ああ上野
38話 ああ上野
上野の山は、全然変わってた。
前のパンダ騒ぎの時もテレビだったから、周辺の変わり様は初めてだ。動物園も初めて。
パンダという珍獣見たさにココへ凄い数の人が集まったのをテレビで見た。
「珍獣パンダねぇ。妖怪にも珍獣は沢山いるわよね」
やはり静ちゃんは、あまり興味がないみたいだ。妖怪は、人から見れば珍獣みたいなもんだしな。
「すねこすりや土ころび、わいら、おとろし、ぬえとか捕まえて見せればイイ儲けになるんじゃ」
「それだと、動物園というよりお化け屋敷になるよ」
「本物が居るお化け屋敷はないこともない」
誰かと見れば、岩男さん。それも。
「岩男……さん。だよね」
「おお。二口のぉ。まだ、東京に居たのか」
「その子供は?」
「俺の子だ」
「子供いたんですか!」
「ああ、去年出来た」
「去年って、どう見ても3歳くらいですよね」
「知らんのか? 妖怪の子は成長が早い……なぁ〜んてな。実は女房の連れ子なんだ。去年結婚したんだ。しかし、もう帰ったと思ってたよ」
「あんたの餞別のおかげよ」
「あんなんで、たりたか?」
「妖怪宿のおかげも」
「ああ、蛇骨ババァの」
「今はヘビヅカヤに。人間用と妖怪用にわかれてました」
「あの婆さんもやり手だからなぁ。それでも、大分減っただろ。小遣いだ持ってけ」
岩男さんが、娘さんに見えないようにわたしと静ちゃんに財布から。
その後、上野の焼肉屋でごちそうになった。
岩男さんと、別れてアメ横で買い物。
「上野に来て良かったねぇ」
はじめあまり乗る気でなかった静ちゃんが機嫌良くなった。
「アレは、妖怪よね」
アメ横の真ん中あたりの店と店の間にボロボロのコート姿の男が。
「ホームレスじゃ……ないわね。あの顔は」
「それに人には見えてないみたい」
頭はどう見たって人じゃない。大きな丸い目が顔の横に。鼻のアタマは低く口は大きい。サカナ顔だ。サカナ妖怪かしら。どこかの池か沼の主かな?
「やあ、あんたら妖怪だね」
あまり見てたからか、声をかけられた。
「わしは『市場すまし』って、もんだ。まえは築地に居たんだが、豊洲に移っただろ、わし、どうも豊洲にはなじめんでの。ここの方がなんとなく良い」
「ココは市場じゃないよね」
「知ってる。だが、年末のにぎわいが良いのじゃ」
「そうなんだじゃ」
「にぎわってるのがいいのか。都会の妖怪だね」
「わたしは静なのが好きだなぁ」
「あ、見て見て、珍しいB級グルメ店が並んでる」
不忍池の方に行く。
池の主に挨拶をと静ちゃんが。
「出た!」
池から少女が飛び出した。
「しのぶだよね。またなんていう姿で」
「久しぶり……二口よね。おかしいか、この姿?」
「昔は裸身の女神だった」
「今は、この方がウケが良い。たまにこの姿で秋葉原へ遊びに行く」
「それでは裸身なら、もっとウケるんじゃ」
「バカか、あんたは。裸じゃ捕まるだろ」
メイド姿の池の主なんて、ココにしか居ないだろと静ちゃんが言った。
たしかに。
「あ、上野にもヘビヅカヤが」
上野駅周辺とアメ横で食料買いして、まむしの間に帰った。
つづく




