3 初めての薬草採集
名前も歳もなにもかも思い出せない幼い少女を連れ、初めての薬草採集に森へ入るエルナ。
肝心の薬草採集。
実はエルナ薬草についてはよくわからないポンコツです。
オリーゴの森の中腹。
木漏れ日が差し込み、足元には背の低い草が群生している。
「……この辺、って書いてありましたよね」
依頼書を思い出しながら、エルナは周囲を見回した。
それらしい草は、確かにある。
……あるのだが。
「…………」
正直に言えば。
「……薬草って、よくわからないんですよね」
ぽつりと呟きながら、目についた草の前にしゃがみ込む。
「えーと……たしか、名前は……」
思い出そうとして、出てこない。
「……これ、かな?」
それっぽい葉を掴み、引き抜こうとした――そのとき。
革鎧の端を誰かが引っ張る
「えっ?」
振り返ると、少女が首を横に振っていた。
そして、少し離れた場所を指さす。
「……こっち?」
指された草を見る。
……正直、違いがわからない。
「これですか?」
半信半疑で手を伸ばそうとすると……、少女がその手を掴む。
そして――
自分が指し示した草の前にしゃがみ込む。
根元に指を差し入れ、丁寧に土をほぐす。
ぷち、ではなく。
ずるり、と。
根ごと、傷つけないように引き抜いた。
「……なるほど」
エルナは、素直に頷いた。
「根ごと、ですね」
そう言われてみれば、納得だ。
むしってしまえば根は残る。
薬草と言っても地面の上ではなく、根を使うかもしれない。
では、と。
すぐ隣の、よく似た草に手を伸ばす。
また革鎧の縁を引かれる。
振り返ると首をふる少女。
「じゃあ、これは――」
首をブンブンふる。
「えっ」
即座のダメ出し。
少女は、また別の草を指さした。
見た目は、ほとんど同じ。
葉の形も、色も。
「……こっち?」
恐る恐る確認すると、少女はこくりと頷く。
言われるまま、同じように根元を掘り、丁寧に抜き取る。
「……」
エルナは、少女の横顔を見た。
迷いがない。
説明もない。
ただ、「わかっている」動きだった。
「……この子、薬草がわかるんでしょうか」
答えは、返ってこない。
それでも。
エルナは、その後も――
少女が指さす草だけを、黙々と抜き続けた。
半日も経たないうちに。
ポーチは、草でいっぱいになっていた。
「……多分、これで依頼分は足りてますね」
量だけは、間違いない。
エルナは立ち上がり、左手を差し出す。
「さあ、帰りましょう」
少女は、一瞬だけためらい――
そっと、その手を右手で握った。
小さくて、冷たい手。
二人並んで、森を出る。
町への道を歩きながら、エルナは空を見上げた。
「……さて」
独り言のように、呟く。
「この子、どうしたものでしょうか」
少女は何も言わない。
それでも、右手はエルナの手をしっかり離さなかった。
反対側の左手は……、相変わらず固く握られたままだった。
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