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デブリアイランズ①

 上空からフラワーベットの方向を見ていたが一定の距離を飛んだ所で透明になったかのように消えてしまった。闇の中に落ちはしないかと心配したが、かなりのスピードであっさり通過し絶海の滝を越えて、シェルフスガーデン本域に入った。

 景色がぐんぐんと変わっていき速度を感じつつも山を描くように落下しているのもわかる。どこに向かって打ち上げられたのだろうか、着地はできるのか1年前がデジャブのように頭をよぎる。今度はBoxなしで着地、できるとは思えない。

 群島が見えて来た、恐らくあそこに着地しそうだ。島の位置が近く群島と言うより碁盤のような形状をしている。考えてる間も重力に引かれ地面いや海面?どちらに落ちても地球と同じ物理が通用するのなら助からない気もするが。

 地面が近づく受身の準備をするがどうにもならなそうだ。歯を食い縛り着地に備える。


「ゔぐー」


 恐怖に叫び声が漏れる。思い切り岩場のような所だ大丈夫か?大丈夫じゃないよな。

 岩に激突したがまるで柔らかい布に包まれるように着地した。驚いた、岩に見えるが布のように柔らかい。


「おい、誰だシルクロックに飛び込んだ馬鹿は、誰の縄張りかわかってんのか」


 岩場の向こうから声が聞こえる。岩はさっきの衝撃で巨大にも関わらず綿毛のようにコロコロと崩れていく。

 目の前にはトカゲ頭の男と斧を持った巨漢が立っていた。


「トカゲ!」

 

思わず声に出してしまった。


「おい兄ちゃん、姿差別はいけねぇな。まあいい、このコモド様の縄張りでシルクロックに触るなんて、命知らずじゃねぇか、さぁ身体とさよならしようか」

 

トカゲ男がそう言うと後ろの巨漢は斧を振り上げた。修行前ならばここで力無く死んでいただろう。今は負ける気がしない。


「うわぁーん、ごべんなさい、違うんです、病気の母を治す為にこのシルクロックが必要なんです!僕の命はとってもかまいません、母の命だけでも助けたいんです」


 身体の力を抜き崩れ落ちながら咽び泣いた。もちろん真っ赤な嘘である。ダルト修行、戦闘でもなく知識でもなく人を手玉に取る虚。


「母の為だ関係ないね。シルクロックを盗んだ罪だ。母も探して処刑だな。やれドモド」


 命令するトカゲに巨漢は斧を振り上げた。失敗か、いやこの男は斧を振り下ろせない。


「コモドさん、母の命だけでも救ってあげたら……」


 巨漢はトカゲを説得する、ここまで予定通り。巨漢が巻いている腹巻き。不恰好でほつれても付けているあたり、子供、両親、恋人いずれかの手編みだろう。どれでもよかったが、当てずっぽうで母親を選んで正解だったみたいだ。


「俺に逆らうのか!いいから言う事を聞け!部下の分際で歯向かうなやれ!」


 トカゲの怒鳴り声に不服そうに、また斧を振り上げる。このタイミングを待っていた。一瞬の隙をつき巨漢の身体に触れた。

「「リバーシ」」


 巨漢の斧が止まる。


「コモドさん、私が孤児になってあなたに拾われる前、病で母を亡くしました。だからこの人は殺せない。それにあなたは奴隷のように、こき使い亡き母のように私を褒めたことなど一度もない、なぜか今までの怒りが吹き出してきます、コモドさん、私の前から消えてください」


 巨漢は斧を下ろし怒りの表情で震えている。


「あ゛!!おまえ俺に消えろだと、代わりはいくらでもいるんだよ、噛み殺してやる」


 巨漢に食いつこうとしたトカゲ男の頭が宙を舞って地面に落ちた。巨漢が斧を振り落としたのだ。トカゲ男の身体は力無く崩れ落ちた。

 これがリバーシなかなか使い勝手がいい。普段押し殺している気持ちや行動を実際の行動とひっくり返し表に引き出す。ダルトから教わった事と相性抜群だ。 


「なんて事だ、なんでこんな事を、コモドさんを殺してしまったら、今後の仕事が、いやそれだけじゃない、デブリアイランズ3柱のひとりをこの手で殺めてしまった、シトロキオ王が黙っていない、ここで自害するしか」


 リバーシの効果意外に短い使い慣れてないからか? 巨漢もこれで倒せそうだが、案内人が必要か、


「待って下さい、助けていただきありがとうございます、これで母を助けられそうです、母が元気になったらこの街に連れて来たいのですが、案内お願いできますか?」

 

 俺はシルクロックのカケラをポケットに入れながら言った。すると巨漢はこちらを見て頷いた。


「どのみちここには居れない、案内しよう、俺はドモドよろしく」


 ドモドは斧を担ぎ何かに怯えるように強ばった顔をしている。それからドモドに道案内を頼みここがデブリアイランズと言う国でいいさな島が集まった国である事、シロトキオ国王が支配者であり絶対君主である事、平和で豊かな国ではあるが、他国との奴隷売買が盛んな事を聞いた。


「奴隷の中でも俺はランクが高く、この国から出荷されず、3柱であるコモドさんの下で働き、名前までもらい、奴隷ながらもそれなりの暮らしをしていたんだか、まさか、こんな事になるとはな、でもスッキリしたよ、それよりその格好今朝の新聞拾い読みした時に載ってた奴とそっくりだな」


 今朝の新聞? 自分がダルトのボロ布をきているのを忘れていた。とぼけながらボロ布を脱ぎ腰に巻いた。すっかり日が沈みドモドとも打ち解けつつあったその時だった。


「こんばんは、君はコモドくんの所のお手伝いくんですね」


 圧力が背中を撫でるような感覚。振り返るとそこには派手な格好の気持ちの悪い笑みを浮かべた男が立っていた。ドモドが青ざめている。


「シロトキオ国王……」


 ドモドは膝をついた。あわせて俺も膝をついた。この男危険な匂いがする。





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