上京再び
96話 上京再び
寝肥の事務所と電話で話し。
傘っ子が、一反姐さんに乗り遠野にやって来た。彼女が上京の資金を持って来てくれた。
「わざわざご苦労さま。姐さんに渡してくれれば」
「私は信用ないのか……」
「そんな事はありません。わたしが東京から出たことがないので、社長にお願いしました」
「そうなんだ、傘っ子ちゃんは雨降り小僧や傘化けと違い近代の傘妖怪よね」
「はい、まだ若輩者ゆえ、よろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそ東京は不慣れで。電車など、ほとんど乗ったことがないのよね。まず切符の買い方も知らないし」
「新幹線の切符なら予約してやるよ。いつ行くんだ」
マカさんがパソコンで予約してくれて、新幹線に乗るまで意外と楽に。
まず、オシラサマに一ノ関駅まで送ってもらった。一反姐さんは、飛んで東京へ。
「新幹線なら、一反姐さんより早く東京に着くんじゃない」
早めに着いた一ノ関駅で駅弁を買い込んだ静ちゃんは、席に着くなり食べ始めた。
「わたしも新幹線に乗るのは初めてです」
小学生くらいの身長の傘っ子ちゃんは、流れるような外の景色を見入ってる。
わたしが東北に来た時は、なかった乗り物だ。
人間は凄いもの作る。
テレビもそうだ。昔の箱型から今のは薄いパネル型に。
永く生きてるといろんな物を見る。
人も妖怪も。傘っ子ちゃんやケイちゃん、猫っ子ちゃん。
静ちゃんが紹介してくれた知らなかった妖怪たちにも会えた。
長生きはするもんだ。なんてね。
年寄りくさいぞ。
あんたも同じ年だよね。
「あのぉ妖怪さんたちですよね」
わたしたちに話しかけてきた向こう側の席の女性。妖気をただよわせている。あきらかに妖怪だ。
「私、山女です。はじめまして」
と、立ち上がり挨拶してきた背が高い山女さんでした。
「こちらこそ」
山女さんもこちらの空いていた席に座り、お弁当をあけた。
静ちゃんの食べっぷりが目に入り、お腹がすいたそうで。
彼女のは自分で採った山菜で作った山菜弁当だ。
彼女も東京の知り合いに会いに行くと言う。
食べながらの話しの中に車中でマカさんと出会ったと。
わたしらがマカさんの知り合いだったので驚いていた山女さん。
マカさんと撮ったスマホ写真を見せてくれた。
嬉しそうなマカさんの笑顔を見た。
マカさんに妖怪のファンがいたのは、こちらも驚く。やっぱりマカさん、プロの物書きだ。
でも、マカさんは山女さんを妖怪とは知らない。
「山女さんは、人間名はあるの?」
「はい、一応山奥の廃家に住んでるふりして、街に出てパートを。彩菓子友と名のってます。あなたたちは、可愛い名でイイですね」
「アヤカシって、わたしと一緒ですね」
「字は違いますけどね」
「あ、そうだ傘っ子は人間名あるの?」
「ありますよ。社長がつけてくれました。雨野ココです」
「カワイイ」
と、皆が声を揃えて。
「一応、中卒の16才の設定です」
東京が近づくと客も増え山女さんは自分の席に、私らの空いた席にも中年のスーツ姿の男性が座った。
向いの静ちゃんをスマホを見ながらチラチラ見ている。
だって静ちゃん、五つ目のお弁当食べてる。
「君、よく食べるねぇ」
と、小声で言った。
「オジさんには、あげないわよ」
「見てるだけで、腹がふくれる」
男の腹がホントにふくれた。
「ハッハハハ。私は仙台の化けダヌキだ、よろしくな」
「獣臭を消していたとは、あんた人間界なれしたタヌキだね」
「ああ、ビジネスマンとして成功し、東京に住んでる。ひさびさに里帰りしてきたんだよ」
近頃は新幹線の中にも人外が多いようね。
つづく




