バイト
49話 バイト
ヘビヅカヤ まむしの間。
「予算の方は、まあまあだけど予定してた遠野にないファッションは、ダメになったね。下着は宿で洗えるからもってるけど、上着はひと月近く着たきりすずめ。夏じゃないから大丈夫だけど、シャツくらいは洗わないと」
「いえてるわ。美味しもの有りすぎ。着るものまでお金が。ここは、ろくろ首姐さんか、寝肥に力を借りようよ」
宿には、洗濯室があり、大きな木のタライに洗剤と水を入れると妖怪「洗い木綿」と、いうのがタライの中に入りぐるぐる廻り洗ってくれる。
ろくろ首姐さんの店はわかったが、昼間は閉まっていた。
そこで名刺をもらった寝肥に電話した。
《あら、スマホからって、どうしたの? モデルやる気になった?》
「じゃなく、相談が」
ちょっとした、あるモデルの仕事があるから、来てくれれば相談は成立と。
あたしたちは六本木のあるスタジオに呼ばれた。
「通販のカタログの洋服モデルやってもらいたいの。あなたたちでも大丈夫よ。メイクさんもスタイリストも身内で妖怪仲間だから、問題ないよ」
前髪で目が隠れたメイクさんが静ちゃんの後ろに立ち、静ちゃんを見てニッと笑った歯は真っ黒だ。
「久しぶり二口ちゃん」
「お歯黒姐さん。その目は?」
「描いてあるんだよ、よく見な」
『お歯黒べったり』って妖怪は、わたしは、はじめてだ。白い顔には、目も鼻も無く黒く塗られた歯の口だけの妖怪だと聞いたが。今はカールしたセミロングで前髪を下ろし目は隠していたが、目は描いてあった。
「鼻が無いと漫画みたいだよ」
「鼻はコレから付けるの今は身内の仕事だからね」
「お互い人に化けれないと苦労するわね」
「もう慣れたよ。日によって目のかたち変えたり楽しい。あ、後ろの口のルージュは?」
「いりません」
「ハイよ。で、あんたの相棒はなんなの?」
「二面ですから、後ろの醜女をちょっとばっかし綺麗にしてやって下さい」
「二面かい、あんた。表と裏で二人分働けるね」
「醜女の方はモザイク入れないと使えませんよ」
「あたしの美貌を知らないね。メイクばえすんのよあたしは」
「一度拝見して見たいものだわ」
裏アヤの般若顔は、メイクのお歯黒姐さんによって、ツンデレ系女王様のような美女に。
ホントに静ちゃんは驚いた。
ただ、服のモデルには、合わないとメイクさんの遊びで終わった。
が、気に入ったらしく裏アヤは化粧を、落とさなかった。
「静、このメイク憶えておいて。遠野でしてもらから」
「アヤの貸しになるからね」
「なんなの、それ」
スタイリストは小柄の女性で、やけに手が小さく腕が細かった。やはり妖怪なのね。
「あんたは、『小袖の手』ね」
「はい、はじめまして。頭と体はうまく化けれたのに手と腕がねぇまんまで。まあ、不自由はしてないから」
「だから、わかったのよ。その白い手で」
仕事は夕方までかかり、着た洋服の一セットをバイト代がわりにいただいて帰った。
「やったね。静ちゃん」
「これ着てハロウィンに行こう」
つづく




