かっぱ橋
64話 かっぱ橋
なんでまた、あたしがかっぱ橋に居るかというと。帰り際に二口女の姉さんに頼まれたから。
この辺に『合羽バシ』という妖怪が居るから届け物してくれと。
「見つけたニャ。あのデカいコックが乗ったビルに居たニャ」
「アレか、かっぱ橋のシンボル的なヤツね」
「あのコックの中に居るニャ」
「あそこに登るのは昼間は目立つから夜にしよう」
最近、猫っ子があたしにまとわりつき、相棒のように。
「あれ、電話のリンちゃん」
「そんな古い名前で呼ぶなよ、かめら! なんであんたがココに?」
「そう言うえ〜とスマホのケイさんも、なんで? ココはギャルが来てもつまんないでしょ」
「その言葉、返すわよかめら小僧」
「知らないんですか? 最近は若い女の子がよく来るんですよココ」
言われてみれば、けっこう若い娘たちが多い、まさか、皆、料理に目覚め、道具を。
「みんな恋敵や悪男をやっつけるのに刃物を買いに来てるんニャ」
「そうそう包丁なら許可がいらないで買えるからって、違うよ! ネコ」
「ここの若い子たちを撮るのが楽しみで来てるんだ僕は。原宿の娘やアキバのアイドルたちとは違った魅力がある。で、君らは?」
「人捜しイヤ、妖怪捜しよ。もう見つけたけど」
「カッパかい? ココには居ないと聞いてるが」
「合羽バシって知ってるかい?」
「そんな妖怪居たの?」
「居るわよ、まったく歩道の真ん中で迷惑よ、物の怪共が」
「わあっ美少女! パチッ」
「ナニ勝手に撮ってんの訴えるわよ!」
「あんたナニ? 妖怪よね?」
「そうよ河童の緑子っつうの。あなたたちは?」
河童なのか、はじめて会った。もち、百鬼夜行の中にも居たけど話しはしてない。
「あたしは電話妖怪で妻保圭。こっちの小さいのは猫っ子」
「僕は、もともと豆腐小僧だけど写真機妖怪と組んでかめら小僧と」
「なるほど、付喪神と化け猫ね」
「僕は?」
「一つ目小僧だっけ?」
「豆腐です」
「どっちでもいいじゃない小僧なんだから。合羽バシなら、昼間はあそこで寝てるよ、じゃあね」
「あ、もう一枚」
パシャ
「後ろ姿撮っても……」
「いや、そこがいいんです。あの河童少女のお尻」
「変態!」
「ホラ、カッパが、振り向いて中指立ててるよ。あんた、尻子玉取られなくて良かったね」
夜になり、渋谷と違い人通りも少なくなった。
ビルとか、登るのは久しぶり。猫っ子は、ぴょんぴょん飛び上がる。あたしは電話妖怪なのよ、まあ普通の人間とは少しばかり違うけど。
ふう、やっと着いた。
「あんたら、なんだ? フンガッ」
突然、デカいクチバシの鳥が顔を出した。下は人間で簑を着ている。
「あんた合羽バシかい?」
「フンガッ。そうだ。あんたは?」
「二口の姉さん知ってるだろ。姉さんに頼まれて来た電話妖怪だ」
「二口姉さん……。誰だっけフガッ」
「ここのあたりにもうひとつ口がある妖怪の……。姉さんから、コレを渡してくれと」
「フンガッ、何じゃコレは」
どうやら、合羽バシは姉さんのことを忘れているらしい。預かった封筒を渡した。
「なになに昔借りた金を返す……二口女」
合羽バシの持った封筒から、十円玉が落ちた。
猫っ子が拾った。
「フンガッ、思い出したありゃ明治の終わりか、大正初期か、二口女に十円貸した……。がぁ〜あの頃は十円って、こんなコイン一枚じゃ」
「ほんじゃ、確かに渡したよ。じゃあね」
「おい、待てフガッ!」
つづく




