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老婦人の体験談

69話 老婦人の体験談


「は〜やっと終わった」

「あんたが、海ほたる寄ろうなんていうから残業よ。自業自得ね」

「いいじゃない、二人が楽しんでたし。あ、二人をどこまで送ったの?」

「松戸の6号線」

「もっと、行ってあげたらよかったのに」

「あんたのせいで、残業もあったから……」

「今何時?」

「9時をまわったとこ」

「クルマ乗れたかなぁ。あの二人」

「電話してみよか」

「え、電話もってたけ?」

「なんでも、東京で友だちに借りたそうよ。忘れてバッグに入れ放しだったんだって」



 ヒッチハイクのふたり。


「ありがとうございます。助かります」


 常磐自動車道を通って福島まで行くという老夫婦が乗せてくれた。


「夜に若い女の子がヒッチハイクなんて、私には考えられないわ。勇気があるというか、なんというか」


「はは、お金がないだけです」


「夕食はすましたのかい」


「はい。少し早かったですけど」


 ドロロンロ〜ン


「変な音が!」


「あ、電話です」


〘ハイハイ、白いルージュの女で〜す。お腹減ってませんか?〙


「あ、はい。途中でコンビニよりましたから」


〘どう? クルマつかまった〙


「はい、今、車中で、常磐自動車道走ってま〜す」


〘良かったね。いい人そう?〙


「はい。ご夫婦のクルマに」


〘そうか。じゃ遠野に着いたら連絡ちょうだいね。あ、金沢さんに代わるね〙

〘金沢です。松戸まででゴメンね〙


「ナニを、あそこまで送ってもらい感謝してます。ありがとうございました」

〘じゃ気をつけてバイバイ〙

「バイバイ!」


 静ちゃんは電話をきると。


「夕食ご馳走してくれた人たちです。イイ人でした」


「そう。いい人に乗せてもらったのね。私たちも、あなたたちの記憶に残るようになりたいわね」


 と、婦人はドライバーの旦那さんに。 


「だな。そうだ、お前の得意な怪談話でも聞かせてやったらどうだ」

「何言ってるの夜中に若い娘さんたちよ」

「若い子は怖い話、けっこう好きらしいぞ。なぁ?」


「好きです」


「ウチのカミさんね、霊感が強くて怖い話を沢山もってるんだよ」


「え〜聞きたいです」


「ほら」


「そう……。あなたたち、妖怪って信じる? 私、子供の頃だけど河童を見たことがあるのよ」


「おい、それは怖い話じゃないなぁ」

「いいじゃない。誰に話しても信じてもらえないの。幽霊見たっていうのは信じるのに」


「河童は居ますよ。あたしも見ました」


「ホントかい。そんな子とはじめて会ったよ。嬉しいねぇ」


「何処で見たんです?」


「私は結婚する前は千葉県の野田市に住んでてね家の近くに利根川が流れてたの。その川の土手にツクシだのイナゴだの取りによく行ってたんだよ」


「利根川かぁ大きいよね」


「そう、一人でイナゴ取ってた時に、川淵で座って何か食べてたんだよ。河童が」


「ナニを食べてたんです、そいつは?」


 と、食べることになると静ちゃん。


「よく見たらトマトを……。土手の下に。川の反対側ね。そこのトマト畑から取ってきたんだと思い。河童に『トマトドロホー!』って怒鳴っちゃたんだ。そしたらあわてて川に飛びこんで逃げたんだよ。畑はウチの畑でね。だけど河童と言えばキュウリだろ。トマト畑の隣にキュウリ畑があったんだ。それなのにトマトを取ってたからよけいに信じてもらえない。トマト泥棒と河童を見間違えたとか。アレは頭に皿がありくちばしもあった。服とか着てなかったし。赤茶けた身体だったのをよーく憶えてる。間違いなく河童だったよ」


「トマトの好きな河童もいるよ。利根のトマト好きなら……」


 静ちゃん、何いってんの。そんなことを人に。


「ねえ、アヤ。なんだっけ利根川の……」

「利根の三吉だよ」


 あ、コラッ。裏アヤッ。


「そうそう三吉。思い出した」


「利根の三吉。あんたたち……。たしか、同級生に利根川三吉って子が……。あの子は……」


「わたしたちの同級生は利根三吉(とねみつよし)って子で、三吉(さんきち)って書いてみつよしなんだけど、あだ名で利根のサンキチって呼ばれてた。偶然ですね」


 ごまかせたかな。


「あら、なんだか憶えてもらおうと話したけど。こちらが忘れられなくなりそう。河童を見た子たちに会えるなんて。あなたたちは何処で見たの」


「あたしたち遠野なんです」


「そう。あそこには今も居そうね」


「今はいません。ちょっと寂しいです」


 静ちゃん、それは。

 ご婦人が涙を。


「おいどうした。泣く話でもないだろう」

「だって、初めて信じてもらえたんだもの。あなただって、河童は、信じなかったわよね。嬉しいのあなたたちを乗せて良かった」


               つづく

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