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遠野の秋

第1話 遠野の秋


「しずかぁちゃ〜ん」

「しずかぁちゃーん。居るぅ?」


 居ないのかなぁ? 


「しずぅかぁちゃああああん!」

「ハイよ。アヤ、うるさいわねぇ」


 静ちゃんが背後に。

 大きな竹籠背負ってる。まさか。


「森前の田んぼの柿の木から柿採ったから、一緒に食べる?」

「柿なら、あたしも畑の柿の木から、ホラ」


 と、静ちゃんが、背の籠をおろして見せた。わたしが持ってきた手籠の4倍くらいある量だ。


「そっちのも食べたいし、昨日山で採った栗もあるんだわ。あと、梨が欲しいわね」

「梨は自然から採れないよ」


   ほっほほほほ


 その笑い声は、河ババァ。


「おまえさんたち、いいとこで出会ったのぉ。ホレ、梨園のジジィが梨くれた」


 河ババァは、白いスーパーの袋に五つくらい入った梨を上げて見せた。


 わたしたちは女子会に使ってる町はずれの田んぼの横にぽつんとある、きれいな一軒家に食べ物を持ち込んだ。

 ココは数年前まで老夫婦が住んでいて、建て替えを終えたとたんお爺さんが亡くなり、後を追うように翌年、お婆さんも亡くなった。

 それから、誰も住んでない。

 ので、家はきれいなままだ。

 都会に住んでる息子夫婦らは、越して来る気がないらしい。

 放ったらかしで、庭の雑草は凄いが、家の中は、わたしらがしょっちゅう使ってるのできれいだ。


 「しかし、大量の柿だねぇ」


 梨を丸かじりしている河ババァは、もう片手に柿を持ち。一噛りした。


「種類が、違うからいいのよ。アヤのは、大きいので、食べごたえが、あるし。あたしのは、小ぶりだけど甘いわぁ」


 静ちゃんは、長い髪の毛を動かし自分で採った柿を頭の後ろの口に入れる。

 静ちゃんは、二口女の種族。

 後頭部にもう一つ口がある。

 その口は牙と硬そうな歯が有り、なんでも食べちゃう。


「あんた、栗ばかり食べてない?」


 昨日ゆでた栗を皮ごと食べてるのは。


「自分でむけないんだよ。アヤ、皮を……」


 わたしの後頭部にあるもう一つの顔。

 普通に人間なわたしの顔と違って後ろは般若とでも言おうか、強面顔。

わたしは、二面女の種。


  ガラッと二階の窓が開く音が。


「あたしもまぜてよ。その梨、美味しそうだね」


 二階から入って来たのは一反姐さんだ。


 布のように薄ぺらな体。いつも風に乗ってひらひら漂ってる。仲間の一反もめんと違うのは長い髪の毛と薄ペラな顔が。自称江戸美人。

 浮世絵のようにのっぺりしてる。


「姐さん、テレビ出てたね」

「静、見たのか」


「UFOとか、言われてたね」

「彩も見てたか」


「ええ、静ちゃんと一緒にマカさんとこで」


 フワフワ浮きながら一反姐さんは、梨を取り噛りながら。


「あんたら、まだあの人間の家に」

「あの人、あたしらを気にしてないから、居やすいんだよ」

「そうそう。テレビも見れるしゲームも出来る。一反姐さん、ストⅡしたことある?」


「いつのゲームじや。古いのぉ」


 え、河ババァ、ストⅡ知っているんだ。


「え、ストⅡって古いの」

「アヤ、あの人は古いのしか持ってないから。もうフアミコンの時代じゃないのよ」

「えー静ちゃんも知ってたの」


「あんたが、知らないだけよ。あ〜ゲームとかより、あたし美味しいモンブラン食べたいなぁ。姐さんは、空が飛べていいなァ どこにでも行ける」


「モンブランなら、スーパーにあるじゃない」


「あたしは、東京のモンブランが食べたいのぉ。田舎のスーパーのは偽物よ。ああ東京行きたいなァァァ」


 また、はじまった静ちゃんの「東京行きたいな」。目的は食べることで。東京タワーとか、皇居が見たいわけじゃない。


「このダサい服も、いいのに変えたい」


 服も欲しいらしい。


「ああぁ静、服なら通販で買えるぞ」


「駄目だよ姐さん。妖怪には、住所ないもん」


「あのマカとかいう人間の住所かりればイイ」


「ああ、そうか。さすが姐さん。あ、でもお金無い」


               つづく

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