表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/100

赤名めじろ

72話 赤名めじろ


「編集長。高田君本当に遠野に行っちゃいましたよいいんですか? 彼は副編集長の言葉を真に受けて」


「唐沢、俺が悪いんじゃない。あいつが単純なんだ。原稿が、あがれば奴より先に来る」


「交通費がもったいないなぁ大島君。あと、彼の担当の作家は……」


「はい、編集長。飛縁魔女史の分はもう」


「あの表紙に使う絵の画家、赤名先生のとこが彼です」

「ソレは唐沢さん、あなたが行ってきて。絵はやはり本物じゃないと」

「一条さん、わたしあの人、苦手だな。女性が行くべきトコじゃないですよ、あの家は。一条さんは?」


「私もあの先生はちょっと……。副編集長お願いします」


「俺は忙しい」

「高田君を遠野に行かせたのは副編集長じゃ……」


「まああの変態爺さんはなぁ確かに女性には……。そうだバイトの間中まなかはどうだ」


「間中って、大学生のバイトの。可哀想じゃない」


「絵をとってこさせるだけならバイトでも。でしょ編集長」


「ああ、先生にアポ入れといて大島君」



 今日は、会社へ寄らずに赤名めじろ先生のとこへ行って表紙絵をとってこいって。

 LINEがきた。

 まあ赤名めじろ先生の絵は好きだし。学校から近いからイイ。


 ここね。

 凄い豪邸ねぇ。二階三階がお城の天守閣みたいな屋根。


 周りは石垣の様な塀で大きな木戸の門に不似合いな最新のインターフォン。


《お待ちしておりました。カギは開けましたのでどうぞ》


 会社の方でアポとってたようだ。

 すぐに応接間に。


 メイドの人がお茶を。

 メイドというよりお城の腰元みたいだ。

 和服にエプロンをしてるし頭にヘッドドレスまで、やっぱりメイドかな。

 あ、たしか大昔のカフェのポスターで、こんのを見た。


「旦那様は今すぐにまいります」

「あ、どうも」


 学校帰りでブルゾンにデニムのパンツで、場違いな感じだ。ここって。


 応接間には先生の大きな絵が飾ってある。

 裸女を描いたとてもエロチックな絵だ。

 これって自慰姿? 


「その絵、気に入ったかな」


 いつ入ってきたんだ。絵に見とれてて気づかなかった。

 横に立っている赤い和服姿の老人。

 この人が赤名めじろ先生。

 和服だが、よく見ると赤襦袢だ。


「今日はいつもの青年じゃないんだね。あんた若いね。新入社員かな」

「いえ、バイトです。まだ学生です」

「芸大?」

「いえ、某大の文学部です。けど、先生の絵は好きです。画集も買いました。高価だったのでバイトして、あたしは先生の『ヤマタノオロチと戯れる裸女』か、一番好きです」

「そうかいあれが……。君の名は」

「間中みそぎといいます」

「みそぎとは、かわった名だ。漢字で書くのかな」

「いえ、ひらがなです」


「ウチの三階が、わしの原画置き場なんだが見ないか。『ヤマタノオロチと戯れる裸女』もあるよ」


 三階に上がる階段の壁には先生の絵が飾られていた。それを見るだけで展示会場に来たようだ。

 なんだか得した気分。


天宇受売命あまのうずめのみこと」だ、天照大神をさそう裸女の舞姿が美しい。

 先生の絵は日本画だが、アラビアンナイトとかギリシャ神話の世界も独特のタッチで描かれていてどれも魅力的だ。

 裸女の絵が多いが女のあたしでさえ。ひきこまれる妖しい魅力。

 幻想文学誌の表紙にふさわしい。


 三階は、まさに先生の作品の展示会場だった。

 天井にあたしの好きな「ヤマタノオロチと戯れる裸女」が。思ってたより大きな絵だった。

 横5メートル縦3メートルくらいかな?


「あれは? はじめて、見ます」

「あれは『乙姫の舞』じゃ」

「じゃその前にアレを立たせてあ然としている男は浦島太郎?」

「そうだ。あの絵がきっかけで、お伽草子シリーズをやることになってる」


 と、赤名めじろ先生があたしを見て長い舌をペロリと。


「わしは、筆は使わんのだ。舌を使うんだよ」

「舌で絵を信じられない……」


「フォフォフォ。まあ普通は筆だからな、ホレこいつで描く奴も知ってるぞ」


 先生は襦袢をはだけてアレを出した。

 老人とは思えないそそり立ったそれは、ご立派だった。



 絵を受け取って、門から出たとこで。

すれ違った人が。

 先生の家の門のインターフォンを押した。

 誰だろう。あの女は、やけに綺麗な。どこかで見たような顔。

 その長い髪は腰まであるがボサボサで、その綺麗な顔に合わない古いハンテンを着てその下は緑のジャージ姿。なんなのこの女は。

 赤名先生の家に入った。

 家族かしら?



「副編集長。絵、とってきました」

「ご苦労さん」


 あたしが、そばで受け取った封筒を開けるのを見ていると。


「ん、見たい?」

「はい、あたし赤名先生のファンなんです。今日は先生に会えて感激しました。ありがとうございます」

「礼を言われても……大丈夫だった」

「えっ?」


「間中さん、あのスケベじじ、じゃなかった赤名先生にセクハラされなかった?」


「いえ。あの、この先生の作品を早くみたいです」


 副編集長が出した絵は水墨画風で、裸女がなんだかわからないバケモノとからんでる。

 あっ、この女は。

 あの門の前で見たハンテン姿の女に似ている。

 見覚えがあったはず、先生の絵の裸女に似てたんだ。絵のモデルなの? 

 あの人。


               つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ