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四十六話 王都への帰還

 馬車での旅の間、何度か紫狼騎士団からアリアを逃すことを考えたけど、ロランを見る限り難しそうだった。

 強くなって、より分かる壁――私よりまだ全然強い。


 ルーナ達もブレアの提案で何度かロランから逃げ出すことを試みたが、全て防がれたらしい。

 メラニーを殺したロランをぶん殴って、アリアを助けるために、私達はもっと強くならないといけない。


 リユニオンから馬車の旅をして十数日程、ようやく私達は王都へと戻って来た。

 一度は追放された王都……あまり変わっていない風景にどこか懐かしさを感じ――。


「皆ーっ!! 歌姫様が帰ってきたぞーっ!!」

「歌姫様ーっ!! 手を振ってくれーっ!!」

「きゃーっ、歌姫様ーっ!!」


 は、まったくしなかった。


 アリアは王都でとんでもない人気で、道の両脇には帰って来たアリアを迎える人の海が出来上がっていた。


 ルーナが言うには、失明しながらも闘う騎士のために歌う健気な少女って、ロランの手によって王国民に流布されたんだって。

 実際アリアは可憐だし、【狂戦士の歌】のおかげでアリアが歌う戦場は連戦連勝だし、国民がアイドル化するのも無理ないんだろうな。


 派手な馬車から国民の声援に応えるように、笑顔で手を振るアリア。


 争いが嫌いなのに、戦争の道具として利用されているアリアは、どんな気持ちで国民に手を振りかえしてるんだろう?

 きっとそれもロランの命令でやらされてるのかな……?


「で、今王城に向かうのは分かるんだけど、皆はどこに住んでるの?」


 流石にスラム街じゃないよね。

 一応、冥土隊は紫狼騎士団の中の部隊なんだもん。


「あそこよ」


 ルーナが指をさしたのはボースハイト王城の方角。


「それは今向かってる所じゃん」


「バーカ! だからそこに住んでるんだっつーの!!」


 ほぇ?

 ってことはつまり……。


「王城に住んでるってこと!?」


「そういうことよぉ。孤児院とスラム街で住んでた私達からしたら考えられないわよねぇ」


 ベラが言うように確かに考えられない。

 私は皆と違って、ここ五年なんて大自然の中で生きてたんだもん。

 こんなに大勢の人を見るのも久しぶりだしさ。


「それで、私達はそこでどうするの?」


「基本的にはロランから命令が来るまでは待機よ。アリアの従者として身の回りのお世話とか訓練が主な仕事。紫狼騎士団の誰かの監視付きのね。ヒメナは山暮らししてたんでしょ? なら、ビックリすると思うわよ」


 ビックリって何がだろう?



*****



 ――本当にビックリした。

 まず、王様からロラン率いる紫狼騎士団にお褒めの言葉を貰った後、黒を主張としたメイド服に着替えさせられ、見たことない豪勢な食事を用意され、豪勢な大浴場へと皆で入った。


「どんな贅沢な暮らししてるの!? 皆!!」


 大浴場で体を清め、湯船に浸かった私の嘆きが木霊する。


 私なんてこの五年、まともな家に住めたことないし、体を清めるのだって川の水しかなかったよ!

 こんな生活ずっと続けてたなんてずるいよ!


「これもロランの策の一つってやつさ、ヒメナ」


「ほぇ? どういうこと?」


 隣にいたベラが声をかけてくる。

 この贅沢がロランの策の一つってどういうこと?


「言わば、飴ってことよ。アリアには戦場で歌わせ、私達には過酷な任務という鞭を与えて、その代わりに豪勢な暮らしをさせるって訳」


 ルーナがエマの一言に補足した。

 なるほど、それならアリアを連れて逃げ出すって考えも起き辛くなるってことか。


「贅沢もくそもこのまま飼われるつもりなんてねぇけどな! いずれロランをぶっ殺して、皆で逃げ出してやらぁ!!」


 息巻くブレアの後ろから、身体を清め終わったアリアがベラに連れられて湯船へと浸かる。


「ブレア、私は大丈夫だよ。このままでも」


「バーカ! 良いわけあるかよ! もっと強くなるあたいに任せろ、アリア!!」


 ブレアが息巻いていると、湯船に浸かるブレアの目の前に、フローラが飛び込んで来る。

 必然と湯船のお湯がブレアにかかった。


「ぶぺっ!? 何すんだ、フローラ!?」


「ロランを倒してここから逃げたいのはそうだけどさーっ! でも、ここから出てどうすんのーっ? どこでどうやって生活してくのさーっ!?」


「んなことは逃げ出した後で考えりゃいいだろが!!」


「あらあら、相変わらずブレアは無鉄砲ねぇ」


 ベラの言う通りブレアは単細胞だけど間違ってないし、フローラの言うことも間違ってない。

 仮にロランから私達が逃げ出した場合、王国からも帝国からも追われる可能性が高いからだ。


 それでも、私はこのままアリアをここにいさせたくはない。

 ロランのことだから用済みになったら、必ず私達を始末するだろうしね。


 状況がまだはっきり分かったない私は、口を出さずにどうするべきか思い悩んでいると、気づけば背後に回っていたフローラがいきなり胸を揉んできた。


「ほぇ!?」


「隙ありーっ!! ヒメナ本当おっきくなったねー! ベラやルーナみたいに巨乳じゃないけどーっ!!」


「やったわねー!?」


「たっはっはー! ボクのおっぱいに簡単に触れると思うなよ、ヒメナーっ!!」


 そこからは、皆で全裸でくんずほぐれつになって、しっちゃかめっちゃかだった。


 皆で一緒に入浴して分かったことは、ベラ、ルーナ、アリア、私、エマ、フローラ、ブレアの順に胸が大きいことだった――。

何となく面白そうなど、少しでも思ってくださった方は、画面下の『☆☆☆☆☆』からポイントを入れていただけると幸いです。

感想を頂けたりSNSなどで広めて頂けると、作者は更に喜びます。


皆様が応援してくれることが執筆の原動力と自信にも繋がりますので、何卒よろしくお願いします。

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