表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/110

八十二話 思わぬ再会

 夜が更ける中――アリアがいる研究所の近くを歩きながら、他には聞こえない程度の声の大きさで話す。


「で、どうすんのよ?」


「当然、忍び込む。もしバレた場合はベラちゃん……いや、ヒメナちゃんが歌姫を救出に向かい、他は陽動として派手に暴れるしかないね」


 ベラの方が影に入れるから隠密行動には向いてるけど、アリアがいる場所を把握できるのは【探魔】がある私だけだからか。

 もしバレたら、隠密も何もないもんね。


「生体研究所の地理や情報が欲しい所だけど、時間をかければかける程良くない。歌姫にとっても、僕らにとってもね。速やかに歌姫を奪取する必要がある」


「ぶっつけ本番って訳ねぇ」


「不安だけど……仕方ないわね」


 ベラとルーナも、覚悟を決めた様子だ。


 私は未だモヤモヤしている。

 何が正しくて、何が間違ってるのか。

 ブレアがどうしてエマを殺して、アリアを連れ去ったのか。


 だけど、切り替えないと。

 私が何より優先すべきは、アリアを守ることだ。


「よし、行こっ」


 私達は生体研究所に潜入するため、施設の壁を闘気を纏って乗り越える。


 しかし、その瞬間――。



 生体研究所の頂点にある何かが赤く光り、大きな音が鳴り響いた。



『侵入者だよー、兵士の皆さんよろしくー。侵入者だよー、兵士の皆さんよろしくー。侵入者だよー、兵士の皆さんよろしくー』


 どこからか、ソリテュード全てに響き渡るような大きさで、ふざけたような声が連呼される。


「……なるほど。予め登録されたマナの者以外が敷地内に入ると警報がなる魔法具などがあったのかもしれないね」


「早速バレたじゃない!? どうすんのよ!?」


 ロランは何でこんな状況で冷静に分析してんの!?

 ブレア並みのバカじゃない!!


「どうするってさっき決めたじゃないか。バレたら歌姫の救出はヒメナちゃんに任せて、他は陽動に回るってさ」


 そっか。

 結局隠密行動とか私には合わなかったし、こっちの方が分かりやすくていいや。


「じゃ、行ってくる!」


「歌姫を奪取したら、【闘気砲】を派手に放って合図を出して。そしたら僕達は散り散りに逃げるから。待ち合わせ場所はセンデンと落ち合った場所ね」


 私は研究所の窓を叩き割って侵入すると、ロランとルーナとベラが散り散りとなる。

 各々が別々の場所で、陽動するのだろう。


 出来るだけ早くアリアを助けないと……!

 陽動をするルーナとベラを敵地に置くんだから……ロランはどうでもいいけど。


 私はもう一度【探魔】でアリアの位置を探る。

 位置は変わっていない――けど、私は他に感じたマナを目指した。


 懐かしい……相変わらず寂しくも暖かみを感じるマナだ。


 闘気を纏って廊下を走り、驚く研究者達とすれ違う。

 私は見知ったマナの人物の背中を目視し、捕まえて近くの部屋へと拉致する。


「なーんだ!?」


「何だじゃないよ!! ヴェデレさん、何でこんな所にいるの!?」


 私が【探魔】で探知したのは、アリアとブレア達だけじゃなかった。

 ヴェデレさんも見つけてたんだ。


「おまっ……ヒメナじゃねーか! お前こそこんな所で何してやがーる!? まさか、侵入者ってのはお前ーか!?」


「そうよ!! アリア……歌姫を取り戻したいの!! 案内して!」


 私は久しぶりに会ったヴェデレさんに、今まで起こったことを伝える。


「勘弁してくれーよ! 王国軍の歌姫を捕えたってルシェルシュ様が喜んでんだ!! それを連れ去るのに協力してみろーや!? ぶっ殺されちまうわーな!!」


「頼りはヴェデレさんだけなの!! お願い!!」


 アリアの場所は分かるけど、人工物は【探魔】では分からない。

 つまり、経路が分からないんだ。

 ヴェデレさんが今ここで働いてるのはびっくりしたけど、もし協力してくれたら、アリアの所まで最速でたどり着ける。


「…………」


 ヴェデレさんは両手を合わした私の前で、押し黙る。


「やっぱり、できねーわな。お前は見なかったことしてやるから、とっとと研究所から去ることだーな」


 ……そうだった。

 ヴェデレさんはアフェクシーがフリーエンに襲われた時も、地下室に一人で隠れていた人だ。

 こんなことに協力してくれるはずがない。


「もういいよ! ヴェデレさんの人でなし!!」


「ヒメナ! 行くんじゃねーんだな!!」


 私はヴェデレさんに捨て台詞を吐き、その場から闘気を纏って立ち去る。


 アリアを助けたい。

 それだけに夢中で気付かなかった。


「お前が行くことはよー、ルシェルシュ様にとっては喜び以外の何でもないんだぞ……」


 ヴェデレさんが呟いた、その言葉に。

何となく面白そうなど、少しでも思ってくださった方は、画面下の『☆☆☆☆☆』からポイントを入れていただけると幸いです。

感想を頂けたりSNSなどで広めて頂けると、作者は更に喜びます。


皆様が応援してくれることが執筆の原動力と自信にも繋がりますので、何卒よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ