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フードファイター

18話 フードファイター


 横浜中華街。


「ねぇさっきココ通ったよね」

「噂に聞いたけど、ココは迷路みたいだ。一度行った店がどこだったか。方向音痴が、来たら出られなくなりそうだな。まあ金さえあれば、餓死することはないけど。やっぱり、あの屋台で肉まん買おう。通るたびに食べたくなる。肉まんがあたしを呼んでいる」

「でも、アレ一個で、一食分あるから他の美味しい物が食べられなくなっちゃうよ」

「あんたは、だろ。あたしは平気」


 肉まん屋台の横で何か始まった。

 テーブルとか運ばれてきて、TVカメラらしいのが。

 テレビで、観たタレントが出て来た。


 テーブルの所へ小柄な女の人と大きな男が現れた。


「本番いきまーす!」


「大食いタレントの王、キング盛太対底なしギャル、タラコ姫。肉まん対決!」

「男女対決なんで、タラコ姫にはハンデをと、言いましたら彼女、そんなのはいらないと」


「なんか、はじまったね。大食い番組だ」

「人間だから、たかが知れてるよ。あの肉まんの大きさなら、人間だと、いいとこ二十個じゃない」


 大食いマッチが始まった。二人共テレビで見た大食いタレントだ。

 キング盛太が、5キロの巨大チャーハン食べたのを見たコトがある。

 対するタラコ姫は佐世保バーガーの早食いで、チャンピオンに。


 肉まんってハンバーガーより重いよね。特にあの屋台の肉まんは大きいし。見ているだけでお腹がいっぱいになる。

 静ちゃんは食べたそうに、指で、食べてる二人のテンポをとってる。数えてるのかな?


「タイムアップ!」


 歓声が上がったタラコ姫が、二十五個で、勝った。キング盛太は二十一個半。


「時間関係なければ、まだ食べれたのに」

「あんた早いな、しかも量もいける。完敗だ。オレはギリギリだ」


 と、キングは、タラコ姫の手を取り上げた。


「イイ試合ね、でもあたしなら倍は食べれたわ」

「ホント? 後ろの口なしで」

「入れて倍よ。あたしもまだいける。でもすごいわねあの二人。あたしの予想こえたわ」


 椅子から立ち上がったタラコ姫、妊娠でも、したようにお腹がふくらんでる。やっばりあれだけ食べると。タラコ姫は、お腹をポンと叩いて、近くのビルに入った。あそこに控室とか、あるのね。


 すぐに、着替えてコート着たタラコ姫がマスクをしてこっそり路地へ。


「さあ、あたしたちも食べよう。何食べる?」


 なんとか、他の路を通り「中華食べ放題」というのを見つけ入った。


 テレビで見た注文し放題の店だと店員が静ちゃんの食欲に驚くから、自分で取って食べる所にした。ここなら目立たないし、いろんな料理が食べれる。

 店も広いし、テーブル席も多い。


「うそ、見てアレ!」

「なにどうしたのアヤ?」


 ほぼ真ん中のテーブルに山程料理を置いて一人で食べてる客は、さっき肉まん食べて腹を膨らませていたタラコ姫だ。

 ほんとにまだ、いけてたのね。


「人間ながらあっぱれね」


  ホントに人間?


 タラコ姫のテーブルを見たせいなのか、静ちゃんも大量に料理を。スゴいわ。張り合うつもりかしら。


「あれ、あの人。同じ人とは、思えないおデブさんになって店を出て行った」


 アレ、やっぱり妖怪じやないのかな。


「見た、アヤ。妖怪じゃないよアレ」

「まるで別人だよアレ」

「見て、あたしあいつより食べたのにまったく変わらないでしょ。妖怪だからね」


 そう言われれば。


 帰りに道に迷った。

 ヘビヅカヤ横浜店が、あると聞いて探したのが間違いだった。

 大きな公園に出た。

 有名な海が見える公園ではなくビルの森に囲まれた陽があたらない公園だ。


 あれ、あの人だ。木陰の下のベンチにタラコ姫が大食いして太った人が。

 ベンチの周りに犬が集まってきた。


「アレ、タヌキじゃない」

「そうだね犬は今、街なかに居ないよね」


 うわぁ太った人が口から物を出した。

 ソレは嘔吐ではない。そのままの形の食べ物が出てきた。ソレをタヌキたちが食べだした。


「あの人は、タヌキたちの餌を集めるフードファイターなの」


 食べ物を吐き出した女は、タラコ姫の姿に戻った。


「正体は現さないけど、アレもタヌキじゃないのかしら」


 都会のタヌキ。フードファイターで餌を集める。


 そんな風景を見た。


               つづく

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