漫画家
68話 漫画家
「ヒッチハイクは楽しいですか?」
「まあ、列車の旅もいいけど、この旅も面白いわ。いろんな人と出会える。人だけじゃないのよ」
「なんです、それ怖い話ですか」
茨城県、千葉県との県境にある取手市まで、乗せてくれるというおじさんは、メガネをかけたロン毛の人。気が弱そうな人だ。
「怪しい話には間違いないわね。夜、歩いていて人じゃないのに会ったの」
「そ、それは、なんです?」
「それは……それは人間になれなかった妖怪人間なのです」
「おふざけですか?」
「それ、知ってるなんて君はアニメオタですか? 若いから最近のリメイク作品のファンとか」
「あ、実は僕、漫画家なんです」
「漫画家なんですか。あたしの知っている漫画かなぁ」
「ちょっとマイナー誌なんで言ってもわからないだろうけど『二面少女アヤカ』っていうの描いてるんです。ペンネームは妖田開っていいます」
「ヨーダぁカイぃ……知ってるアヤ?」
「知らないけど、漫画のタイトルが気になります」
「『二面少女アヤカ』は、二重人格の少女が主人公で、一つは普通の少女なんだけど、もう一つの人格が探偵マニアで、いろいろな事件を解決するんだ。まあ女の子に話すのもなんだけど、探偵の人格と頭の中で会話が出来て、探偵はもう一つ少女の人格にセクハラ的なコトを言うヤツなんだ」
「ナニソレ面白そう雑誌名教えて。なんかアヤみたいね、名前も似てるし」
「あたしはアヤにセクハラなど、しない」
「そんなの知ってるわ醜女。出るとアヤが怒るよ」
「わたしアヤといいます。二重人格ではありませんが、二面性ではあります」
「そうなの。で、君のもう一つの性格は、どんなの?」
「ソレは言えません。でもセクハラはしません」
「あはははは。だよね。一人セクハラなんてマンガだ。面白いだろ。来年には、アニメ化も決まってるんだ。良かったら見てよ。雑誌名はマレビトピアっていうんだけど女の子にはススメられない成人向け漫画誌」
「マレビト……ピア。知らない雑誌だけどマレビトは知っているよ。自分が、どこから来て何なのかもわからない変なヤツ」
「そうなんだ、マレビトって、なんだかあの雑誌名になったのわかる気がするよ。イマイチよくわからない雑誌なんだよ」
漫画家の妖田さんは、東北に向かうのならいいだろと常磐自動車道の入り口のあるところまで行ってくれた。
つづく




