おいてけ堀?
43話 おいてけ堀?
東京某所の寄席会場。
釣りを楽しんだ少年たちが、もう夕暮れ時なんで。帰ろうと釣った魚の入ったバケツを池に。
その時、聞こえてくる奇妙な声。
『持ってけぇ。持ってけぇ』
なんだ今の声は、たしか持ってけぇとか。でもよ、コレ持っていっても食うわけじゃないし。飼う気もない。また、聞こえた。
『持ってけぇ。持ってけえ!』
その池の中央あたりから、巨大な女の頭が現れて。
『バスもギルもいらぬ。持ってけ!』
と、大きな声で言われ少年たちはあわてて逃げ帰った。
少年たちが家に帰ると釣ったブラックバスやブルーギルが入ったバケツが家の玄関に置いてあったというお話で。怪談『持ってけ堀』の一席でした。
「なんだ、今の本所七不思議の最後の話。おかしくないか?」
「そりゃおかしいだろ。本所七不思議は『おいてけ堀』だからな。現代版のアレンジだろ。『持ってけ堀』、俺は、笑ったね。おっ、次は真打ちになったばかりの新々亭妖楽だ」
「まだ、出ないのぉあたし寝ちゃたよ」
「次だよ静ちゃん。妖楽だ」
いきなり一つ目小僧の面かぶって舞台に登場の落語家。中央の座布団に座り、お面を取る。
その下にはひょっとこの面が。
場内でくすくす笑いが。ひよっこ面を取るとお多福の面。
「あ、コレは私の顔ですから笑わないで」
面かと思えば素顔のお多福顔。
新々亭妖楽。女流落語家だ。
静ちゃんの古い知り合いの妖怪『お多福』が、落語家で。真打ちになり、舞台に上がると聞いて見に来た。
だけど、あまり落語や漫才に興味がない静ちゃんは寝てしまっていた。
「あれが、妖楽ね。本当に凄いお多福顔ね」
「まあ本物のお多福だからね。あの有名な面は彼女がモデルなんだ。ちなみによく相棒として出てくるひょっとこは、ひょっとくとも言う。あれも妖怪なんだ」
「そうなの……」
妖楽の落語はお化けネタの小話で、うけていた。
楽屋に挨拶に行こうとスタッフルームの方に行ったら若手の落語家さんに止められた。
「ココから先は一般人は入れないよ」
「あたし妖楽の友達なんだけど」
「友だち……。やけに若いな」
「妖楽が、老けてんのよ」
困り顔になった落語家さんは。
「ちょと待て。妖楽姉さんに聞いてくる。あんたの名は?」
「二口と言えばわかる」
「あれ、二口姐さん」
「姉さんって、妖楽姉さん」
「ドアの前に居たら姐さんの声で二口って聞こえたから。やっぱり。いつ東京に?」
「姉さん、ホントにこの人姉さんの姉さん?」
「なに言ってんだよ。あんた楽屋から私のカバン持ってきて。姐さん、私のおごり。ごちそうするわ」
「姉さん、二部のトリは?」
「大丈夫よ、それまでに帰るわ」
「お多福、悪いね。真打ち昇進の祝をするのはこっちなのに」
「姐さんが来てくれて私は嬉しくて……」
つづく




