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百五話 師弟対決

 ポワンに突っ込んだ私は、ポワンと激しく打ち合う。

 だけど打ち合いというより、思わず修行をしてた時の組み手を連想してしまう。

 それ程までにいなされ、いなしやすい攻撃をされていた。

 まるで、鍛錬のように。


「右腕は義手か。良かったのう、弱点が一つ無くなって」


「おかげ様……でね!!」


「ほっと」


 義手による貫手の突きもあっさりと躱され、距離を取られる。


「何で……何で、私のことを知っている人を皆殺したの?」


「そうでもしなければ、お主はワシと殺り合わなかったじゃろ?」


「……何でそんなに私と殺し合いがしたいの?」


 ポワンは私と殺し合いを望んでいる。

 だけど、ポワンにそこまで恨まれることは思い当たらない。

 だからずっと腑に落ちないでいた。


「お主は未だ冗談と捉えておるかもしれんが、ワシは自身の魔法で数百年生きておる。帝国が生まれる数十年前に生まれた人間じゃ。言わば不老不死に近いのじゃ」


 ポワンははるか昔を思い出すかのように空を眺める。


「戦友じゃった初代皇帝が死す時、一方的に約束されてしまっての。『発展する帝国を見続けてくれ』とな。ま、あやつとの約束はどうでも良かったんじゃが、他に行くアテも特になかったからの。四帝として帝国に居続ける理由にはなったのじゃが、長く生き過ぎたわい」


 そして、私を見据えた。


「老衰で死ぬことも出来んことはないんじゃがの。どうせ死ぬなら武人としては本気の殺し合いで死ぬことこそ誉れ。ただそれだけをずっと思っていたのじゃ」


 何よ……何よそれ……。

 そんなエゴのために皆を……私の大切な人達を殺したの……?


「……私がポワンを殺せる程の力を持ってるって?」


「そうであってると願っているのは事実――」


 ポワンは腕を組み、



「じゃが、叶わんようじゃな」



 再度私を挑発した。


【瞬歩】

 

 怒りから思わず挑発に乗ってしまった私は、【瞬歩】で懐に入る。

 だけど、ポワンは腕を組んで微動だにしない。

 私の攻撃を真っ向から受ける気だろう。

 舐められてるんだ。


「破ああぁぁ!!」


 私は全力で闘気を纏い、闘技を放った。


【旋風脚】


 威力を上げる為、体と共に回転させた蹴りの二連撃。

 腕を組んだポワンの顎に二発とも命中する。


【連弾】


 両手の二本指による連続する貫手の突き。

 ポワンの急所は的確に突けたはずだ。


【発勁】


 ポワンの下腹部に掌底を打つ。

 それと同時にポワンの丹田に私の闘気を流し込んだ。


 いける……!!

 私だってポワンと闘える!!


「【螺旋手】!!」


 回転させた四本指の貫手による突き――金属も豆腐のように貫く必殺技だ。

 それをポワンの心臓に向けて放った。


 師匠であるポワンを超え、殺す。

 そう決意表明するかのように。



 だけど――。



 私の【螺旋手】を放った左腕は、ポワンに片手でいとも簡単に受け止められた。

 あれだけ闘技を使ったにも関わらず、ポワンは無傷だ。


 何で……!?

 闘気の差があるから、外傷はないのはまだ分かるけど……【発勁】すら効いてない!?


「何故闘技が効いてないか、不思議そうじゃの。教えてやろう、小娘」


 ポワンは私の左手から手を離す。

 私は慌ててポワンから距離をとった。


「圧倒的な闘気の差、まずはこれが決定的に違うのじゃ。外傷を与えられん程にな。【発勁】が効かんかったのは、大海に油を一滴注いだ所で何の害もなかろう? それ程までにワシのマナ量は多い」


 つまりポワンが言いたいのは、それほどまでにポワンと私には力量差があるということだ。

 闘気の力強さも、丹田に籠っているマナ量も、圧倒的に違うんだ……。


 いつの間にか【瞬歩】で近付いていたポワンは、私の胸に手を置き――。


「!?」


 【衝波】を放った。


 ポワンの【衝波】で私は吹き飛ぶ。

 【衝波】は体制を崩すための技。

 でもポワンに限ってはあまりの闘気の強さから、相手が風に舞う木の葉のように吹き飛んでしまうんだ。


「が!?」


 岩壁にぶつかり、身体を埋めて勢いを止める私。

 岩壁を突き抜けなかったのはポワンが闘気の強さを調整したからだろう。

 周囲には岩の破片が飛び、砂煙が上がった。


 そんな中、目の前に【瞬歩】で近づいてきたポワンが現れる。


「ほっと」


 拳の壁が見えた。

 そう思った時には、ポワンの拳による連撃を受けていた。


 闘技でも何でもない。

 ただの拳のラッシュ。

 だけど、一発一発がとんでもない威力だ。

 それに躱せる速さじゃない。


「ぎぎぎ……!!」


 私は腕を盾のようにし、耐えることしか出来なかった。

 どんどんと体は岩壁に埋まっていく。


「ほっ」


 渾身の右ストレートを顔面に受けた私は岩壁を貫通し、次の岩壁へとぶつかる。

 気付けばポワンが目の前にいて、蹴りを放っていた。


 危ない……!!

 鼻血を垂らしながらも何とかその蹴りを躱すと、蹴りは後ろの岩壁に当たり、崩壊させる。


 私はすぐさま【瞬歩】を連続で使い、アリアの元へと戻った。


「ヒメナ……大丈夫!?」


 アリアの問いに答える余裕はない。

 マナの動きで蹴りを予測してなきゃ死んでた……。

 ポワンはやっぱり異次元だ。

 まだ全力じゃないのに、こんな力なんだから。


 どうするか考えていると、ポワンは一回の【瞬歩】で私達の元に現れる。


「ふむ。そこそこ鍛えてるようじゃが、それが本気か? 他の四帝よりかは上といった所かの」


「……くっ……!!」


「さっさと【終焉の歌】とやらを使うのじゃ。ヴェデレから聞いておる」


「「!!」」


 ポワンは知ってたんだ……【終焉の歌】のこと……。

 だから私がポワンを殺せる可能性があるって思ったんだ。


「奥の手を隠しておける相手かの、小娘。じゃとしたらワシも舐められたモノなのじゃ。ワシは世界最強ぞ」


「……分かってるわよ」


 【終焉の歌】を使えば、私の理性は持ってかれるし、反動でしばらく動けなくなる。

 迂闊には使いたくない。

 それに何より、ポワンのエゴなんかに付き合うのが気に入らない……!!


「アリア……お願い……」


「ヒメナ……」


 だけど、ポワンを倒さないとポワンのエゴなんて理由で殺された皆が浮かばれない……戦争もまた起こるかもしれない……。


「やってやろうじゃない!!」


 こうなったら、とことん付き合ってやる!!

 ポワンを殺すつもりで私はここに来たんだから!!

何となく面白そうなど、少しでも思ってくださった方は、画面下の『☆☆☆☆☆』からポイントを入れていただけると幸いです。

感想を頂けたりSNSなどで広めて頂けると、作者は更に喜びます。


皆様が応援してくれることが執筆の原動力と自信にも繋がりますので、何卒よろしくお願いします。

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