ナンパ小僧現る
13話 ナンパ小僧現る
新大久保コリアンタウン。
「ここも、秋葉原みたいに人が多いね」
「アキバと違い手に食べ物持ってる人が多い。韓国スィーツって奴ね。贅沢だけど、横浜の中華街も行きたくなっちゃた」
「妖怪宿で宿代ういたから、行ってみようか。江戸とは違った東京。楽しくなってきたよ」
「アヤッ知ってる? 横浜は東京じゃないよ」
「アレ、見てアヤ」
「なんだか変なのが歩いてるね」
「あの肉のかたまりみたいの……昔会ったかも」
向こうがこちらを見て手を上げた。
肉のかたまりに丸太の様な手足が付いたヤツ。顔は、しわの様な線でかろうじて目鼻口がわかる。
「あんたら、わしが見えてる?」
「あんた妖怪だよね」
「ああ、人呼んでぬっペっぽうだ」
「そうだ、思い出した。たしか海外の韓国から来た妖怪よね」
ぬっぺっぽうは、短い腕で頭? をかきながら。
「まあ随分昔の話だわな。日本に来た頃、時の将軍様に挨拶に行って追い出されたのを思い出した」
「あんたらは、わしよりぜんぜん若いな。ソレになんで人間に姿を見せてる?」
「まあ、あんたみたいにおかしな姿じやないから、見えてた方が、楽なの」
「そうかもな。じゃ気をつけてな、新宿方面には悪い物の怪も多いから」
と、トボトボとわたしらから離れて行った。
あまり同類の妖怪には興味がないらしい。まあ同類と言ってもアレはまた人型のわたしらとは違う妖怪なんだけどね。
「ホント、東京は何処へ行っても居るね」
何処から、取ったのか静ちゃんは髪の毛が持ってきたカップを受け取り中のなんだか知らない食べ物を食べた。
「美味しいけど、ちょっと辛いかな」
そんな調子で、いくつかの食べ物を。
泥棒じゃ?
「本格的な料理も食べたいね。お昼は肉食べよう」
お昼ご飯がすんでまた、持ち帰り品をいっぱい買った。
それから新宿の街中までだらだらと歩いた。
やはり江戸とは違うわ。
あの頃少しだけ、居たのよ。このあたりは森だった。今はビルの森。
「ねぇボクらとカラオケ行かない?」
出た。ナンパ小僧二人組。
妖怪ではない。
「カラオケ。東京のカラオケって地方のと、どう違うの?」
「地方の? キミたち何処から来たの?」
「遠野」
「上野?」
「バカ、上野は東京だ。埼玉だろ」
「あんたもバカ? 東北よ、岩手県」
「北海道かぁ」
ホントにバカだ。この二人。
「ボクら東京から出たのは修学旅行で京都奈良くらいなんで、違いがわからないんだけど。何処でも同じじゃねぇカラオケって」
「お金ないから、出してくれたら行ってもいいけど。ねッアヤ」
ねって、わたし歌知らないしぃ。
「すごく荷物持ってるね、ナニ? ん、いい臭いする食べ物?」
「あげないわよ」
「あ、いらないから。カラオケでも美味いものたくさんあるよ。持ってやるよ」
つづく