護された身元不明の子供は、孤児として教会の運営する孤児院に送られることになっています」

「……いえ、そうしなければなりません」


 エルナの胸が、きしんだ。


「余計な情は不要です」

「エルナ、あなたにとっても足手まといになりかねない」


 ――わかっている。


 理屈は、正しい。


 冒険者として、子供を連れて旅をする危険性も。


 半分の心は、納得していた。


 だが――


 残りの半分が、

 強く、強く拒んでいた。


 エルナは、少女の手を握り返す。


 震えている。


 それでも、離そうとしない。


 エルナは、顔を上げた。


「……あの」


 声が、少し震えた。


 それでも、はっきりと。


「わたしの子にしては、ダメですか?」


 部屋が、静まり返った。


 三人の視線が、一斉にエルナに集まる。


 少女は、何も言わない。


 ただ、

 エルナの左手を、ぎゅっときつく握ったままだった。

お読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字ご指摘ください。

ご感想もいただければ嬉しいです。

ストーリーの提案に関しましては申し訳ありません。

お答えできかねますごめんなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ