共食い
82話 共食い
帰ってきたと、思ったら男連れかよ。
「はじめまして。東京から、来た稲荷隆平です」
イナリタカヒラ。稲荷、こいつも妖怪なのか?
「あ、どーも天野です。東京からずっと一緒に?」
「な、わけないじゃない。仙台からよマカさん。あ、この人作家で、摩訶富仕義って名前で小説書いてるの」
「摩訶さん。『天空の呼び声』の」
「あれ、それ本になってない作品だ」
「幻想文学エンタで読みました。あの作品、今のボクの中でベストなんです。そういえばプロフィールに遠野在住と。まさか、摩訶先生に会えるなんて。ああ君たちを乗せて良かった。奇跡です」
「そんな、奇跡だなんて大袈裟な。俺もファンに会えて嬉しいよ。なんの偶然だ。東京からの帰り列車の中でもファンにあった。今年は二人目だ」
「マカさんにもファンがいるんですね」
「そりゃ居るわい。で、あんた今日は? 泊まるとことかは」
「遠野を観光してすぐ帰るつもりで来たので」
「よかったらウチに泊まってけ。今日ゆっくり観光して帰ればイイ」
「そうしよう。稲荷さん、あたしらが遠野を案内するわ」
「いいんですかぁ」
「俺の他は誰も居ない遠慮するな。さっきまで、居たがもう帰った」
「珍しいねぇ。あたしたち以外に客が来るのマカさんチ」
「そりゃ来るさ。仕事も一段落したからな。よし、今夜はジンギスカンにしょう」
遠野の街からはなれて。
「ここにも。遠野にはお稲荷さんが、沢山あるね」
稲荷さんは稲荷神社を見つけては手を合わせた。
「ねぇ君たち昨日の夜から一睡もしないで、元気だね。大丈夫?」
「ああそういえばもう何日も寝てない」
「大丈夫かい、君たち。僕なんか昨日一晩でもう正直眠い」
「あたしらは三日四日寝なくても問題ないけど。何処かで休もうか」
そうだ、ヒッチハイクが夜だったし、わたしたち寝ていない。まあ妖怪だからイイけど。
「お〜いアヤぁ」
わっ、一反姐さん。
良かった二人は食堂に。
姐さんも、その姿から見えなくなってればいいのに、いつもあのまま飛んでる。
姐さんが、降りてきた。
「帰ってたのか。県境まで、見に行ったんだがすれ違いになったのか」
「県境はクルマに乗ってたからねわたしたち」
「そうかい。で、マカんトコには?」
「行ったよ。今、ここまで乗せてくれた人に観光案内しているの。驚くから顔出さないでね」
「マカのトコに客が居たがどうしてる?」
「帰ったようよ居なかったわ」
「そうかいそれじゃテレビでも」
ええ、一反姐さん、マカさんチでテレビを。
マカさんを東京に連れてきてから仲良くなったのかな。
稲荷さんが食堂の座敷で一眠り。
「静ちゃん、どうするの? 次は何処に?」
「そうだね、あまり妖怪のあたしらが行くには……カッパ淵の当たり障りのない河童ジイさんにでも会わせるか」
「よっぽど疲れてたのね。もう三時よ」
「ごめんごめん、爆睡してた?」
「店の人が寝かしておけばって」
「仙台の仕事もいろいろ疲れてたから」
グゥウウ
「あ、腹が」
「どうする? 何か食べる? それとも夜のジンギスカンまで我慢する」
「なんかちょっとだけ食べよう。君はお昼すましたの?」
「静ちゃんは、カツ丼二杯とお団子十本」
「そんなに」
「アヤ、よけいなこと言わないの」
「わたしじゃないよ。裏アヤだよう」
「醜女か」
「どうしたの?」
「あ、なんでもないです。女将さんにお稲荷さん頼みました」
「共食いじゃ」
「アハハハ。小学生の頃よく言われたよ」
「静ちゃん、今のもわたしじやないよ」
つづく




