福の神
75話 福の神
「やっぱり、こういう老舗食堂が、安くて美味しいのよね」
「静ちゃん、店の奥に飾ってあったの、アレなにかなぁ。福助みたいに置いてあったけど」
「ああ、和服着た坊主頭のおっさん」
「そうニコニコ顔の」
「アレは仙台四郎よ」
わたしたちと、食堂をほぼ同時に出てきた中年の女性が。
「仙台シロー」
わたしと静ちゃんが、同時に。
「そう福助と同じ商売繁盛の神様なのよ。仙台四郎は、福助よりあとの時代に実在した人物よ、彼が入った店が繁盛したから彼の死後、福の神として人形化されて祀られてるらしわ。写真とか、絵のお店もあるわよ。あんまり詳しくは知らないけどね」
「そうなんですか。ありがとうございます」
「いえ、よけいな事言ってごめんなさい。今の食堂はウチの親戚でね、美味しかったでしょ」
「あーだこーだと。店の宣伝していったね、あの人。あの人があの食堂の仙台シローじゃないの」
「あれ、見て静ちゃん。向こうの新築中のお店らしい所。前に坊主頭のおじさん?」
「着物の柄が仙台シローだね。あいつは本物? 声かけてみようか」
静ちゃんは、小走りにあの仙台四郎らしき人に。でも、あの人ちょっとぼんやり見える時が。
生きてる人じゃないようね。
静ちゃんが、なんか話して戻って来た。
「アレやっぱり仙台シローだった。でも妖怪化してるね。あっちこっちまわって歩いてるそうだ。ぬらりひょんか、座敷わらしみたいだよ。アレが、居付けばその店が繁盛するそうだよ」
「だから、仙台は居づらい」
振り向くと、大きなちょんまげ頭の。
「福助さん」
「ああ、アレの祀りも、いっ時で終わると思ってたら、未だに衰えない。わしと両方飾る店もある」
と、言いとぼとぼと歩いて行った。
「福助のライバルね。シローは」
「福助は、長寿の佐太郎さんだよね」
「そうだね、江戸時代の人だ。ソレがあとから生まれたシローに負けて悔しいのか」
「でも、全国的には勝ってるよね」
「徳川さんみたいに全国統一ねらってたのかな福助。あ、そうだ次は牛の舌食べに行こ!」
「牛たんよね……」
静ちゃんが言うと生きた牛を髪で抑えて口を開けて。
あの吸精バケモノを食べちゃたの見たせいだ。
「底なしなら、やりかねない」
「ん、アヤ。なんか言った?」
つづく




