1 依頼掲示板(クエストボード)
お読みいただきありがとうございます。
少しずつ物語にしていきたいと思います。
まぁ、最初からですから受ける事の出来るクエストは少ないですよね。
ギルド併設の酒場は、昼間から相変わらず賑やかだった。
エルナはカウンターの端に腰掛けると、迷いなく火酒の酒壺を指差す。
「それ、ください。いや、その隣りの少し強めの方を多めに」
「……え?」
酒場の親父が一瞬、エルナと火酒の酒壺を見比べる。
「嬢ちゃん、それは――」
「大丈夫です」
にこり、と笑って言った。
親父がなみなみと酒の入ったショットグラスをコトリとカウンター置いた。
次の瞬間。
**ごく、ごく、ごく。**
エルナは一息で、やや強めの酒を飲み干した。
――そして。
「……ふぅ」
満足そうに息を吐く。
「うまいですね」
沈黙。
周囲の冒険者たちが、目を丸くして固まっていた。
「……今の、割と強いやつだよな?」
「一気……だと……?」
「嘘だろ……?」
誰かが恐る恐る聞く。
「……酔わねぇのか?」
エルナは首を傾げた。
「えっ?その壺全部飲めば酔いますけど」
その返答に、今度こそどっと笑いが起きた。
「ははは! こいつぁ大物だ!」
「ドワーフ、恐るべしだな!」
エルナは照れたように頬を掻きつつ、空になったジョッキを返し勘定をカウンターに置く。
「じゃあ、仕事探してきます」
そう言って立ち上がり、掲示板へと向かった。
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依頼掲示板の前。
木札がずらりと並ぶ中、エルナは一枚一枚、真剣に目を通していく。
「……護衛」
「……討伐」
「……ダメですね」
どれも見習いランクでは受けられないものばかりだ。
視線を下へ。
「……薬草採集」
「……薬草採集」
「……薬草採集」
しばらく、黙り込む。
「…………」
エルナは、ふうっと小さく息を吐いた。
「……これしか、……ないですね」
剣も盾も持っているのに。
戦士として登録したはずなのに。
掲示板の一番下にかかっていた木札を、そっと外す。
> 【見習い向け・常時依頼】
> 薬草の採集 銅貨5枚 採集薬草の等級により報酬の変更有り
> 町の北 オリーゴの森
> 危険度:低
「……まあ、最初ですし」
自分に言い聞かせるように呟き、受付へ戻った。
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「薬草採集ですね」
受付嬢は少し安堵したように頷く。
「森の奥には入らないでください。見習いですから」
「はい」
素直な返事。
こうして――
エルナの**最初の依頼**は決まった。
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ギルドを出て、町の北門へ向かう道すがら。
エルナは小さな盾を背負い直し、短い小刀の位置を確かめる。
「見習いですからしょうがないですが……採集ばかり、でしたね」
戦士らしくない依頼。
だが、彼女は不満そうな顔はしなかった。
「焦らなくていい」
義父の声を、思い出す。
「一歩ずつです」
森の入り口が見えてくる。
木々の影が揺れ、風が草を撫でた。
――それが、ただの薬草採集で終わらないことを。
この時のエルナは、まだ知らなかった。
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ご感想もいただければ嬉しいです。
ストーリーの提案に関しましては申し訳ありません。
お答えできかねますごめんなさい。




