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新妖怪

17話 新妖怪


「今日、寒いね。遠野に帰ったみたいだ」

「遠野は、もっと寒いよ。きっと」


 妖怪でも、年中裸のカッパやヌリカベとかと違いわたしら人型妖怪は、人間と同じく寒さを感じる。

 人型の雪妖怪は、また別だけど。


「そのへんにぶるぶるとか、いるんじゃない? 東京の妖怪は、妖気消してるってゆーし」


「ぶるぶるねぇ」


 見廻すがそれらしい人に化けた妖怪は居ない。


 わたしたちは代官山に来ている。

 昨日まで暖かった東京は、曇りでやたら寒くなった。背筋を凍らす妖怪のせいなのかと思ってしまうくらい、昨日との温度差で、わたしら薄着で来たから寒い。


「静ちゃん、あれ、ナニ?」

「アレは豆腐小僧じゃ……ないわね」


 その異形は、おそらく人間には見えないのだろう。あんなのが、歩いてても誰も気づかない。


「ねェ、あんた」


 静ちゃんが声をかけた異形とは、頭はデザートとかで食べるプリンみたいで大きな目が二つまつ毛が長くて青い瞳。

 唇わホワッとぶ厚くて小さいのが可愛い。

 ホワッとした薄い桃色のワンピース姿で、女の子妖怪だ。

 でも、豆腐小僧の仲間かしら? 手にお皿を持ちその上にはパンケーキみたいのが。


 静ちゃんに呼び止められたその妖怪らしき子がこちらを見てニッコリと。


「妖怪さんですね。 わたしが見えるんですね」


 と、近づいて来て、皿のパンケーキみたいなのを差し出した。


「ぷるんぷるんのパンケーキです。召し上がれ」


 やっぱりパンケーキなんだ。すると、皿の上にフォークとナイフが出て来た。


「美味しそう」


 静ちゃんはナイフとフォーク取り、パンケーキを半分に切って一口で半分を。


「ぷるんとして美味しいわ」

「人間界では、ぷるんとした食べ物が好まれてます。わたし、『ぷるぷる』といいます。わたしは、まだ生まれたての妖怪で、人間の姿にはなれないんです。でも、美味しいぷるぷるスィーツを食べてもらいたくて、こうして出会った人に。あ、人間にも、時々いるんですわたしが見える人。そういう方々にぷるぷるスィーツをいただいてもらってます」


「妖怪ぷるぷるかぁ。妖怪も変わったね。アヤ」

「うん、ぶるぶると似た名前だけど全然違うね。わたしも食べたいなぷるぷるパンケーキ」


「ねぇぷるぷるちゃん、豆腐小僧って知ってる?」

「豆腐ですか……知りません」

「そうかあ、アレはもう東京には、居ないのかもね」

「下町の方へ行けば居るんじゃないかなぁ」

「なんですか豆腐小僧さんって?」

「あんたみたいに皿に豆腐を持って歩いてた妖怪だよ。似てるから仲間なのかと」


 時代が変われば妖怪も変わる。まだ、居るのだろうこの子みたいなの。


「妖怪ケータイとか、居るのかなぁ。あたし、住所とか、口座ないからスマホとか、持てないのよね」

「居そうだね。でも妖怪がスマホ持っても話す相手も居ないんじゃ」

「そんなコトないよ、埼玉の岩男たちは使ってたわ。あたし見た」

「あの妖怪は、人間になりすましていたからね。わかるわ。ちゃんと住所もあるし、人間に税金も払ってそう」


 わたしは、あそこまでして人間になろうとは思わない。

 静ちゃんは人間文化にあこがれているところもあるけどでも、美味しい物を食べられれば満足しちゃう子なんだよね。


               つづく

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