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百二話 終結

 ロランを羽交い締めにし、行動を制限したブレア。

 私には、その真意は分からない。


「……どういうつもりだい?」


「今からあたいごとてめぇを凍らせてやらぁ」


「「!?」」


 私とロランはブレアの発言に驚く。

 自分ごと凍らせるってどういうこと!?

 そんなことしたら、ブレアは……!?


「くそ早えロランを逃がさない為にはそれしかねぇ。いいか、ヒメナ。お前はあたいごとその氷を叩き割れ」


「ブレア、あんた敵だったのに……何で!?」


 私を助けるマネを……!?

 自分の身を犠牲にしてまで!!


「お前に勝つ為だ」


「……ほぇ?」


「お前はロランに負けた。お前に勝ったロランを殺しゃ、あたいはお前より強え。そうだろ?」


 ブレアはギザ歯を剥き出しにして笑った。

 自分の考えに疑いを持ってないんだろう。


 そんな謎理論を証明する為に、命を捨てるの?

 あり得ない!!


「やめて、ブレア!! そんなことをしたって――」


「うるせぇ!! どっちにしろロランも気に入らねーんだよ、バーカ!!」


 ブレアの身体はどんどん凍っていく。

 その氷はロランをも巻き込んでいった。


「ちっ!!」


 ロランは全身から電気を発し、ブレアを痛みと痺れで引き剥がそうとするも、ブレアは力を緩めない。

 歯を喰いしばって痛みに耐えている。


「これで戦争は帝国の負けだがよ……あたいはお前らに勝ってやったぜ!! 最強なのは、このあたいだ!! ぶははは!!」


 ブレアの狂気とも言える行動にロランの顔が焦燥の色へと歪み始める。

 こんなロランを見るのは初めてだ。


「この……クソガキがぁぁ!!」



【フローズン】



 ロランの叫びと共に、二人は凍りつく。

 謁見の間には絶対零度の氷塊が出来上がった。



「……ブレア……何で……?」


 私は呆然と、ロランとブレアが固まった氷塊の前に立ち尽くす。


 このまま放っておいてはダメなんだろうか……?

 氷が溶けるまで待ったら、ブレアは生きてるんじゃないのかな……?

 でもそんなことしたら、ブレアにぶん殴られそうだな……。


 本当にブレアは、昔からバカなヤツだ。

 自己中で、猪突猛進を絵に描いたようなヤツで、後先なんて考えやしない。

 私達が平和を願って戦争を終わらせるために闘う中、自分の強さにこだわって私に勝ちたいがために、自分の命を捨ててまでこんなことをするんだから……。


 だけど――あんな風に私はなれない。



「負けたよ、ブレア」



 私は闘気を纏い、義手の右手で二人を凍らす氷塊を力一杯殴る。

 涙を振り払うために、全力で。


 氷塊と共にロランとブレアも砕け散った。

 まるで命が最期の煌めきを見せるように、周囲一帯を細かい白氷が乱反射させる。


 何が正しかったのか、何が間違ってたのか。

 何でこんなことになったのかは、分からない。

 だけど、今やったことは正しいと信じるしかないんだ。


 私は白氷の粒で煌めく景色の中、涙ぐんで天を仰ぐことしかできなかった。



 ――しばらくするとアッシュとアリアが謁見の間へと入ってきた。

 何で二人は一緒なんだろ?

 そういえば、アリアと分かれる時に考えがあるって言ってたけど、何か関係しているのかな?


「これは……!? 陛下!!」


 アッシュはズィーク皇帝の死体の元に駆け寄り、抱きかかえる。

 そんなアッシュを横目に私はアリアの元へと歩み、包むように両手を握った。


「アリア、終わったよ」


「……ヒメナ、大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ。ブレアは……私が殺しちゃったけどさ」


「……そっか」


 そのまま私とアリアは互いに情報交換すると、アリアは私を気遣ってか、それ以上は何も語らなかった。



*****



 皇帝を討ったとはいえ、現地の国王を失い戦場に残された王国軍は、王都まで引き上げることを選択した。

 それを率いたのは歌姫として信頼されるアリア。

 そして、私が補佐する形だ。


 父親であるアッシュとは、あの後謁見の間で話し合い、停戦協定を結ぶように私とアリアで説得した。

 父親だけどエミリー先生を殺した仇でもあったから、説得するのはかなり複雑だったけど、それが最善だと思ったんだ。

 アッシュは迷っていたけど、娘である私とアリアの熱心な説得に負け、復讐心を押し殺して王国と休戦協定に望むことに決めた。


 皇帝とアッシュ以外の四帝がいない今、アッシュが帝国軍の全権を握っているといっても良い。

 次期皇帝は何も分からない皇子の少年がなる可能性が高いから、アッシュの言葉に首を縦に振るだけのイエスマンだろう。


 そして、王都へと戻った私達は国王様に戦争の報告をすると、国王様も休戦協定を結ぶことを飲んだ。

 皇帝を討ったといっても、帝国にはアッシュとポワンが残っている。

 対して王国は騎士団長が全て討たれ、まだ王都も復興しきっていない。

 国力を立て直すためには、休戦協定を飲むことが最善の選択だった。


 そして一か月後、アンゴワス公国のパーチェ大公に仲介をしてもらい、帝国と王国とで休戦協定が結ばれて、平和が訪れたんだ――。

何となく面白そうなど、少しでも思ってくださった方は、画面下の『☆☆☆☆☆』からポイントを入れていただけると幸いです。

感想を頂けたりSNSなどで広めて頂けると、作者は更に喜びます。


皆様が応援してくれることが執筆の原動力と自信にも繋がりますので、何卒よろしくお願いします。

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