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お札の部屋

90話 お札の部屋


「あなた、やめなさいよ」


 ウチの旦那は、ホテルや旅館に泊まる時。

 部屋に入ると額縁の裏とか押し入れの中やベッドの下とかクローゼットの中を調べる。


「ないわよ。いつも言ってるでしょ。私、霊感が強いから、おかしな部屋ならすぐわかるわ」


「ああ、ないようだな」


 旦那はお札が、ないか探している。


「無くて良かったじゃない」


「イヤな、連休時東京の真ん中で予約がとれたからなんかあるんじゃないかと」

「考えすぎよ。丁度キャンセルが出たって。むしろラッキーだったんじゃない」


「でもな、このホテルの名も気になる『ヘビツカヤ』だぞ。変じゃないか?」

「べつに思わないわ。世の中に変な名前の会社や、お店沢山あるじゃない」


「俺さ、ホテルに入った時に別館に案内されてた客見たんだ。まあ客は普通だったけど、その別館の入り口が真っ暗でよ、なんか不気味だった。それに外から見た時、このホテルに別館とかあったか?」


「そうなの私は綺麗なボーイさんに見とれてたから」

「まったく、おまえって奴は、どこまで男好きなんだ」

「あら、そこがイイってあなたが」

「俺、そんなこと言ったか? スケベなおまえがイイとは言ったが」

「あら、同じよ。男好きはスケベなのよ」

「まあ、そのボーイはどんだけ綺麗だったか知らないが俺ほどじゃなかったんだろ」

「あなたより、イケメンだったわよ」


「それなら受付の女性な俺好みの美女だったぞ」

「だから……。それ浮気宣言」

「バカか、おまえは。これからイイ女と浮気するぞと言う亭主がいるか?」


   トゥルトゥル


「電話よ」


「あ、ハイ。そうです。今ですか、わかりました」


「どうしたの?」

「手違いで、違う部屋に案内したから、フロントに来いってさ」

「なにソレ」


 フロントに行くと、美人だと言っていた女性ではなく、和服の老人が。女将かしら?


「わざわざすみません。受付が新人だったもので」

「あなた方の部屋はむこうで」


「あっちは別館だよな」


「はい、お客様はウチの話は聞いて」

「ないよ。空いてる部屋があるからと」

「そうですか。まあ、名前は存じませんが人でないことはわかります」


「どういうコト? 名前は佐藤と」


「人名じゃなく妖怪名の事です」


「ナニ、それ。俺らは人間だよ」


「ご安心下さい。私も妖怪です。それに妖怪旅籠は無料になります」


「あら、そうなの。サービスとかは?」


「人間と変わりません」


「そうなのじゃ、私は『磯姫』。旦那は『深海和尚』よ」


「さようでございますか。おシマさん、お客様を青大将の間に」


「マジ、妖怪ならタダなのか」

「みたいね」


 お札を探していたのは、あったら気分が悪くなり落ち着かない部屋だから、人とは逆の作用があるのお札のある部屋って。やーね。


               つづく

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