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おしゃべりトラック

70話 おしゃべりトラック


 まいったな。とんでもないのが住み着いた。

 居間で首だけお化けが、テレビに夢中だ。


「一反姐さん、悪いが今日は帰ってくれないか。仕事がおしてるんだ」


「気にするな。仕事をしろ」


 って、言われても気になって。あいつらなら気にならなかったのになぁ。

 なかなか帰らないなぁあいつら。

 ヒッチハイクで帰ると言ってたが、遅い気も。


「姐さん、あいつら遅くないかぁなんかあったのかなぁ」


「静の事だ、どっかで食べ歩いてんじゃないか」


「心配じゃねぇえ」


「心配したって意味ないだろう。心配したら無事帰るのか」


「まあそうだろうが」


   ピンポーン


「帰ってきたかな」


 俺はあわてて玄関に。

 戸を開けた。


「やっぱここだ。先生こんにちは」

「なんだ。高田くんか……」

「なんだは、ないでしょ。誰か客が来る予定でも?」

「客……。あ、ちょっと待て」


 俺はあわてて居間に走った。


「姐さん、急の客だ、まずい出ていってくれ」


 と、窓を開けた。


「仕方がない。イイとこだったんだが」


 ひょいと、飛んで一反姐さんは窓から出ていった。そして、玄関に戻った。


「先生、どうしたんです? まさか女でも来てたんですか。もしかして美人の妖怪? なら、紹介してくださいよ」

「違う。それより、なにしに遠野くんだりまで」

「先生、原稿あぶないっていうから、副編集長に意地でも取ってこいって」

「そんなもん、出来たらすぐ送ると」

「それが、こないから、わざわざボクが」

「はあ、まあいい。あがれ、高田くんのおかげで仕事が進みそうだ」

「先生、やっぱ女と。いけませんよ女で身を滅ぼすつもりですか。あ、コレ、先生の好きな東京バナナ」

「東京バナナはイイが。なんだ女で身を滅ぼすとは。そんな女いるか」

「ホントですか。何処かに隠れてません」


「コラッ、冷蔵庫を開けるな。そんなトコに人が入るか」


「そうですね。人なら……」




 老夫婦のクルマを福島市内で降りた。


 茨城をこえたあと福島。次は宮城だ。せめて仙台あたりまで乗せてくれるクルマを探そう。


「朝ごはん食べたーい」


「もう少ししたらね。まずクルマを」

「まだ、ろくに走ってないよクルマ」

「まだ、お店だって開いてないよ。静ちゃん。コンビニのはあきたでしょ」

「あせらないあせらない。福島と言ったら」


 静ちゃん、スマホで検索し始めた。


 あせってるのは底なしだろ。


「円盤餃子だって、喜多方ラーメン」

「静ちゃん、この店、どれも夕方だよ」

「いーじゃんせっかく来たんだから食べて帰ろう。急ぐ旅でもなし……。来る時はあっという間に通りすぎたんだよ福島。その前に朝ごはんを見つけなきゃ。」


 本当に福島市内をぶらつき。朝は仕方なくコンビニを見つけて。昼はラーメン屋さん。

 そして夕方、円盤餃子を食べて。

 クルマ探し。

 もう六時。真っ暗だよ。


 街中なので街灯で明るい所を首にかけたダンボール紙が見えるように立って。


「停まった!」


 わたしらの三十メートルくらい先で停まったのは、大きなトラックだ。

 窓が開き。


「仙台まででいいか?」


 と、髭ヅラで坊主頭のおじさんだ。


「何処から来たんだ?」

「遠野。東京へ行って帰るとこ」

「東京かあ。楽しかったか? 俺は若い時、千住に住んでてな、芸人を目指してたんだ。頭のイイ相棒もいてよ。売れかけた頃にその相棒に裏切られてよ。また、新しい相棒を捜して、イチからやりなおしだった……」


 このおじさん、永遠と自分の半生を語りはじめたらたら止まらない。


「あの有名になったチャプリンダンスの加藤は、俺の元相棒だったんだ」


 チャプリンダンスってテレビで見たけど。

 あの二人、おじさんと十歳以上違わないだろうか。

 おじさんの話しだと彼らが高校生くらいに組んでたことになる。

 だんだん話しが、まゆつばになってきた。

 時代もあっちこっち飛ぶし。


「おじさん、あそこのコンビニ寄ってくれる。オシッコしたいの」

「あ、ウンコか」

「オシッコよ!」


 おじさんもトイレと降りた。 


「逃げよ、アヤ。あの人につきあってられないわ」

「オシッコはいいの?」

「ウソよ、行こう」


 おじさんがトイレに行ってる間にコンビニから出た。

 まともに道路脇を歩いたら見つかるからコンビニの横であのトラックが出るまで待った。

 おじさんがコンビニから出てきた。

 しばらく車内で待ってたが、行ってしまった。


「大分待ってたね」

「ちょっと悪かったかな」

「いいよ、アレあたしらに話しを聞かせるために乗せたのよ。しかも、あいつタヌキよ。隣に座ってて獣臭かったわ」

「そうだったの、わからなかった。わたしの前に芳香剤おいてあって。アレ臭いなぁって」

「臭い消しだったかも」


「タヌキのクルマに乗ったのね、あんたら」


「誰、あんた?」

「人間じゃないよ静ちゃん」

「見ればわかるわ」


 ラーメンどんぶりをかぶつた着物姿の女。


「私はどんぶり姫」

「聞かない名だな」

「新しい妖怪?」

「あんたら、この辺じゃ見かけないね。何処から来たの?」

「生まれは下総、育ちは江戸、今は遠野に。今日は、東京へ行った帰りよ」

「そうなんだ。で、トラックに。アレに乗ったなんて災難だったでしょ。アレここらで有名な古ダヌキよ。代わりにイイクルマ紹介してあげるよ」


 そう言ってどんぶり姫はコンビニの駐車場の隅を指差した。そこには黄緑色の車体のクルマが、どう見ても百年前のクルマだ。付喪神ね。


「T型フォードのトヨサンよ」


 どんぶり姫が紹介してくれた。


「どんぶり姫か。誰だ、そのふたりは?」

「私らより古い妖怪よ。乗せてあげて」

「それはそれは。T型フォードのトヨサンです。どこまで行くんだい」

「仙台まで」

「わけあって県外には出れないけどいいかな?」

「いいわよ」

「よし乗って」


 クルマに乗ったわたしたちは人間には見えなくなった。しかもわたしたちをクルマが突き抜けて行く。百年前のクルマだけにスピードは遅い。


 福島の妖怪主との契約でこの県からは出られないそうだ。

 はじめに送ってくれたオシラサマも違う理由だが、岩手から出なかった。こういう妖怪も少ないけど居る。

 意地でも、その土地から出ない地縛霊みたいな妖怪。

 県境まで、行けた。宮城県は目の前だ。

 ありがとう。トヨサン。


               つづく

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