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八十一話 潜入

 帝国に潜入して数日後の夜。

 私達はソリテュードへとこれといったトラブルもなく辿り着き、遠い丘の木陰から望遠鏡でソリテュードを覗いていた。


 ソリテュードの周囲は城壁と明りで囲われていて、簡単には入れそうにない。

 当然見張りや門番が数多くおり、潜入するのは難しそうだ。


「どうする気? 真正面から乗り込むの?」


「いや、迎えが来るよ。慌てない慌てない」


 ロランに諫められていると、赤色の髪をしたアホ毛を揺らす帝国兵の男性が近づいて来た。


「ロラン様、お待たせしたッス!」


「うん。待ったから借り一つね」


「そんなぁ〜、ひどいッスよ~」


 実際はそんなに待ってないのに、何て言い草……。

 びっくりしてアホ毛がピンと立ってるじゃん。

 可哀相に……。


「彼はセンデン・エムファンゲン。僕が帝国に放った諜報員だよ」


「冥土隊の皆様、よろしくッス!」


 明るくビシッと敬礼してくるセンデンさん。

 私達はそんなに偉い訳じゃないから、そんなことしなくていいのにさ。


「これが帝国軍の軍服ッス! 着替えて下さいッス!」


 私達は潜入するために、それぞれ木陰でメイド服から帝国軍の軍服に着替えた。

 うーん、あんまり似合わないなぁ。


「馬子にも衣装だね」


「うっさいわね!」


 悔しいことにロランは様になっている。

 いちいち私を弄ってくるのが、むかつく。


「あの〜……胸の辺りが少し苦しいんですけど……」


「あちゃ~、何とか我慢してほしいッス!」


 ルーナの巨乳で制服がぴちぴちになっていた。

 ロランが私の胸を見てくる。

 悪かったわね!

 私は丁度良いサイズよ!


「ごめんなさぁい。入らないわぁ」


「な、何とかしてくださいッス……」


 ベラに至っては制服のボタンを開けないと、着ることすらできない。

 ロランが私の胸を見てくる。

 悪かったわね!!

 私は丁度良いサイズよ!!


 私達はメイド服を荷物に纏めて、帝国兵を装う。

 ソリテュードは帝国兵か研究者しか主にいないため、装うなら帝国兵の方が動きやすいみたいだ。


「では行くッス! これで門から堂々と通るッスよ!」


 私達は荷物を木陰に置き、街道へと入りソリテュードに向けて歩き始める。

 この人大分元気だけど、諜報員に向いてるのかなぁ……諜報員ってもっと隠密に長けてる人の方がいいような。


「いよーッス!」


 門まで辿り着くと、門番にこちらから挨拶をするセンデンさん。

 ほぇ!?

 本当にこの人に任せて大丈夫なの!?


「よっ、リューゲ。そいつら誰だ? 新入りか?」


「そうッス!」


「案内頑張ってなー。嬢ちゃん達も兵士は立ち入り禁止区域とかあっから気をつけな」


 あっさりと通れた。

 逆にこれだけ明るくてコミュニケーション能力が高そうな人の方が、疑われ辛いのかな。

 凄いや。


 それからしばらくセンデンさんが、ソリテュード内を案内してくれた。

 所々にある電灯と呼ばれる物や、何のためにあるのかも分からない巨大な風車。

 明らかにこの街だけ科学が発展していて、目新しいモノばかりだ。


「センデン。君はここまででいいよ。僕らがバレた時、君が近くにいれば今後に支障が出る」


「うぃッス! これがオイラお手製のソリテュードの分かってる範囲の地図ッス! 書かれてない所は兵士が立ち入り禁止の区域ッスよ!」


 えっへんと、腰に手を当て胸を張るセンデンさん。

 地図を受け取ったロランが苦々しい顔をしたので、思わず私達も地図を覗き込む。


 ……何だこりゃ?

 汚過ぎて誰も読めない。

 とてもじゃないけど地図と呼べるモノではなかった。

 ただの落書きだ。


「センデン、バイバイ」


 ロランは受け取った地図を破り捨てる。

 センデンさんは時間を割いて作ったのだろう。

 凄くショックを受けている。


「ひどいッスよおぉぉ!」


 お手製の地図を破られたセンデンさんは、泣きながら去って行った。

 きっといいことあるよ……センデンさん。

 あの人諜報員ってことがバレて、殺されなきゃいいけど。


「さて、まずはアリアちゃんの居場所だけど、兵士が立ち入り禁止の生体研究所にいるのは間違いないだろうね。近くに行ってヒメナちゃんの【探魔】で歌姫を探す」


 私達は立ち入り禁止の区域ギリギリまで研究所の方へと歩いた。

 研究所を守るためなのか、兵士達が常駐する駐屯所が隣接されている。


「さて……ヒメナちゃん、分かるかい?」


 私に【探魔】を使うこと促すロラン。

 本当に、こんな所にアリアがいるのかな……?


 ロランの指示に従うのは不服だったけど、使わないとどうしようもないので【探魔】を使っているアリアを探す。


 ――いた!!


「多分そこの一階……アリアはそこにいる。でも……アッシュとカニバルと……ブレアがあっちの大っきい駐屯所にいる。それに……このマナは……?」


「「!!」」


 私と……ベラとルーナは驚く。

 だけど、ロランは全く驚いた様子がない。


 本当にブレアは……エマを殺してアリアを帝国に売ったんだ。


「ブレアちゃんはともかく、炎帝と震帝……それにここは死帝の庭。一筋縄じゃ行かなさそうだね」


 動揺する私達をよそにロランは、アリアをどう奪取するか考える――。

何となく面白そうなど、少しでも思ってくださった方は、画面下の『☆☆☆☆☆』からポイントを入れていただけると幸いです。

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皆様が応援してくれることが執筆の原動力と自信にも繋がりますので、何卒よろしくお願いします。

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