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10 宿屋主人からの提案

進行にちょっと迷いましたが、とりあえず形になりそうなので上げます。

冒険者ギルドから宿へエルナの悩みが続くシーンです。

 一階へ降りる。


 瞬間。


 探るような視線が、ぱっと集まった。


 だが、誰も声をかけてこない。

 誰も、近づいてこない。


 次の瞬間には、それぞれが何事もなかったかのように、元の会話へ戻っていった。


 ……それが、かえって不快だった。


「……これが、“噂になる”ってことか」


 エルナは、心の中で呟く。


 誰も問いかけない。

 誰も確認しない。


 もう、みんな知られている。


 だから、聞かない。


 それが、噂の完成形。


 少女は、少し強くエルナの手を握っていた。


「……今日は、薬草採集はやめよう」


 小さく言う。


 今は、それどころじゃない。


 ギルドマスターの条件。

 三日以内に、預け先を探す。


 ――それが、最優先だ。


 だが。


「……どうする?」


 自問しても、答えは出ない。


 考え込みながら歩き、

 気づけば、宿の前に立っていた。


「……いかん」


 エルナは、はっとする。


「警戒が切れてた……」


 今の自分は、完全に考え事に囚われていた。

 もし、悪意ある誰かが手を出してきていたら……。


 ぞっとする。


 エルナは、少女の手をしっかり握り直し、宿へ入った。


---


 中に入るなり。


 宿の主人が、こちらを見て……。

 固まった。


 まず、エルナ。

 次いで、少女。


「……き、昨日の子、か?」


 声が、裏返る。


「あの子……なんだよな?」


 エルナは、頷いた。


 手近なテーブルに腰を下ろすと、主人はおずおずと近づいてくる。


「……で」

「そ、その子……どうするんだ?」


 エルナは、言葉を探すように一瞬黙り込み……。

 そして、正直に言った。


「……私の子に、したいんだけど……」


 語尾が、弱くなる。


「……したいんだけど?」


 主人が、先を促す。


「……連れたまま、冒険者はできない」

「冒険の間、預かってくれるところが必要で……」


 視線を落とす。


「……私に、身内はいないから」


 主人は、腕を組んで唸った。


「……ふむ」


 しばらく、考え込む。


 やがて、ぽつりと。


「なぁ……」

「『なんでも屋』に、相談しちゃぁどうだい?」


「……?」


 エルナは、首を傾げた。


「何でも屋?」

「……聞いたこと、ないです」


「まぁな」


 主人は、肩をすくめる。


「表立った稼業じゃないからな」

「だが、裏社会にも通じてる」


 少しだけ、声を落とす。


「払うもんを、きちんと払えば」

「違約は、絶対にしない」


 エルナは、眉を寄せた。


「……信用、できるんですか?」


 主人は、即答しなかった。


 だが、やがて言う。


「あってみちゃぁ、どうだい?」

「その上で、決めりゃいい」


 エルナは、少女を見る。


 少女は、何も言わない。

 だが、相変わらずエルナの手を、離さない。


 この町に、伝手はない。

 知り合いも、いない。


 選択肢は、ないに等しかった。


「……わかりました」


 エルナは、ゆっくり頷いた。


 心が、わずかに動いていた。


 それが、

 希望なのか、危険への一歩なのか……。

 まだ、わからなかったが。

お読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字ご指摘ください。

ご感想もいただければ嬉しいです。

ストーリーの提案に関しましては申し訳ありません。

お答えできかねますごめんなさい。

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