報せ
バイルエイン家での生活は、私の人生の中でも、もっとも穏やかな日々だと言って過言ではない。
朝、窓の外から差し込んでくる陽の光で目を覚まし、湯浴み場の水を使って顔を洗い、口を漱いで身支度を整える。
着替えが終わったころを見計らって、普段はティアニーダのミーア達侍女が朝食が出来たと呼びに来る。
朝食を終えて少しすると、ティアニーダが木剣を持って現れて、中庭で昼過ぎまで型稽古をする。
部屋に戻って水浴びを済ませたら、そのまま私の部屋で軽食を摂り、そのあとは昼寝をしたり、盤上戯“ハイラ”をしたりして過ごす。
ハイラは、駒を順番に動かして相手の王を攻める遊びで、軍の指揮を学ぶ際の入り口として習うこともある。
私は得意で、家の中では一番強いくらいだったのだけど、ティアニーダはその、なんというか…あんまり得意ではないらしい。
なので、遊びと言うよりは私が指南するような形になることが多かったのだが、それでも楽しい時間であることに変わりはなかった。
午後の時間を過ごして夕方には、そのままご家族と夕食を摂る。
夕食を終えたら浴場に行き、汗を流して湯船につかりながら、とりとめのない話をする。
湯浴みを終えたら部屋に戻り、二人で少しだけ酒を飲んで、私は寝台に、ティアニーダは自分の部屋に戻る。
7日も過ぎる頃にはすっかりこの生活に慣れ、毎朝ティアニーダが木剣を持って訪ねてくれるのをどこかで楽しみに感じる程だ。
今日も、朝食後に迎えに来たティアニーダと型稽古をし、部屋に戻って水浴びをする。
湯浴み場を出ると、侍女のミーアがテーブルに軽食の準備をしてくれていた。
「あぁ、いつもありがとう、ミーア」
私がそう言うと、ミーアは畏まった様子で頭をさげた。
「もったいないお言葉です」
年齢的には私やティアニーダとほとんど変わらいように見えるのに、その気遣いの細やかさには驚くほどだし、侍女としての経験もかなり豊富なのだろうと察せられる。
食事の準備に際しては、微かにも食器を重ねる音をさせない。
私やティアニーダの生活習慣を把握しているのか先を読んでいるのか、型稽古をする前には修練着がすでに用意されていたり、水浴びや湯浴みをしようとすれば、いつの間にか新しい服とタオルが準備されていたりする。
彼女が準備した寝台は、他の侍女が行った準備とは明らかな違いが分かるほどきれいに整っていた。
ティアニーダが突発的に何かを希望しても、ほんのわずかな時間でそれに応えている。
それでいて普段は決して目立たず、無駄な会話もせず、状況によってはほとんど気配を感じさせないことすらあった。
私とティアニーダが席に着くと、そんなミーアが銀色の鐘蓋を取ってくれる。
お皿に乗っていたのは薄く切られた燻し肉に野菜、卵などが挟まっている厚めのサンドイッチだった。
さらに暖かなスープを入った深底の皿を並べ、最後に木彫りのマグに水を注ぐと、彼女は音もなく頭を下げて退室していった。
「すごいな、ミーアは」
「ん…?何が?」
「侍女として、かなりの教育を受けているんだろう?あれほどの手際の侍女は、ノイマールではそうそうお目に掛かれない」
「あぁ、なるほど、そういう意味か。うん、ミーアとは小さい頃からずっと一緒なんだけど、昔から優秀だったよ」
ティアニーダにしては、微妙に噛み合わない返答のように思えたけど、そんな私の小さな疑問はスープを口にした途端に吹き飛んでしまった。
タマネギが主体で、そこに豆やキノコ、小さな賽の目にした野菜などがたっぷり入っているのだけど、とにかく味付けの深みというか複雑さと言うか、そういう旨味が詰まっているようだ。
「ん、これはミーアのスープだな」
「そうなのか?」
「うん。ミーアはスープとかシチューなんかが得意なんだ。特にこれみたいに時間を掛けてそうなやつは、大抵ミーアが担当して作ってるよ」
「彼女は料理もできるのか…」
本当にすごい侍女だな、彼女は…それに、あんな侍女を育てられる伯爵家のすごみも感じてしまう。
「アレクシアは、料理ってできるか?」
私がパンを千切っていたら、不意にティアニーダがそんなことを聞いて来た。
「どうだろう…どこまでを料理と呼ぶかにもよって来るな…」
例えば肉を切り分けて塩と胡椒を振り、炭火で焼くくらいはできるが、料理と言えるだろうか?
スープなんかも、肉に野菜を適当に切って煮込み、最後に味を調えるくらいのことはやろうと思えばできるが、それは料理なのか?
ミーアの作ったこのスープが料理なのだとしたら、私が作るスープはスープではなく、肉と野菜を煮込んだだけの汁なのではないだろうか?
「例えば?」
「いや、肉を焼いたり、野菜と干し肉を煮込んでスープ…のようなものを作ることくらいだ」
「あぁ、肉を焼くのはアタシにもできるな…そうか、スープは作れるのか」
「それをスープと呼んで良いかは、判断できないがな。あなたはどうなんだ?」
「正直言って、まかせっきりだな」
私の言葉に、ティアニーダはそう言って肩をすくめた。
まぁ、子爵家である我が家と、伯爵家たるバイルエイン家では立場が違う。
身の回りのことを臣下や侍従に任せることは当然ともいえた。
それからも私達は食事とおしゃべりを楽しむ。
食事が終わった私たちはいつものように眠気に襲われ、寝台に身を横たえた。
ほどなくして、まどろみの中へと落ちていく。
こんな日常がいつまで続くのかわからない。
だからこそ、私はこの日常を確かにかみしめていた。
* * *
ドンドンドン、ドンドンドン。
そんな音が聞こえて、私は意識を取り戻した。
窓から見える空は日が傾いているのか、うっすらと白くなりつつある。
ドンドンドン。
「―――!」
音と共に、声が聞こえた。
どうやら、誰かがドアを叩いているらしい。
「ティア、起きろ」
私は傍らでいまだに寝入っているティアニーダの肩を叩く。
すると彼女は目をあけて、
「ん…おはよ」
と呆けた声をあげた。
「誰か来ているようだ。用事じゃないのか?」
そう言うと、彼女は体を起こした。
再びドアを叩く音がする。
「あぁ、なんだよまったく…ありがとう、アレクシア」
彼女はそう言いながら、寝台を降りてドアの方へと歩いていく。
私もそれに続いて、髪に手櫛を通しながらテーブルへと向かい、準備されていたコップに水差しから水を注いで口にした。
「悪い悪い、今開ける」
そう言いながらティアニーダがドアを開けると、そこにいたのは御次兄のエルデールだった。
慌てているのか、彼の表情は険しく曇っている。
「あぁ、次の兄上。どしたんだよ、慌てて?」
「ティアニーダ、ノーフォート嬢は一緒か?」
「あぁ、一緒に昼寝してたけど…?」
彼女は私の方を振り返って肩を竦めて見せる。
「いらっしゃるのか!すまん、少し入っても構わないか?」
そんなエルデール様の様子に、ティアニーダはやや警戒感をにじませた。
寝起きのぼんやりした私の頭も徐々に覚醒してくる。
どうやら、なにかことがあったらしい…私に用があるということは、国のことか、領地のことか…家族のことか…
私は胸を締め付けるような感覚に襲われながらも、エルデール様の方へと足早に向かう。
「私に何かご用でしょうか?」
そう言って声を掛けると、彼は懐から筒状に丸めた羊皮紙を一枚取り出して私に差し出してきた。
「国境線を防衛している父上からです」
「…拝見、致します」
私はそう断りを入れて羊皮紙を開いた。
ティアニーダが私に寄り添うように、横から中を覗き込んでくる。
『サラテニア軍が北進し、ノイマール王国領へ侵入。現在国境線を超え、南部で戦闘状態』
その一文が目に飛び込んできた。
「まさか…サラテニアが!?」
なぜだ…!?
なんでそんなことが起こる…!?
私はさらに、そのあとの文面に目を走らせる。
そこには、この後、国境で警戒をしていた伯爵を含めたオルターニア王国軍が引き続き国境周辺の警備にあたること、帰還の目途が立たなくなっていることという現状報告が記され、エルデールは周辺国の情報を集めて伯爵に報告すること、ティアニーダは残存する私兵団を纏めて出撃に備えておくことといった指示も書き込まれていた。
「先日の手紙のことは、ティアニーダからは聞いています。ノーフォート子爵様の領地が南部にあるのですよね?」
「はい…しかし、なぜサラテニアが…?」
「あなたの予測はおそらく正しかったのです。ノイマール王国がサラテニア侵攻を計画していた可能性は高く、もしかするとその計画をサラテニア側も把握していたのかもしれません」
「攻められる前に一当てして、主導権を取ろうとした、か」
エルデールの予測に、ティアニーダがそう言葉を継ぐ。
確かに、彼の考えには説得力があった。
私がその可能性に思い至ったくらいだ。
サラテニア側に気付いた者がいなかったとは言えない。
そして、ティアニーダが言うように、攻められるよりも前に先制攻勢に出てノイマール王国領土内で叩く方が分が良くなる。
私の予想に反する開戦で、ノーフォート領が戦争に巻き込まれてしまった…
「くっ…」
どうして…どうして、あの王の独善的な行動に、私が…私の家族や領民が巻き込まれなきゃいけないんだ…!
怒り、苛立ち、悲しみ…そんな気持ちが綯い交ぜになって、胸の内にグツグツと煮えたぎる。
不意に、いつの間にか握りしめていた私の拳に何かが触れた。
ハッとして顔をあげると、ティアニーダが私の手を握ってくれていた。
「ティア…」
「気持ちは分かる…けど、今は何とか落ち着け。対策を練らなきゃ」
彼女の言葉に、私は自分の胸に沸いた感情をいったん押し込める。
そして、彼女にうなずいて返してから、エルデールに視線を向けた。
「ノーフォート嬢、お辛い状況でしょうが、お力添えを願います。現在のノイマール国内の状況…特に軍の動きに関して、さらに詳しくお話を伺いたい」
「はい、わかりました」
私はそう応えて、彼に連れられティアニーダと一緒に別室へと向かった。
* * *
会議室には、私とティアニーダ、エルデール様に、私兵団の指揮官級らしい兵士が3人いて、テーブルに広げられた地図を囲んでいた。
「これが、ノイマール軍の予想配置です。ここで、南からサラテニアが侵攻してきたとなると、南部のノーフォート領内で防衛することになります。ここを防衛線として、先の会戦で伯爵様を含む軍に追い散らされた南部戦線軍の残存兵力が対応に向かうことになると思われます」
私は、そう説明しながら地図上に配置された駒を動かしてみせる。
「残存兵力は如何程の数が?」
「おそらく、すぐに戦闘に参加できるのは一万になるかならないか、といったところです」
「ふむ…サラテニアの軍事行動の規模にもよりますが、それだけ投入できるのでしたら南部戦線の要であるノーフォート領都を防衛することはできるでしょう…しかし、撃退するのは難しいかもしれませんね」
「長期防衛を行い、後方で北部戦線に投入された軍を再編して南に向かわせることになるか…」
私の言葉に指揮官の一人が見解を述べ、さらにもう一人の指揮官がそれに意見を付け加える。
彼らの言う通り、一万弱の兵員が領都に入ることができれば、すくなくとも守り切ることはできるだろう。
ノーフォート領都はこのバイルエイン領都と同じく城郭都市で、防衛には向いている。
向いてはいるのだが…
「問題は、その南部戦線の残存部隊が支援してくれるかどうか、か…」
ティアニーダがそう言うので、私はそれに頷いた。
指揮官たちも事情を把握しているのか、神妙な面持ちで顔を伏せる。
「次の兄上。親父殿は、どう動くかな?」
「こちらからの手紙は届いているから、親父殿もその辺りの事情は把握しているはずだ。しかし、オルターニアとして越境攻撃を決めていない以上、ノイマール国内のノーフォート家を表立って支援することは難しい。“夜鷹”を使った情報収集と、ジキュエール・ノーフォート子爵につなぎを付けるくらいのことはできるだろうが…それ以上となると…」
エルデールはそこまで話すと腕を組んで唸りだす。
「ティア、“夜鷹”とは?」
「あぁ、ウチの密偵部隊」
「本当にあったのか」
私は、バイルエルン領へと向かっているときにしたバカ話のことを思い出していた。
もし、父が状況を把握しているとすればどうするだろうか。
当然、支援を要請するだろうし、自身が部隊を連れて領へ戻ることも希望するだろう。
しかし、それを王は許さないと思う。
そうなれば、父は北部戦線から抜け出すかもしれない…独断で部隊を転進させる可能性もある。
そして、王はそれを名目にして、我が家を糾弾する…ありそうなことだ。
支援に行かなければ自領を失い、支援に向かったとしても処罰を受ける。
…国内にいる父は状況的にもう詰んでしまっている…
「アレクシア。ノーフォート領都には、どれくらいの兵が残ってる?」
「…あなた達が返してくれた部隊が無事に帰還できていれば、5,600くらいにはなると思う。それにあそこは人口も多いから、民間人も動員すれば人数だけなら1000人くらいは」
「指揮を執れる人は?」
「それは姉上が受け持つと思う。力のある人だから、ある程度の抵抗はできるはずだが…」
「支援がなければ、それも時間の問題、か」
ティアの言葉に、私は力なく頷いた。
すると、彼女は顔をあげて、エルデールに視線を送る。
「次の兄上、残ってる私兵団をアタシに預けてくれ。アレクシアを旗頭に立てれば、ノーフォート領の支援に行ける」
「いや…それはできない」
「なんでだ!支援してやらなきゃ、ノーフォート領都が危ないんだぞ!?」
「…ティアニーダ。我がバイルエイン家は、オルターニア王国の剣であり盾だ。聞き分けろ」
そう言ったエルデールの表情には、苦渋の色が見て取れた。
「…ティア。気持ちは嬉しいが、エルデール様のおっしゃる通りだ」
私はそう言って地図を指さして続ける。
「今、王国軍は3分の1を北部戦線、もう3分の1を南部戦線に投入してる。北部、南部の主だった領主も、ほとんどの私兵を動員して戦線に参加しているようだし、国内の守りのことを考えれば、私なんかの都合に兵を裂いている余裕はないはずだ」
「アレクシア、あんたそれで良いのかよ!?」
「良いわけないだろう!だが、今は動くべき状況じゃない!」
食って掛かって来たティアに、私も声を張って応じた。
そう、どうにかできるのなら、なんだってやる。
でも今は、どうにもならない状況だ。
仮に私兵団を貸してもらえたところで、ノーフォート領都の陥落を遅らせることはできても、サラテニア軍を追い払うことはできない。
持久戦に持ち込んだとしても、ノイマール王はノーフォートに支援は送って来るはずがない。
サラテニア側が本国からの物資を補給できる状況なのであれば、そこでおしまいだ。
そんな先の見えない戦闘のために、バイルエイン伯の私兵を借りるなんてことはできない。
もし借りるとすれば、もっと決定的な勝ち筋が見えたときだけだ。
私の言葉に、ティアはグッと歯を食いしばる。
私は、エルデール様に向き直って伝えた。
「エルデール様、私が話したノイマール軍と我が領の状況について、伯爵様にお伝えいただけますか?」
「えぇ、もちろんです。できることは多くないかもしれませんが、打てる手は必ず打つとお約束しましょう」
「ありがとうございます…我が家にはもはやノイマール国内に頼れる味方がおりません。人質の身でありながらずうずうしいとは思いますが、何卒、よろしくお願い申し上げます」
私はそう言って彼に頭を下げた。
それから、軽食を摂りつつも会議は続き、ようやく全体的な情報の集約が終わるころには、すっかり夜も更けていた。
部屋を出た私は、部屋へと戻る廊下を歩く。
もちろん、ティアも一緒だ。
「アレクシア、すまなかった。あんたが誰よりも助けに行きたいと思ってるってのに、アタシ…」
不意に、ティアがそう私に謝って来た。
彼女の表情には、沈痛の色が浮かんでいる。
「ううん…私のことを想って言ってくれたのは分かってる…むしろ、嬉しかったくらいだ」
そう言ってあげたのだが、彼女は唇を噛みしめるばかりだ。
力になりたいと、そう思ってくれているのだろう。
国内にいたときですらどうにもならなかったのに、遠く離れたこの場所でできることなど、ほとんど何もないのだ。
三階へと続く階段を上がり、私が貸して頂いている監禁部屋の前に辿り着く。
「あなたにも、伯爵家の皆さまにも、感謝している…本当にありがとう」
私は改めて彼女にそう感謝を伝え、
「おやすみ」
と言って部屋に入って、扉を閉じた。
部屋は真っ暗で、ガランとしている。
途端に、胸の内に不安が沸き上がった。
母や姉、弟に父が死んだら、私がノーフォート家を継ぐことになるだろうか?
もしそうなったら、私は一人でどうしたら良いのだろう?
領都の民や兵たちは今も苦しい戦いに身を置いているに違いない。
一騎打ちでせっかく帰ることができた者もたくさんいたはずなのに。
もし領都が陥落するようなことになったら、彼らはどうなるのだろう?
考えても益体のない疑問や想いが湧いては膨れ、私の心に爪を立てる。
あぁ、ダメだっ…
涙がこみ上げ、喉の奥から嗚咽が漏れ出す。
膝が震えて力が入らず、その場に崩れ落ちそうになった私は、突然背後から力強い何かに抱き留められた。
それがティアだなんてことは、確かめないでも分かった。
私は彼女の腕の中で身を捩り、込み上げる感情に任せて、肩に顔を埋めて彼女を抱きすくめる。
彼女の腕が私を包み、力強く支えてくれた。
彼女の温もりが、私の胸の内に沸き上がる不安と恐怖を溶かしてくれるような気がした。
ティアと抱き合いながらその場に座り込んでいた私は、腕にいっそう力を込めながら彼女に懇願する。
「一緒に居て欲しい」
「うん。もちろんだ」
迷いなくそう言ってくれた彼女は、私の背をポン、ポン、ポンと叩き始めた。
寒かったわけでもないのに、いつの間にか強張って震えていた体から力が抜けていき、ついにはふぅ、と大きなため息まで口をついた。
そのまま、ヘナヘナと崩れ落ちてしまいそうな感覚を味わいながら、彼女がくれる温もりをただただ受け止めた。
どれくらい時間が経ったか、気持ちが落ち着いて来た私に彼女は
「湯浴みでもしに行こうか」
と声を掛けてくれた。
湯浴み、か。
気分を変えるには良いかもしれない。
「うん」
「行くか?」
「うん、行く」
私は彼女の提案にそう答えて、もう一度ギュッと彼女の体にしがみ付いてから、パッと離れて彼女と向き直った。
そんな彼女は優しい笑みを浮かべて私の手を取ってくれる。
私はそのまま彼女に手を引かれ、浴場へと向かった。