あの企画
95話 あの企画
「監督、聞きました? 塩野プロデューサーの次企画」
「いや」
「あの昔大ヒットした『妖異百物語』のリメイクだそうです。大手出版社がその企画に乗ったとか、まだ裏でしか動いてません。監督も出演も、これからです」
「いいな。その企画。塩野さんにアポとってよ。やりたいなぁ『妖異百物語』」
助監督や何やらと、フリーの映画監督柳田弘樹と映画を作ってきた。
僕、足洗快司はとりあえず商業映画を二本撮った。
三本目の「黄昏時のまぼろし列車」がもうすぐクランクアップする。
そんな頃に『妖異百物語』の企画を聞いた。
塩野長次プロデューサーは、扶桑テレビの敏腕プロデューサーから独立し、五本の作品をブロデュースし、五本ともヒットさせた男だ。
実は彼とは昔馴染みだ。
奴は映画時代の終わりも近いとテレビへと。
そのヨミは間違ってなかった。
しかし、そちらで成功して映画から遠ざかった彼は。
やっぱり映画が好きだった。
テレビ局内で映画のプロデュースをはじめた。
同じ業界に居たのに接点が、なかったのは彼のプロデュース作品が、我々の作る映画とは違っていたからた。
今回は違った。
「柳田監督、ありがとうございました。監督の映画に出さしていただいたおかげで名前も知られ、仕事も増えました」
撮影最終日に挨拶に来たのは、柳田のデビュー作で主演をした河橋緑子だ。
彼女は二、三作目にも出演している若手の女優だ。しかし、正体は河童だ。
僕らのスタッフは、ほぼ映画好きの物の怪集団だ。もちろん少ないが人間も居る。
柳田は人間だ。
「足洗さん、お世話になりました。あたし、次は大木戸監督の新作に出演が決まりました」
「それは、良かったな。メジャーになっても、ウチの映画にも出てくれよ。あ、もうメジャーかな」
「あたしなんかまだまだ。朝ドラとか狙っているんですけどね」
「頑張れよ!」
そうだ、塩野にアポを。
塩野長次の秘書、夏目モモが。
「どこで、聞きつけたのか、柳田弘樹の助監督をしているという足洗という方から、あの企画の監督に柳田をと」
「足洗か、昔は映画を見て酒呑んで飯食ってた仲だよ。なんだかんだと映画の趣味の違いで俺はテレビ業界に、奴もほそぼそと撮ってるようだ。懐かしい。柳田弘樹……。良いパートナーを見つけたな足洗の奴」
「そういう仲の方ですか」
「この業界にも結構多いんだ物の怪……。夏目ちゃん」
「そうですね。で、どうします。会いたいと」
「久しぶりに会うか。最後に会ったのは大正の最後の年だったかなぁ。あれ昭和になったかな」
「あと、あの企画の特殊メイクアーティストでアポをとったハリウッドの野熊氏が、半年の契約なら日本に来られるそうです」
「奴が、来て来れるか。コレで半分は成功したようなもんだぞ。奴も昔馴染みなんだ。オーディションで役者が決まれば制作発表だ」
「良かったですね」
遠野の廃家。
「一反姐さん。東京へはいつ行くの?」
「返事は、決まったのか」
「行くことにしたよ」
「なら、善は急げだ。今から行ってくる」
「え、ハヤ。あのさ、マカさんの電話番号を伝えておいて」
「わかった。マカのトコ、寄ってから行く」
「行っちゃったね」
「一反姐さんもテレビにハマって、映画に出られるのが嬉しいんだよ。さて準備しよう。今度は新幹線に乗ろう」
つづく




