オニ娘
71話 オニ娘
「紫咲さん、マジ普通のコンサート会場でやれるんですか」
「ああ、オリナス錦糸町だが」
「あそこにコンサート会場ありましたぁ?」
「特設ステージだよイベント広場の。公演は日曜の午後一回だが、アキバみたいなオタク相手じゃないから、どうなるかわからない。私も正直不安だが、メジャー化の第一歩としてチャレンジだ。他のアイドルグループには、ないものを魅せようじゃないか」
「なんて紫咲さん、はりきってるけど、どうかなあ。ミサキはどう思う?」
はじめての一般客へのお披露目。アキバの歩行者天国とは違う。
皆、不安だった。マネージャーの紫咲さんも言っている。
不安じゃない方がおかしい。が、おかしいのがひとりいる。
「あたし興奮してチビったらどうしょう。パンツ型オムツでも、はこうかな」
もうヤル気まんまんで興奮してるのは最年少のメンバー鬼桐マキだ。
ちなみにオニ娘なんで最年少と、言っても十三とか十五じゃない。
天真爛漫の彼女はどんなステージでも、どうじない。あがったことなどないそうだ。
逆に心配しょうなのは、あたしに聞いてきた彼女、平酒ミキ。
見た目はぽっちやり形で、どっしりしたイメージだが、実は小心者。
「やるだけやるしかないよ。江戸時代は、もっと地味な芸でもオニであるだけで、うけてたんだから」
「そうさ、ミサキの言うとおり。前向きに! ミキ頑張ろう」
そうやって、皆のムードメーカーになるのは上尾ユキだ。
「そうよね。頑張りましょ」
ダンスのセンスはバツグンでアクションもいけるのに普段はおっとり系の白里アキ。
そしてリーダーのあたし、七頭ミサキ。
この五人がオニ娘42のメンバーだ。
五人だけど、42は、人間どもには不吉な番号だが。あたしらには関係ない。
プロデュースもかねた紫咲さんが、将来42人くらいメンバーを増やすとつけたらしいが、それはさだかではない。
はじめはオニすべり坂42なんて名もあったらしいけど、「すべる」のは考えものと変えたそうだ。
公演当日。特設会場には、意外と人が集まっていた。
アキバの歩行者天国で見るカメラ小僧や地下ライブでよく見る顔もあった。
まあ路上ライブで観客がメンバーより少ないよりましだ。
一般客は、買い物途中の親子連れやカップルとかが少々。
鬼の面を付けステージに上がり、ポーズを決めた。そして和楽が流れオープニングの能舞。
ポップな曲調になり、踊も激しく。
十二単衣でのダンスは人間には無理だろうね。
ダンスを決めて横一列に並び。
あたしから面を順に取る。最後の上尾ユキで。
「キャーッ!」
と、女性客の悲鳴があがる。
成功だ。
つづく




