表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/110

八十四話 時間稼ぎ

 サイレンが鳴り響き、侵入がバレたヒメナ達一行。

 ヒメナが研究所内に潜入する中、ロラン、ルーナ、ベラはそれぞれ散開し、陽動を行っている。


 ベラは研究所近くの道路で兵士と闘っていた。

 目的はヒメナがアリアを助けるまでの時間稼ぎ。

 兵士を大鎌で掻き分けて移動しながら、時間を稼ぐ。


 その最中――。


「ベラァ!!」


 見知った声で名を呼ばれ、振り返る。

 声の主は、ブレアだ。

 ブレアの姿を確認したベラの表情は、いつも微笑んでいる顔とは違い、険しいモノとなる。


「あらあら、まぁまぁ。まだメイド服を着ているのぉ? 裏切ったあなたにそれを着る資格なんてあるのかしらぁ?」


「うっせぇよ、バーカ。着替えが無かったんだよ。服なんざ飾りだろ、飾り。んなことより、お前が来てるってことはヒメナも来てるってことか」


 嘲笑うかのようなブレアを見て、ブレアがエマを殺したことを確信するベラ。

 ベラの目は射抜くような目付きへと変わった。


「……何のためにエマを殺したのぉ?」


「あぁ? お前に関係ねーだろ」


 ベラの目付きに臆さず――。


「今からあたいにぶっ殺されんだからよ!!」


 ブレアは金槌を構え、闘気を纏ってベラに向けて突貫した。

 ベラは地面を見て影を探す。


 ベラにとっての影が少ない夜が弱点。

 しかし、幸いこのソリテュードは数多く電灯があり、夜も影が出来る。

 ここでは光源が多いため、弱点は無くなったに等しい。


 ブレアと自分の影が重なった時、ベラは影に潜り込んでブレアの攻撃をかわした。

 そして、影を伝ってブレアの背後へと現れる。


「それが答えと言う事ねぇ。冥土へお逝きなさいなぁ」


 ベラの再三敵を冥土へ送った必殺の股下からの、大鎌での一撃。

 ブレアは金槌で攻撃した反動を生かして回転し、それを躱した。


「お互いに手の内を知り尽くしているからやり辛いわねぇ」


「お互い? もう以前のあたいとは違うんだよ」


 ブレアが手をかざし、生み出したのは雪の結晶のような白氷の雪花。


「魔技【アイスフィールド】」


 それを地面へと注ぐと、ブレアを中心に辺り一面が白く凍る。


「……っ……!?」


 エマを殺し、冥土隊を裏切り、そこまでしてヒメナより強いと証明しようとしたブレアは、自身の魔法を昇華させた。

 その凍てつく白氷は、以前までの力を遥かに上回り、ベラや帝国兵達を驚愕させる。


「もう、後には引けねーからな」


 自分の有利な状況を一瞬で作り出したブレアは、そう言って氷上を滑り始めた――。



*****



「痺れないなぁ」


 ベラが闘う中、ロランは退屈している。

 電気で焦がした帝国兵の死体の山の上に足を組んで座り、頬杖をついて欠伸をしていた。


「だから、君が相手してくれないかな? 炎帝アッシュ・フラムさん」


 まるでロランに答えるかのように、路地裏から現れたのは炎帝であるアッシュだ。


「トネール第一皇子……否、今は王国軍紫狼騎士団団長のロラン・エレクトリシテと名乗っておりましたかな?」


「いいよいいよ、敬語なんて。僕の方が年下だし、今は敵だしさ」


「帝国に戻る気はあられないと?」


 アッシュの問いに悩ましげな顔をするロラン。


「痺れるなら戻るよ? けど、今は王国にいる方が痺れるからさ。拳帝が帝国にいること以外はね。アレだけはどうしようもないからさ」


「その理屈……分かりませぬな」


「君も同等の敵と命のやり取りをしたら痺れないかい? いつ死ぬか分からないギリギリの闘いとかさ。残念ながら王国には僕より強い者はいない。だから、帝国になびくことはない。ま、逆になれば分からないけどね」


「理解出来ませぬ。我は元剣帝エミリーとグロリアス国王を殺し……そして、皇帝のために王国滅ぼせれば良い故」


 ロランはレイピアを抜き、切先をアッシュへと向ける。


「それは僕を殺さないと叶わない願いだ」


 アッシュもフランベルジュを抜き、切先をロランへと向けた。


「ならば、押し通らせて頂きましょう」


 そして、二人の剣は激しく交差する。


「さぁ、痺れさせておくれ」


 ロランの笑顔を皮切りに、戦闘は開始された。

 互いに【瞬歩】を使った激しい打ち合い。


「魔技【インフェルノ】」


 アッシュの剣を持たない手による、地獄の黒炎による、火炎放射。

 それをロランの周囲にまき散らす。


 ロランは一時離脱するため、【瞬歩】で距離を取る。


「もしかして、マナをも燃すのかい?」


 感覚的に察したロラン。

 戦闘経験の豊富さ故に、アッシュの魔法の性能に気付いたのだろう。


「これは、痺れそうだ」


「我は痺れたくはありませぬがね」


 闘いたいロランと、陽動作戦にうっすら気付き本命を追いたいアッシュ。

 しかし、ロランがスリルを味わえそうなアッシュを逃がすはずがなかった――。



*****



 ルーナは大剣で帝国兵達を切断していた。

 敵を薙ぎ払う姿は、正に戦場に死をもたらす戦乙女であった。


「何だコイツ!?」

「迂闊に近づくな!! ぶった斬られるぞ!!」


 ルーナの魔法【切断】を恐れた、帝国兵達は間合いに入って来なくなった。


「この様子ならしばらくは持ちそうね」


 膠着状態となるルーナと帝国兵達。

 それは時間稼ぎが目的のルーナからしたら、好都合であった。


「ダメダメ、君達。ルーナちゃんはおじさんのものなんだから」


 しかし、現れる。


「震帝……カニバル・クエイク!!」


 圧倒的強者である、宿敵カニバルが。

 ルーナにとっては三度合いまみえることとなった。


「……今度こそ……倒す!!」


 ルーナの鋭い目付きを見て、カニバルは思わず鼻で笑う。


「ふふふっ、良い目だね。でもおじさん、二度あることは三度あると思うよ」


「制限解除」


 ルーナの大剣の柄頭に埋め込まれた魔石が光り輝き、大剣の握る部分を残し、柄から切り離される。

 ルーナの切り札『マナブレード』。


 ここは敵地の中。

 以前の戦闘とは違い、ルーナは躊躇いなく切り札を切る。


「私は三度目の正直だと思うわ」


 ルーナのマナによって作られた、見えない伸縮自由な剣。

 それをカニバルに向けて、あらゆる角度から振るった。


「強力な攻撃も、おじさんに当てれなければ意味がないねぇ。残念でした」


 だが、カニバルにはあっさりとかわされる。

 アンゴワス公国で闘った時と同じ状況。


「必ず届かせる……届いてみせる!!」


 ルーナは四帝に匹敵する強さを手に入れるため、手にした力。

 それは――。


「二刀流……それはおじさんでもやっかいだね」


 二本目のマナブレード。

 モルデン砦にフローラが牢屋に入っている間に制作した物だ。


 流石の震帝カニバルも、二本目の伸縮自由かつ不可視の一撃必殺の剣を見て、真顔になる。


「はああぁぁ!!」


 ルーナは二本の見えない刃を振るい始めた――。

何となく面白そうなど、少しでも思ってくださった方は、画面下の『☆☆☆☆☆』からポイントを入れていただけると幸いです。

感想を頂けたりSNSなどで広めて頂けると、作者は更に喜びます。


皆様が応援してくれることが執筆の原動力と自信にも繋がりますので、何卒よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ