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九十七話 ブレアの信念

 帝都を取り巻く兵隊の戦力が薄い部分に私とロランは闘気を纏って突っ込み、驚く兵士達を強引に掻き分けて城壁を駆け登った。


「何だ、貴様ら!?」

「帝都には入れさせんぞ!!」


 城壁に乗っている兵士が私達に襲いかかってくる。

 が、私達はまともに相手をせずに【瞬歩】を使い攻撃を躱して、帝都内へと入った。


「時間をかければかけるほど不利になる。急ぐよ、着いてきて」


 驚く帝都の民の人達や衛兵達を速度で振り切り、帝都にそびえ立つ城へと向かう。

 ロランは初めて来たはずであろう場所なのに、何故か道に迷わず最短距離を走って行った。


 城に着くと警備の兵が多数いる。

 およそ数百といったところだろう。


「突っ切るよ」


 ロランのその言葉と共に、私達は正門を正面から突っ切った。

 私とロランは一騎当千に近いほどの戦力。

 邪魔する帝国兵達を倒しながらも、増援が来る前に城内へと侵入する。


「おそらく皇帝は四階の謁見の間にいる」


 ロランにそう言われ、私は【探魔】を使う。


「いるね……強いマナが二つ。一つのマナの周りにはそこそこなのが六人くらい」


 感じたのは皇帝とブレアのマナだ。

 私達は驚く従者や文官の人達を無視して、一階から二階、二階から三階へと駆け登る。


 そして、四階へと上がるとロランが止まった。

 目的地の四階。


 そこの謁見の間の前であろう大広間は凍てついており――。



「……ブレア!!」


 ブレアが待ち受けていた。



「よぉ、まさかお前ら二人が仲良しこよしで来るとは思ってなかったぜ。他の面子はどうしたよ?」


 ブレアは皆が死んだことを知らない様子だ。

 知ろうと思えば、知れたはずなのに、知ろうとも思わなかったのだろう。


「冥土隊の皆は……拳帝ポワンに殺されたよ。私以外はね」


「マジかよ!? そりゃいーや!! あたいの邪魔するバカが減ってよ!!」


「……っ……!! あんた……仲間が死んだのよ!?」


「はっ。あたいはもう帝国軍の四帝が一人、氷帝ブレアだ。敵が死んだんだから喜ぶに決まってんだろーがよ!!」


 ブレアが四帝!?

 ビックリしたけど……そんなことはどうだっていい……。


「ブレア……皆死んだんだよ? ルーナもフローラもベラも……エマも」


「……しつけーな。だからどうしたってんだよ。あたいはあたいの強さを証明するために、お前をぶっ殺して、エミリー先生の仇のアッシュを討てればそれで良い」


 何で……何でそうなるの?

 私を殺して……何の意味があるっていうの?


「なら、僕はフリーパスでいいかい?」


「お前も気に入らねぇヤツの一人だけどよ……今はいいぜ、通れよ。ヒメナとタイマンで殺り合いてぇからな」


「じゃ、そうさせてもらおうかな。ここは寒いしね」


 ロランは大広間を抜けて、皇帝がいるであろう謁見の間へと向かった。

 ブレアはニヤついたまま、歩くロランを素通りさせる。

 あくまでブレアの狙いは私のようだ。


「闘う前に……あんたに聞きたいことがあるんだけど」


「あ? 何だよ」


「何でモルデン砦でエマを殺してまでアリアを連れ出して、帝国軍に入ったの?」


「決まってんじゃねぇか、てめぇと闘うためだよ。仲間のままだったら、どうせてめぇはあたいとは真剣には闘わねぇだろ? だからだよ、甘ちゃん」


 私と闘うため……?

 そんなことのために冥土隊を裏切って、アリアを危険にさらして、エマを殺したって言うの……?


「何でそこまでして……私と?」


「……てめぇが追放されてからあたいが冥土隊のエースだった。あたいの力が冥土隊を引っ張って来たんだ。てめぇが戻って来てからは……ずっと地べたを這いずり回ってるような、屈辱的な気分だったよ。そこで気付いたんだ」


「……何に?」


「この世の全ては力だってことにな。自分自身を満足させんのも、他人を認めさせんのも……全部力だ!!」


 ブレアは怒りをぶつけるかのように金槌を床に叩きつける。


「あたいはあたいのために、ヒメナ!! てめぇをぶっ殺す!! それがあたいの存在証明になんだ!!」


 私の甘さが……私の存在が、ブレアを追い込んでたってこと?

 でも私だって必死で頑張った結果なのに……。

 それに、追い込まれたからってエマを殺していいはずないじゃない!!


「あんたってやつは……どこまで馬鹿なのよ!!」


 昔から交わらない私とブレアは互いに闘気を纏い、戦闘を始めた――。



*****



 謁見の間の玉座に左腕で頬杖をつき、右手にバルディッシュを持って玉座に座す皇帝ズィーク。

 その周囲には護衛兵が六人並んでいた。


 そんな中――謁見の間の扉が開き、一人の男性が入ってくる。

 白い制服に黄色の髪と目をした男、ロランだ。

 ロランは左腕には円盾を、腰にはレイピアをぶら下げている。


「やはり来たか、トネール。氷帝はどうした?」


「ブレアちゃんなら今、ウチのメイドちゃんの相手をしているよ」


「あの獣では止めるべき相手すら分からぬか……まぁ良い」


 皇帝は頬杖を付くのをやめて左手を上げ、


「殺れ」


「「「御意!!」」」


 ロランの方へと手を向けて、護衛兵達を襲わせた。

 六人の護衛兵はそれぞれの武器を抜き、力強い闘気を纏ってロランへと向かう。


 ロランの眼前に近づき、武器を振りかぶったその時――操られた人形が糸を切られたかのように、六人は倒れた。


 この上なく正確かつ、迅速なレイピアでの刺突。

 六人の脳を貫き、その体の機能を奪う。

 護衛兵達は何をされたのかも分からず、命を散らした。


「さて、邪魔はもう入らない」


 一瞬で六人の護衛兵を殺したロラン。

 しかし、皇帝に驚きはなかった。

 それ程までにロランと護衛兵に力の差があることは分かっていたからだ。


「よもや、二度も闘うことになろうとはな。良いだろう。私の覇道に立ち塞がるのであれば、ここで潰してくれよう。ロラン……だったか?」


 皇帝ズィークは立ち上がる。

 そしてバルディッシュを回転させて、構えを取った。


「行くよ」


 ロランとズィークは互いに【瞬歩】を使い、闘いを開始した――。

何となく面白そうなど、少しでも思ってくださった方は、画面下の『☆☆☆☆☆』からポイントを入れていただけると幸いです。

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皆様が応援してくれることが執筆の原動力と自信にも繋がりますので、何卒よろしくお願いします。

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