秋葉原
11話 秋葉原
岩男さんが最寄りの駅までおくってくれたので、つくばエクスプレスに乗った。
わたしたちは終点の秋葉原駅まで行くことに。
「はじめの東京の都市が秋葉原って。ココはオタクの街とか、言われてるけど意外とグルメな街でもあるんだよ」
と、静ちゃんは雑誌を開いた。
土曜日だったので、スゴい人の数。
「静ちゃん、今日はお祭り?」
「違うわよ。土日は、いつもこんならしいわ。テレビでもやってたわ。雑誌見て、何処かいいトコ行ってみましょ。でも、このマカさんにもらった雑誌。かなり古いのよ」
ホントだ。今、何年だっけ、2020年は、こえてるよね。静ちゃんの持ってる雑誌2010年代だ。
「とりあえず、地図見てあるか、ないか確かめよう。ホラ、あるトコは、あるよ。メイドさんも居るし。見て、妖怪メイド・カフェとかある」
「知り合いとか居るのかなぁ」
「アハハハ。居ないわよ、妖怪のコスプレ・メイドが居るだけよ」
「そうかなホラ、岩男さんの話では、人間のふりして働く妖怪が多いって」
「行って見る?」
「いいよべつに行かなくても。目的は違うんでしょ。なにか食べて今日の宿も探さないと……」
どうしたのかしら。静ちゃんは、ある人間を見ている。
どうやら妖怪らしい。
でも、アレは古い奴ではなさそうだ。妖気も薄い。
「アレ、多分妖怪ハチタクだ」
「ナニ? ソレ聞いたことない妖怪ね」
「ええ、霊体からまだ、本妖怪になったばかりの元人間。昔はオタクのカリスマとか、言われてた人。最近東京から来た仲間に聞いたことある。
ホラ、ココはオタクの街でしょ。まだ、妖怪まで、なってない霊体が、うようよしてる」
「ソレは、ココに来た時気づいたわ。アレって生まれてホヤホヤの妖怪ね。『ハチタク』かぁ初めて見たよ」
「あたしもだけどね」
実は生まれたての妖怪って言うのも初めてみた。男妖怪で長髪は珍しくないけど、メガネは、妖怪にはいらないと思う。
大きな祇袋をさげ、孫の手みたいな棒を持って人混みに消えた。
そのウチ、この街は、ああいった妖怪の宝庫になるんだろうなぁ。
「とりあず、何か食べよう。宿は、別のトコで探そう。この街は、少し目的からズレてるわ」
ステーキ店で、軽く食べて。他の場所に。
ステーキって、軽くないよね?
秋葉原から離れて、電車でちょっとの東京スカイツリーに行く。
ソラマチ周辺で、お持ち帰り食を大量に買い宿で食べるコトに。
さすがにわたしらが本体で食べられる店は無い。本当に「食べる」のなら、このパターンになるだろう。
ここにも新妖怪が『提灯カンコウ』というのと遭遇。
グルメなトコは静ちゃんと同種だ。
この妖怪提灯カンコウに聞いたところ妖怪なら、ただで泊まれる宿があると。
そこなら、本体でゆっくり出来るらしい。
四谷にある蛇塚屋という宿だ。
駅から近いと聞いたが、それらしき宿がない。
「見て、あのビル」
近代的なビルにヘビヅカヤと光るネオン。
「あそこが、蛇塚屋」
行ってみると。受付には若い女性が。
「いらっしゃいませ。お客様は、こちらの受付に」
と、一目見るなり言われた。あの受付嬢は人間じゃない。獣臭がした。
タヌキかキツネね。
人間か妖怪を嗅ぎわけるのかしら。
もう一つの受付には、着物姿の女性が。蛇を首に巻いてる。ココは人間の目には見えないようだ。
「どちらの妖怪さんですか?」
「あたしたち、遠野から」
「あら、遠路から。ここの事は?」
「提灯カンコウさんに」
「今日、昼まで居たお客様ですね。この宿帳にお名前を」
「草双紙静様と綾樫彩様。申し訳ございません。妖怪名を下に」
と言われたので名前の下に。
「二口様に二面様ですか。お初にお目にかかります私、蛇骨娘でございます。おカメちゃん、お客様をお部屋をご案内して」
板張りの廊下の奥からおかめの仮面を付けた女中さんが、現れ。部屋に。
まむしの間。
「受付の蛇骨娘って、あの蛇骨ババァの身内かしら?」
「そうかもね。女中さんはおカメちゃんって……。
畳の間一部屋ってなんか、ここ遠野の安宿みたい。わたしたちみたいな田舎モンがくつろぎやすい部屋だよね」
畳の部屋で、江戸時代を思わす。さすがに行灯はなく。蛍光灯が天井に。
素泊まりだから、夕食はない。
早速、静ちゃんは買ってきた大量のお弁当やら、お持ち帰り食を開けて食べだした。
髪の毛は手のように次々になんでも取り後の口に入れる静ちゃん。ステーキ店では食べられなかったからね。
「明日は新宿へ行こう」
と、食べながら静ちゃんは言った。
つづく