表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/110

六十四話 それぞれの闘い③

 ベラが隣でブルートと闘う中、エマは事前にハールから【複製】していた【毛髪】の魔法を自在に操るファルシュの相手をしていた。


「くっ……面倒だね!」


 エマは圧倒的な手数を誇る【毛髪】の魔法を、両刃の槍一本では凌ぎきれずにいた。


「魔技【爆破】!!」


 あまりのファルシュの猛攻に耐えきれず、目の前を爆発させ髪の毛を飛散させる。

 しかし、そんなエマに対してファルシュは魔技【飛髪】によって、黒髪を飛ばして来た。


「ぐっ……!」


 爆煙の中から突然現れた、硬質化した髪が身体中に刺さるエマ。

 思わず堪えるための声を上げた。


「僕はハールとは同じ戦場にいることが多いんですよ。なのでハールの【毛髪】の魔法は知り尽くしています。闘気に至ってはハールを上回っています。つまり――」


 爆煙が未だ周囲を包む中、ファルシュは自身の髪の毛を蛇のように緩やかに、そして速く伸ばし、エマの足元まで忍び寄らせていく。


「!!」


 それに気付いていなかったエマを髪の毛で捕らえ、やがて包み込んで空中へと持ち上げた。


「僕の力はオリジナルを超える」


 魔技【包髪】によって、球体状に毛髪の牢に閉じ込まれたエマ。

 なす術がない――そう思われた時、エマは自分ごと毛髪の牢内を爆発させた。


「何!?」


 牢を爆発させて、脱出されたことに驚くファルシュ。

 しかし、エマの自分をも巻き込んだ爆発のダメージは決して少なくなかった。

 爆煙に包まれたエマの赤いメイド服は所々焼け焦げ、自身の体からも煙を吹いている。


 エマは着地したと同時に、追撃されぬ様にファルシュと距離を取る。

 そして、エマはブルートと闘うベラと背中合わせとなった。


「どぉ? そっちはぁ?」


「……ウチの方は、ちと面倒だね」


「お互い相性が悪いかもねぇ」


 そして二人は悪態をつくのであった――。



*****



 ルーナはひたすらカニバルを切断するため、大剣を振るいまくる。


「ほっ、ほっ。おじさん、良い運動になるねぇ」


「くっ……!」


 しかし、カニバルはハットが飛ばないように抑えながら、ひょいひょいっと余裕をもって躱していた。


 ルーナの魔法【切断】も当たらなければ意味がない。

 さらに、カニバルはルーナのマナから嫌な雰囲気を感じており、手に持つノコギリで受け止める気配もなかった。


 ――既に感じる圧倒的実力差。

 それでも、カニバルはここで殺るしかない。

 次いつ対峙できるか分からない、ララの仇。


「……この差を埋めるには、切り札に頼るしかなさそうね」


「ん? 何て言ったんだい? おじさん、聞こえなかったよ」


 そう考え大剣を振るうのを止めたルーナは、一度カニバルと距離を取って大剣を地面に刺し込んだ。


「制限解除」


 ルーナの大剣の柄頭に埋め込まれた魔石が光り輝くと、大剣の握る部分を残し、柄から切り離される。

 傍目から見たらルーナは剣の握りであるグリップしか持っていない状態だ。


「おじさん、何だか嫌な予感がするよ」


 カニバルがそう言った矢先、もはや剣とは呼べない握りから先がない物を振るうルーナ。

 感覚的に察知したのか、カニバルは【瞬歩】を使って何かを躱す。


「!?」


 しかしカニバルは躱しきれず、被ったハットの切先をほんの少し切断された。

 いつも笑顔のカニバルは、その切れたハットから邪悪な目を覗かせ、真面目な顔となる。


「見えない剣……ね」


 カニバルのハットを切ったのは間違いなくルーナだ。

 しかし、ルーナが持つのは元は大剣だったグリップの部分だけで、普通であれば斬れるはずがない。


「『マナブレード』。私の親友が作ってくれた、私の切り札よ」


 カニバルのハットを斬ったのは、『マナブレード』。


 ルーナのマナで形成された刃は、ある程度感じ取ることが出来たとしても、ヒメナのような例外を除けば見ることは叶わない。

 更にはルーナの任意の長さに変えることもできる、ルーナの【切断】の魔法と相性が抜群のフローラが作った一品だ。


「あなたを冥土へと送るためのね!」


 ここでカニバルとの決着をつけるため、切り札をきったルーナは先程より勢いを増して、カニバルに迫るのであった。



*****



 ロランと皇帝ズィークは遠目から見ても異次元な闘いをしていた。

 【重力】の魔法とバルディッシュを操る皇帝ズィーク。

 【電気】の魔法とレイピアを操るロラン。


 その闘いは地形を変えるほど激しく、周囲を巻き込みながらも続けられている。


「惜しいな、その才。帝国に入れば次期皇帝へとなれたものを」


「第三皇子のルグレなんてどうですか? あいつが皇帝になればどうなるか、それはそれで面白そうだ」


 ロランとルグレは幼少期仲が良かった。

 と言っても、一方的にロランがルグレをからかう関係ではあったが。

 誰にでも純粋無垢なルグレに対して、ロランは悪い感情を抱いてなかった。


「アレはもう死んだ」


「それは残念。からかいがいがあって好きだったのになぁ。じゃあさっきの誰かも分からない皇子を殺したのは悪かったかな?」


 まるで悪びれた様子もなく微笑むロランに、ズィークは少なからず苛立ちを覚える。


「問題ない。跡継ぎはまだいくらでもおるわ」


 しかし、ズィークが皇帝である由縁か。

 少しも感情を見せることなく、懐の大きさだけを見せた。


「それはそれは、まだまだお元気そうで何よりです。きちんと僕が全員殺してあげますよ」


 そう言い放ったロランは【瞬歩】でズィークとの距離を詰め――。


「あなたを殺した後にね」


 魔技【雷突】を放つ。

 電気を帯びた神速のレイピアによる突き。


「そんな浅はかな希望が叶うと思うてか?」


 それを読んでいたのかズィークは、武器を持たない左手をロランの【雷突】に向けてかざす。


「!」


 ただそれだけで、ロランの雷突は下へと逸れて、大地を抉る。

 ロランの攻撃を【重力】の力で負荷をかけて逸らしたのだ。


「魔技【グラビティスラッシュ】」


 ロランが動じる隙を逃さず、バルディッシュで反撃するズィーク。

 ロランはその攻撃を、髪の毛を掠めるほどの所で躱した。


 ズィークの【グラビティスラッシュ】は、あまりの威力に大地をにヒビを作り、攻撃の余波で近くの瓦礫や人を吹き飛ばす。


「痺れるね」


 ズィークの強さを肌で感じたロランは、実に楽しそうに笑った。

何となく面白そうなど、少しでも思ってくださった方は、画面下の『☆☆☆☆☆』からポイントを入れていただけると幸いです。

感想を頂けたりSNSなどで広めて頂けると、作者は更に喜びます。


皆様が応援してくれることが執筆の原動力と自信にも繋がりますので、何卒よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ