ハロウィン4
54話 ハロウィン4
四時をまわったトコでつるべ落とし。
五時直前には、暗くなるはずが、さすが大都会。明るいのは街灯やお店の明かりのせい。遠野なら田舎道歩くのに灯が必要な時間。
「間に合った。こんなに人がいて、見つかるのか静たち」
「人じゃないのも多いね、妖気がぷんぷんだよ」
「一反さん、目立たないトコにひとまず降りようか」
「おう、『一反姐さん』じゃないか」
飛んでる俺たちの前に大きな布が、近づき声をかけた。こいつは。
「本物の『一反木綿』?!」
「マカ、わたしも本物だよ」
そうだ、静たちが一反姐さんと呼んでいる平たい顔だけ妖怪が、ウチに現れ渋谷のハロウィンパレードに誘われた。
交通費は、彼女に乗って行くのでタダ。
もちろん俺はOKの返事をした。
「なんだか、関東地区の妖怪だけじゃないねぇ。今の一反仲間は、あっちこっち飛んでるけど、妙なトコのも沢山居るわ」
「そうなのか、妖怪はお祭り騒ぎが、好きだと聞く。ハロウィンなんで集まったのか」
「にしては多い。人の集まりだろ、これは」
「おねえさん、それ良く出来てるね。どうやってるの」
いつもは隠してる後ろの口でフライドポテトを髪の毛で食べ、前では焼きイモを食べてる静ちゃんに外国の人造人間モンスターの仮装をした若者が声をかけた。
「ヒ・ミ・ツ」
「アヤ、あたしにも焼きイモ食わせろ」
普段は隠してる頭の後ろを堂々と出して歩けるのもハロウィンだからだ。
まさか、本物の妖怪がまざっていると人も思うまい。
「おう、居たか。行くと聞いて来てみたんだ」
「『岩男』、昼間あの姉妹に会ったよ」
「『コシガヤ・カワゴエ姉妹』か。駅前で、会ったよ。『わらびひめ』と『カスカベ』も来るとよ。フカヤの『ネギ坊主』とか、『オオミヤ』、『コミヤ』。『浦和ババァ』も見た。あの山ン本五郎左衛門の手紙でかな。随分と妖怪どもが、集まって来るようだ」
岩男さんは本当の姿、石の塊に手足があるだけだが、シンプルで目立つ。
「おじさん、なにコレ? 描いてもイイ」
二人組のゾンビ娘が赤い絵の具瓶を持ち、筆で岩男に落書きをはじめた。
なんだか嬉しそうな岩男さんだ。
「おう、岩男では、ないか」
着ぶくれした、大きな顔のおっさんが来た。
「おや、もしかして油の。ずいぶん変わったな。簑はどうした?」
「アレはもうやめた。服は良い」
どうやら噂で聞いた『油すまし』のようだ。
「あら、二口ちゃんたち」
なんの仮装もしてない『ろくろ首姐さん』だ。まさかココで首を伸ばして歩くの。
「山ン本の五郎左衛門の手紙もらったの?」
「いえ、あたしらずっと東京に居たので」
「いたいた、は~い」
「『お歯黒姐さん』に『小袖の手』さん。寝肥さんは?」
「その名は言わないの」
『寝肥』さんは、逆方向から。横の小さな傘は『傘っ子』ね。
『ぷるぷるぶるぷる』
人には、見えないだろうが、今『ぷるぷるちゃん』が通った。
「やあキミたちも来たかい」
今のは『提灯カンコウ』のおじさん。本体で歩いてる。足の有るお魚だ。
「やあ騒々しいねここは」
『夜景さん』と『燃えアガリ』のカップルだ。
そんな前ではないのに懐かしい連中と会えた。来て良かったな。
「若いお嬢さんたち、気をつけな」
えっ、あなたは?
「ヤスレクには、気をつけな」
そう言って通り過ぎた杖をついた、腰のまがったお婆さん。大きな縁の帽子で顔はしっかり化粧をし、首にはスカーフと数本のキラキラした首飾り。大きなピアスもしてた。
「今のは……」
「現代の白粉婆かしら……」
「ヤスレクって何かしら?」
「安いレクリエーションじゃないですか?」
「ケイ、なによソレ?」
「流行りの安いレクリエーション施設とかで、あの婆さんぼったくられたとか?」
「なら、施設名で言うんじゃない。ヤスレクってナニかしら」
つづく




