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天狗

44話 天狗


 とにかく一度顔を出さないと面倒だからと、静ちゃん。

 私には縁もゆかりも無い高尾山へ。


 ココも東京なんだ。遠野の山の中に帰ったみたいだ。

 観光地であるコースをわざと外し、薄暗い山奥へと入る。


「コースから、外れると食べ物食べれないよね」

「そうなんだけどね。顔出しておかないと後で、うるさそうだからさ。アレは」


 アレとは、天狗のことだ。

 天狗は天の(いぬ)と書くので、元々は獣系妖怪だったが、時代が変わり赤い顔のでか鼻のオヤジに変わった。

 その配下にカラスから妖怪化した『化烏』の一部が天狗についた。

 彼らも天狗と同じような修験者姿をしてる。

 連中は化烏(ばけがらす)から出世したつもりだが、化烏等は天狗の配下になった負け犬と見ている妖怪も居る。

 意外と妖怪化したカラス、化烏は恐い。


「なんだ、お前らは!」


「小天狗、頭はいるか」


「簡単には、お頭様には、会えない。名を名のれ!」


「偉そうに。これだから天狗門は。あんたの頭の知り合いよ」


 静ちゃんは小天狗。カラス天狗の小者だ。

 そいつの態度が気に入らないらしく、髪を伸ばし木の上の小天狗の足にからめ木から落とした。

 落ちた小天狗を睨みつけ。


「上の方から、エラそうに小僧。頭を呼んできなさい!」


 小天狗は、あわてて山奥に飛んで行った。


 しばらくすると森の中の木の葉が舞い、私達の周りを回りだした。


「いい加減にしてよ、髪が乱れるじゃない!」


 今日の静ちゃんは、機嫌が悪い。


「おおっやっぱり本物だ。今の風で後ろの口が見えたぞ。うっひょひょひょ」


「なんだか、イヤらしい言い方ねぇ天坊!」


「うっひょひょ。ナニがイヤらしい。同じ池で体を洗った中じゃないか」


「同じ釜のめしみたいに。あの時は大勢いたわよ。ふたりきりのように……」


 声はすれども姿は見えず。


 今、静ちゃんとしゃべってるのは、天狗よね。それにしても下品な笑い声。


「ちょっとそこまで来たから寄ったの。じゃあね」


「もう帰っちゃうの。また一緒に温泉でも入ろう二口よ。ご馳走も出すぞ」


「またって、一度も入ってないじゃない。食事は、いいわ。あたし山菜とか猪や鹿の肉好きじゃないの。アヤ、行こ」


 静ちゃんが、食事の誘いをことわった!


「ちょっと待てよぉ二口。共に寝た中ではないか」


 天狗は静ちゃんの元カレ?!


「さっきから、なに言ってんの。それも大勢での雑魚寝じゃない」


 なんだ、そうか。


 山を降りる時に聞いたんだけど。静ちゃんと、まだ天の狗の頃だった天狗は、人間にまざり修験者として山を渡り歩いていたコトもあったんだって。


 また、誰に語っている表アヤ。


「なんで大天狗は、姿を見せなかったの?」

「アレは恥ずかしがりやなんだ。アヤが居たから顔を出せなかったんだよ。まあ出てきても天狗の面で顔を隠してただろうね」


 天狗は、あの赤い顔の面とは違う顔なの。

 一度見てみたい。 


 もちろんネットで見つけた高尾山グルメは食べて帰った。


               つづく

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