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人魚

80話 人魚


 友人に誘われて、やったらハマってしまった。埠頭での海釣り。


 休日朝早くから東京湾に糸をたらしてる。

 天気も良い。

 ボーッとしてる、このひと時が癒やされる。

 ゴルフみたいにちょこまか動かないのがイイ。

 今頃は係長たちは千葉のゴルフ場だ。ことわってよかった。


「どうです。今日は」


 と、女性のフィッシャーに声をかけられた。

 最近は、女性の趣味の一つとなって、増えているらしい。

 その人は初心者の僕より、本格的な服装だ。ベテランのフィッシャーなのか。


「まだ、ぜんぜんですね。初心者なんでなかなか釣れません」

「初めて間もないのね。まあたしも似たようなものよ。カッコだけ。ヨコ、いいかしら?」

「どーぞ。でも、僕ホントに初心者なんで恥ずかしいな」

「ナニ言ってんの。初心者やらない人なんていないんだから恥ずかしいなんて思わないの」


 と、女性は、仕掛けにルアーを付け投げた。


「こっちが恥ずかしわ。たいして飛ばない」

「いや、凄く飛んでるじゃないですか」


 しばらく、二人共ナニも釣れない沈黙。


「あ、釣れた? ナニコレ変な魚。頭に毛がある」

「釣れたのねナニ?」

「なんですかコレ?」


 よく見ると頭に角のような物が。ん、針を取ろうと表面から見たら、目が合った。こいつ普通のサカナより目が前にある。


「それ、人魚の赤ちゃんじゃない」


 と、その魚を僕から取ると彼女は海に戻した。


「今のは。人魚の赤ちゃん? 角はえてましたよ」

「あんた人魚ってアニメや西洋のおとぎ話のを思ったでしょ。日本には頭だけ人面のが居るのよ、昔騒がれた人面魚とは違うわよ」


 さすがに昔の人面魚は人魚とは言えないのは僕でもわかる。


「赤ちゃんでも、人魚見たんだから、あんた吉況よ、なんか良いことあるわよ」


 なぁあんて言われたけど、となりの女性は大漁。僕はボウズ。まったくあの変な魚の後は釣れなかった。


「じゃあねー。あ、私こういう者なの。なんかあったらいつでも連絡ちょうだい」


と、名刺を渡された。


 アオイ探偵事務所 磯野あさり


「イソノアサリって、マジですか」


 いい事なんてないまま家に帰る。

 赤信号で停まり、横断歩道を歩く女性と目が合った。


 彼女は、僕のクルマの方に来ると窓をたたいて開けてと。


「あ、やっぱり唐沢君だ。あたし憶えてる」


 とニッコリ笑った。あ、この人は高校の先輩磯野美波さん。

 埠頭で会った探偵の磯野あさりさんと同じ磯野。偶然だ。


「ね、乗せて」


 高校時代のクラブでマネージャーだった先輩。

僕らが入部してから、しばらくしてやめてしまった。美少女と評判だった。

 よく僕を憶えていたなぁ。ちょっと嬉しかった。


「ね、あなた最近人魚見なかった?」

「えっ」


               つづく

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