表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/110

二十二話 ポワンの強さ

 私達は寝床にしていた洞窟を離れ、山頂にいる。

 ポワンに今から修行をつけてもらうんだ。


「さーて、修行をするかの。でもやる気が出んのじゃ。なんせ、右腕も魔法も持たぬ出来損ないの小娘が弟子におるからのう。あーあ」


 私が魔法を持ってないことを知ってから、ポワンは私の扱いが雑になった。

 王都から帝国領まで闘気を纏って走って来たことを聞いて、私が何か特殊な魔法を持ってるんじゃないかって考えてたみたい。

 だから魔法を持っていないことがわかって、興が削がれたんだって。


「魔法は扱えないのをバカにするのは良いけど、右手が無いことは言わないでよ!! 私だって、気にしてるんだから!!」


「そうですよ、師匠。ヒメナは女の子なんだ。あまり酷いことは言わないで下さい」


 やっぱりルグレは優しいな。

 イケメンで優しいって反則でしょ。


「しっかしのー。強くできんことはないが、ハンデが多過ぎて面倒臭いし面白くないのじゃ」


 ポワンはついには小指で鼻ほじり出した。

 どんだけやる気ないのよ……くそむっかつく!!


「そんなこと言ってるけどさ、ポワンだって強いの!?」


「ぬ?」


「ルグレの強さは魔物から助けてもらった時にわかったけどさ、ポワンの闘ってる所は見てないもん!! 本当に私を強くできるだけの力があるの!?」


「阿呆。ワシは世界一強いぞ。魔物などを含めてもな」


 鼻くそ飛ばして何言ってんの?

 私は疑惑の感情を表情に露わにし、答えを求めるようにルグレを見る。


「言ったでしょ? 師匠は凄く強いって」


 にこっと私に優しく微笑んだルグレのまさかの答え。


「世界一って……ありえないでしょ、そんなの」


 私はルグレすらも疑い、目を凝らしてポワンを見る。

 体内のマナ量が多いから絶対強いって訳じゃないけど、指標にはなるし見てみよう。


「ほぇ!?」


 ――ポワンは小さい体にあり得ない程のマナ量を秘めていた。

 そのマナ量は、アッシュやカニバル、ロランの三人をも優に超えている所か、秤にかけることさえできない。


 ……じょ、冗談でしょ?

 だってポワンって子供……なんだよね……?


「信じられんのなら、闘気を見せてやるのじゃ。闘気を纏うのは久々じゃのう」


「し……師匠!? 闘気を纏うんですか!?」


 ポワンは止めようとするルグレを無視し、準備運動とも言わんばかりに腕を回す。

 本当に久しぶりなのか、少し張り切っている。


「ヒメナ!! 危ない!!」


 ルグレが闘気を纏って、私に手を伸ばしたその時――。



「覇っ!!」



 ポワンが闘気を纏い、大気が揺らぐ。

 ポワンの闘気は大地を抉って地形を変え、私とルグレを吹き飛ばし、周囲百メートル程の木々を全て薙ぎ倒した。


 周りの山からは、動物が逃げ出したのか生き物の気配が一斉に消える。


 何……これ……怖いっ……!!


 世界を震わすほどの圧倒的な闘気に、私は気付けば蹲って頭を抱え、怯えていた。

 ルグレは闘気を纏い、私を庇うために覆いかぶさっている。


 元凶であるポワンは周りのことなどそっちのけで、自分の手を開いたり閉じたりして、不服そうに自分の体の調子を確認していた。


「ふむ。久しぶりじゃから、本調子じゃないのじゃ」


 ポワンはただ、闘気を纏っただけ。

 それだけでこの衝撃。


 多分私が遠く離れていても、ポワンの闘気に気付いただろう。

 そして、絶対にポワンには近寄らなかった。


 圧倒的――暴力。

 ポワンの闘気からはそんな力が感じられた。


「な、ワシは世界一強いじゃろ?」


 闘気を纏うのを止め、ポワンは私に向けて誇らしげに笑った。

 そんなポワンに私は、一度だけゆっくりと頷く。


 世界一強いというのは、嘘でも冗談でも虚勢でもない。

 ポワンの闘気には、その言葉を信じさせるだけの説得力があった。


「……ポワンくらい……私も強くなれる……? 帝国の四帝や……王国騎士団長を倒せるくらいの強さが欲しいの……」


「笑わせるな、阿呆。お主がワシの敵なら、地面に蹲った瞬間もう死んでおるのじゃ」


 私はルグレに庇われた自分が恥ずかしくなり、直ぐに庇ってくれたルグレを押しのけて立ち上がった。


「お願い……っ!! 私死ぬ気でポワンの修行についてくから!!」


 ポワンという存在が恐くなったと同時に、希望にも見えた。

 修行に付いていければ絶対に強くなれる確信があったからだ。


 ポワンはやれやれといった様子でため息を吐き――。


「五年じゃ」


 私の熱意に負けたのか、面倒臭そうに数字の五を表す様に手の平を広げた。


「五年でそれなりに強くしてやるのじゃ。それまでワシに着いてくるのじゃ」


 こうして、私の修行が始まったんだ――。

何となく面白そうなど、少しでも思ってくださった方は、画面下の『☆☆☆☆☆』からポイントを入れていただけると幸いです。

感想を頂けたりSNSなどで広めて頂けると、作者は更に喜びます。


皆様が応援してくれることが執筆の原動力と自信にも繋がりますので、何卒よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ