表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/110

九十六話 戦争開始

 一部の兵士とリフデ王子をモルデン砦に残した私達は、帝都ドミナシオンに向けて侵攻を続けた。

 ほとんどの町や都市や砦は、予想以上にあっさりと落とせ、帝都までは難もなく進んでいる。

 あっさり進め過ぎて、逆に怖いくらいだ。


 でも、十万もの大軍だから止められなくて当然か。

 にしても、ほとんど捨てられたみたいな感じがしたけど……。


「後数日で帝都だよ。敵も大軍みたいだ」


 馬に乗るロランが私にそう伝えて来た。


「おそらくこれが最終決戦となる。この戦いが終われば戦争が終わるかもね。勝っても負けても。それ程互いに戦力を注ぎ込むだろう」


「勝っても負けても……どうすれば王国は勝てるの?」


「皇帝と炎帝さえ殺せれば勝ちと言えるね。あの二人さえ殺してしまえば、烏合の衆になる。だけど……拳帝がどう出るかに割と全てかかってると言ってもいい。拳帝に勝てる可能性がある存在なんていないだろうから……君以外には、ね」


 【終焉の歌】や私とアリアの出生に関してロランに話していないのにも関わらずそんなことを言うということは、ソリテュードで【終焉の歌】の最中の私の闘気を感じたんだろう。

 それで詳しくは分かってないけど、何となく察してはいるんだ。


「拳帝は来ないよ」


「あのメッセージを馬鹿正直に受け取っても問題ないと? 戦争より君を待つことが、彼女にとって重要なのかい?」


「うん、多分」


 ポワンは絶対来ない。戦争には興味がないから。

 今もアフェクシーで私を待っているだろう。

 私が関わった人を殺してまでそんなことをする理由は分からないけど。


「ならば都合がいい。勝ち目が見えて来たね」


 私の答えを信じたのか、ロランは微笑んで馬を走らせた。


 帝都は近い。

 決戦は――もうすぐだ。



*****



 数日後、帝都ドミナシオンが見えて来る。


「ほぇ〜……」


「どうしたの? ヒメナ」


「いや、帝国軍……すごい数だ。こっちの兵士より強そうなのが倍くらい。それに、アッシュのマナも感じる。皇帝とブレアのマナは感じないや」


 帝都の城壁の外の荒野には、二十万を超える帝国兵軍が隊列を組み、アッシュを筆頭に待ち受けていた。

 勿論全て雑兵などではなく、鍛えられた兵士。

 その景色は、正に壮観って感じだ。

 アリアが目が見えないのは幸か不幸か分からない。


 あまりの規模に、私は気負う。

 いよいよ始まるんだ……帝国軍と王国軍の明暗を分ける決戦が。


「皆の者!! 横陣を敷け!!」


 こちらも広がる荒野に十万もの兵が王様の号令で、横に長く伸びる陣を敷いた。

 互いにお見合いをし、牽制し合う。


 敵軍を率いているのは、私達の父親……炎帝アッシュだろう。

 皇帝とブレアの姿は探したけどやっぱり見えないし、マナも感じない。

 帝都の高台にそびえ立つ大きい城の内部にいるのかな?


 ロランは王様と何やら話し合い、馬を降りてアリアと一緒にいる私の元へと駆けつけて来た。


「歌姫はここに置いていく。皇帝が戦場で見当たらないから、僕とヒメナちゃんで皇帝を探して討ちに行くよ」


「ほぇ!?」


 アリアと別行動?

 そんなのあり得ないって!!

 だって、アリアを守る冥土隊はもう……私一人しかいないんだから。


「……ヒメナ、行ってきて」


「アリア!?」


 私が行ったら誰が守るのよ!?

 アリアが信頼できる人なんて他にいないのに!!


「炎帝しかいないなら考えもあるし、私は大丈夫だからヒメナは皇帝を討って」


 【探魔】が使える私を生かすなら、皇帝を探して討つこと。

 それが良いのは、分かってる。

 だけど、やっぱりアリアと離れるのは心配だ。


「それと、ブレアをお願い」


「……っ……」


 ブレアをどうして欲しいかは、アリアははっきりとは言わなかった。

 それを意味するのは、ブレアのことは全面的に私に託したということだろう。

 説得するのか……それとも敵として倒すのか。


 そんな大事なことを任されて……断れるはずないじゃん。


「ずるいよ……アリア」


「ごめんね。だけど大局を見た時、適材適所じゃないといけないわ。ヒメナも私も、それだけの力があるのだから」


 アリアは歌魔法での軍の強化をし、戦場で勝つこと。

 私は【探魔】と個の戦闘能力で、皇帝を討つこと。

 アリアの言う通り得意分野が違うのだから、分かれるのは仕方がないことだ。


「分かった……」


 無茶はしないでとも、危なかったら逃げてとも言えない。

 アリアは目が見えないのだから。


「じゃあ僕らは回り込んで行こう」


「……うん」


 私に出来ることは一刻も早く皇帝を討つことだけだ。

 そうすればきっと戦争は収まる。

 それがアリアを危険から遠ざける一番の方法なのかもしれない。

 そう考えた私はロランと共に、帝国内部に入る為に戦線から離脱した。



*****



 ヒメナとロランが軍から離れて帝都に向かう中、グロリアス国王はアリアを隣に立たせ、隊列を敷き終えた十万もの兵士達に陣の奥深くから激励を浴びせる。


「皆の者!! 我らには我が軍に勝利をもたらせ続けてきた歌姫がついておる!! 数が劣っているからといって、帝国軍などに恐れるな!!」


「「「うおおぉぉ!!」」」


 それに共鳴するかのように、兵士達は自身を鼓舞するために雄叫びを上げた。



 ――一方帝国軍を指揮するのはアッシュ。

 ソリテュードで探してたアリアが再び王国軍に戻って来たことを望遠鏡で確認する。


「ちっ……やはりあの時、死帝に渡すべきではなかったか……」


 ルシェルシュにアリアを引き渡したことを後悔するも、過去を振り返っていても仕方がない。

 今はアリアの歌によって強化される十万もの王国軍を相手にしなければならないのだから。


「皆の者!! 聞けぃ!! 王国軍は歌姫を有している!! 数で勝ろうが侮るな!! ここが王国との戦での分け目となろう!! 全力をもって殲滅せよ!!」

 

「「「御意っ!!」」」


 アッシュに鼓舞された二十万を超える帝国兵の返事は、地響きのように響き渡る。

 それと同時に両軍が進撃し、大規模な戦争が始まった。

何となく面白そうなど、少しでも思ってくださった方は、画面下の『☆☆☆☆☆』からポイントを入れていただけると幸いです。

感想を頂けたりSNSなどで広めて頂けると、作者は更に喜びます。


皆様が応援してくれることが執筆の原動力と自信にも繋がりますので、何卒よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ