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飛縁魔みずち

41話 飛縁魔みずち


 池袋駅から、バスに乗り板橋方面に。

 大学病院の近くに先生は住んでいる。


 雑誌「幻想文学エンタ」の来月号の巻頭になる作品を受け取りに来た。


 ちょっと古い築三十年くらいの平屋の一軒家。

 最近付けた会話可能なカメラ付きインターフォン。を、押した。


「幻想エンタの高田です。飛縁魔先生」


《先生は、今留守にしています》


「先生は、あなたですよね。まだ、出来てないのですか?」


《はい、先生は留守です》


「先生、『タコQ』のたこ焼き買ってきましたから」


   ガチャ


 ドア開いた。中から手だけが出た。たこ焼きをよこせと手まねいている。

 たこ焼きを渡したら、ドアが閉まる。

 だからボクは、カバンから別の袋を出しドアから出た手に渡した。

 手はすぐに引っ込みドアが閉まった。

 思った通りだ。

 また、ドアが開くとさっき渡した袋が放り出された。


《先生は、ピーマンは嫌いです》


 って、インターホンから。

 知っていた。そんなこと。だから、渡した。


《たこ焼きをください》


 ドアからまた手が。


「先生、遊びはそろそろ」


《なら、たこ焼きください》


 ボクはドアの手にたこ焼きの袋を渡しドアに手をかけた。

 不思議と、このドアは先生が了解するまで開かない。

 たこ焼きを受け取るとすんなり開き。

 玄関内にたこ焼きの袋を持った上下緑のジャージ姿の先生が立ってる。

 ここ数回見慣れた光景だ。


 小説家飛縁魔みずち。

 この筆名は、「妖怪ひのえんま」と「妖怪みずち」をくっつけた名で、たんにゴロがいいと、その妖怪には、まったく関係ないと本人は。


 本名が小島華江(こじまはなえ)という平凡でつまらないからだと、インパクトのある筆名をつけたらしい。

 コレはまえの担当の一条さんから聞いた。


 飛縁魔みずち先生はハッキリ言って美人だ。


 担当前に見た幻想文学新人賞授賞式の写真にボクは一目惚れした。

 が、去年担当になりこの家で会った時はびっくりした。


 まあノーメイクでも美人なのは変わりなかったが。一週間くらい洗ってなさそうなボサボサ頭に眠気まなこで、緑のシンプルな学生ジャージ姿。

 ジャージの胸には本名のコジマとカタカナの名札。背には9のゼッケンが縫い込まれたまま。

 

 この家で初対面した時もジャージの上下で彼女はボサボサの頭をかき大きなあくびをして。


「おはよう〜」


 と、言つた。コレはいつもの姿だ。


「冷めても美味しいんだよねタコQのは」

「今日は、一時間並びました」

「ソレはゴクローさん」

「で、出来ました原稿」

「あ〜ごめん。あと、もう少しなんだけど」

「じゃたこ焼き食べてから」


 コレもいつものパターンだ。


「はいはい。そのつもりです」

「高田くん、お茶煎れて」


 コレもだ。ボクはお茶を煎れながら。


「先生、そろそろ原稿をパソコンで、書きませんか。そうすれば、何度も取りに来なくても」


「ああ、さすがにね、私もそうは思ってんだけどねぇ。器械はどーも苦手で」


「手書きの作家さんも大分減りましたよ。あの……。わからないトコはボクが」

「手とり足とり、教えてくれるの高田くん……」


 と、先生はボクを少しタレた半開きの目で見て笑った。


「手はともかく足は……」

「あ、高田くん、今ヤらしいこと考えたでしょ」

「いえ、そんなコトは」

「多分覚えるのに三日三晩泊まり込んで教えてもらえないと覚えられないわよ、足も使って欲しいなあ〜」


 何度かそんなコトを言われパソコン使用の話は、はぐらかされた。


 さすがに泊まり込みはまずいというか無理だ。それも三日三晩。

 

「パソコンにしたら高田くん、あまり来なくなるんでしょ。そしたらタコQもぉ」

「たこ焼きくらいは自分で買いに出られるんでは、池袋の駅前ですよ」

「面倒よ。池袋の駅前まで行くのヤダわ。私、バス嫌いなの」

「ボクはたこ焼き配達人ですか」

「うん、まえの一条は、三回に一回しか買って来なかったの。高田くん毎回だもん。お姉さん、楽しみにしてんのよ」


 と、抱きつかれた。ジャージ姿の干物女でもあの新人賞受賞の美人だ。

 しかも、風呂入ってないみたいだけど、この人の良い香りが。


ボクは思わず興奮した。

 

 あ、ヤバ。か、下半身が。


  ガタガタガタ


「わっ、ナニ。地震?」

「あ、多分鳴屋(やなり)よ」

「やなり?」

「知らない? 家をゆらす妖怪」

「ええ、ココ妖怪出るんですか」

「え、言ってなかった? まえの担当に聞いてないの? ここ事故物件でさぁ時々茶の間になんか居座っているとか、あるの。この前一緒にお茶飲んでた」


               つづく

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